精巣がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

精巣がんは男性のみに発症する病気で、ほかのがんと比較して若い世代で発症するのが特徴です。精巣は陰嚢の中にあり体表から触れやすい部分にあるので他のがんと比較して異常に気づきやすい病気ですが、泌尿器科を受診しなければならないことや、若い人に発症し診察の際には股間部を見せなければならないことから、受診が遅れることもしばしばあります。

とくに停留精巣の既往がある人では精巣がんになる可能性が高く、自分自身で気をつけることで精巣がんの早期発見が可能となります。

目次

精巣がんとは

精巣がんは悪性化する細胞の種類が他のがんと異なるため、正式には精巣腫瘍といいます。

精巣は男性の陰嚢の中に左右1個ずつ存在する卵形の臓器で、睾丸とも呼ばれます。精巣では精母細胞から精子が、ライディヒ細胞からは男性ホルモンが作られています。

ほとんどの精巣腫瘍は精母細胞から発生します。生殖に関係した細胞は「胚細胞」と呼ぶこともあり、ここから出現した腫瘍を「胚細胞腫瘍」と表現する場合もあります。精巣腫瘍は胚細胞腫瘍の1種であり、そのほかの胚細胞腫瘍には卵巣腫瘍や脳腫瘍の一部などがあります。

精巣がんの分類

精巣腫瘍はセミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマ(非精上皮腫)に分けられ、さらに非セミノーマは胎児性がん、卵黄のう腫、絨毛がん、奇形腫に分類されます。

セミノーマと非セミノーマを比べると、非セミノーマの方が転移しやすく、悪い経過をたどりやすい傾向にあります。非セミノーマの中で最も転移しやすいのは絨毛がん、転移しにくいのは奇形腫です。

その他に特別な精巣腫瘍として悪性リンパ腫や肉腫などがあります。

精巣がんの頻度

精巣がんの頻度は男性10万人あたり1~2人で、男性のすべてのがんの1%と稀な病気です。しかし15才から35歳の男性の中では最も多いがんです。
セミノーマと非セミノーマを比較した場合では、セミノーマの平均発症年齢は非セミノーマよりも9歳ほど高かったと報告されています。

精巣がんの主な原因とリスクファクター

停留精巣(停留睾丸)

停留精巣とは出生時に陰嚢の中に精巣がない状態です。精巣は胎児のときに腎臓付近で作られ、その後お腹の中を股間に向かって移動し、最終的に陰嚢の中におさまります。この途中で精巣が止まってしまった状態が停留精巣です。停留精巣は出生直後では約5%の男児に見られますが、生まれた後も陰嚢に向かっておりていくこともあり、1才でも陰嚢に精巣がない男児は1.5 %まで減ります。

精巣は陰嚢内にあることで体温の影響を受けにくくなり、低めの温度状況で精子を作りますが、精巣が腹部にある状態のままだと精巣の温度が上がり、精子の産生に異常をきたして不妊症や精巣がんが発生しやすい状態になると考えられています。

停留精巣の治療は精巣を正しい位置、つまり陰嚢内におさめる手術(精巣固定術)を行います。ただし、停留精巣の手術を行なったあとでも通常と比較すると3~14倍精巣がんになりやすいと報告されています。また、停留精巣が片方しか見られなかった場合でも、反対側の精巣にがんが発生するリスクは通常よりも高いということが分かっています。

妊娠時の女性ホルモン投与

母親の妊娠中に女性ホルモンが投与されていた場合、男児が精巣がんになる危険性が2.5倍になるという報告があります。同様に妊娠中に女性ホルモンが投与された男児では精巣がんの危険因子である停留精巣が多いという報告もあり、女性ホルモンによる精巣がんの増加は停留精巣の影響を受けているのか、それとも直接的な影響なのかについてはまだ明らかになっていません。

男性不妊(精液検査で異常がある場合)

統計学的な調査では、精巣がんを発症した男性の1/4にはもともと精液検査で異常を伴う男性不妊があったと報告されています。

その他に精巣の外傷や炎症もがん発生の原因と考えられています。たとえばムンプスウイルス感染による精巣炎で精巣萎縮をきたした場合には、局所的なホルモンバランスの異常を引き起こして精巣がんになりやすいという報告もあります。

精巣がんになりやすい人の特徴

年齢

精巣がんのピークは1~2歳と20~40才にあります。

家族歴

精巣がんの患者の1/3に精巣がんの家族歴があります。父親に精巣腫瘍があれば、その子供が精巣腫瘍を発症する可能性は4倍に、兄弟が精巣腫瘍であれば8倍になるという報告もあります。

精巣がんに関連した遺伝子

精巣がんは人種により発生率が異なることから、遺伝子の関与があると考えられていくつかの調査が行われています。たとえばヨーロッパ系の人々に多いKITLG遺伝子は皮膚や毛髪の色の違いを決定する遺伝子ですが、この遺伝子にある変化がみられると精巣がんの発症が多くみられたという報告があります。

日本人の精巣がん発症に関連した遺伝子は明らかになっていません。しかしヨーロッパ人のKITLG遺伝子に関しても、その遺伝子変化をもっていると必ず精巣がんを発症するということではないことから、精巣がんの発症には複数の遺伝子やその他の条件が関係していると考えられています。

片側の精巣がんの既往歴

片方の精巣にがんができた人が反対側の精巣にがんを発症する可能性は20倍以上と言われています。

そのほかに低体重児や未熟児、高身長であると精巣がんになりやすいという報告もあります。

男性ホルモンと精巣がんの関連性

男性特有のがんには精巣がんのほかに前立腺がんがあります。前立腺がんは男性ホルモンにより増殖するといった特徴がありますが、精巣がんでは男性ホルモンの量によって発症しやすくなったり、進行を早めるといったデータはありません。

予防と早期発見のコツ

停留精巣の手術は早めに

精巣がんの原因の1つである停留精巣は手術をしても精巣がんを発症する危険性は残りますが、その手術は早いほうが精巣がんの危険性を下げるという報告もあります。海外のデータでは精巣固定術を13歳未満で行った場合の精巣がんの危険性は2.23倍であったのに対して、13才以降に手術が行われた場合では5.40倍でした。

さらに腹腔内にある精巣を早く陰嚢の中に移動させることにより、精巣が体表から触れられるようになるため精巣がんを発症しても早期発見しやすくなります。

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春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医