皮膚がんのステージ別生存率と平均余命

多くの皮膚がんは体の表面にとどまった状態で発見されるため、局所的な切除の治療で完治を望めますが、進行の早い悪性黒色腫や、そのほかの皮膚がんでも経過が長くなると転移することがあります。その場合、各種検査を行って病気のひろがりを判断し、進行度(ステージ)を診断して治療方針を決定します。

がんと診断されると「私はあとどれだけ生きられるのだろう」と思われるかもしれません。この「あとどれだけ生きられるか」は”余命”といい、その病気の状態の人の50%が亡くなる時期を”平均余命”といいます。この平均余命はがんであってもどの部分のがんかによって異なりますし、同じ皮膚がんであってもがん細胞のタイプやステージによって異なります。そして、”平均余命”とはあくまで目安で、かなり幅があるものです。

病院の説明でよく使わるのは”平均余命”よりも”生存率”です。特に”5年生存率”はその病気の治療効果を比較するためによく使われます。簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。

皮膚がん全体の5年生存率はがんの中では良い数字ですが、皮膚がんのタイプによって大きく異なるため注意が必要です。

目次

皮膚がんの種類と進行度について

皮膚がんの種類

代表的な皮膚がんは以下の4つです。

基底(きてい)細胞がん
表皮の一番下にある基底細胞のがん。最も多い皮膚がんです。

有棘(ゆうきょく)細胞がん
有棘層にできるがん。基底細胞がんについで多い皮膚がんです。

悪性黒色腫(メラノーマ)
メラノサイトががん化したもの。まれな皮膚がんだが最も進行が速いタイプです。

乳房外パジェット病
汗を作るアポクリン腺ががん化したもの。ほとんどが腋の下、外陰部、肛門の3カ所にできます。

そのほかに皮膚粘液がんやメルケル細胞がん、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、皮膚の悪性リンパ腫などがあります。

皮膚がんの割合は基底細胞がんが約35%、有棘細胞がんが約25%、悪性黒色腫は2割程度、乳房外パジェット病は10%程度と報告されています。

皮膚がんの進行度(ステージ)

進行度とは皮膚がんの病気のひろがり具合を表します。悪性黒色腫・基底細胞がん・有棘細胞がん共にステージは0~4の5段階に分かれています。

ここでは、転移の多い悪性黒色腫(メラノーマ)のステージについて紹介します。

ステージ4

所属リンパ節(病変に一番近いリンパ節)を超えて皮膚や皮下、リンパ節や内臓に転移のあるもの。

ステージ3

所属リンパ節に転移があるもの、もしくは最初の病変の周囲の皮膚や所属リンパ節までの間の皮膚や皮下に転移があるもの

ステージ2

転移がなく、腫瘍の厚さが1.01mmから2mmで潰瘍のあるもの、もしくは潰瘍の有無にかかわらず腫瘍の厚さが2.01mm以上のもの

ステージ1

ステージ1は転移がなく腫瘍の厚さが1mm以下のもの、もしくは腫瘍の厚さが1mmから2mm以下で潰瘍のないもの

ステージ0

ステージ0は腫瘍が表皮の中にとどまっているもの

上から評価して当てはまったものがステージになります。

皮膚がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、皮膚がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。

5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

皮膚がんの5年生存率はどのくらいあるか

2009~2011年の皮膚がんの5年生存率は男性で94.4%、女性で94.6%、男女合計では94.6%とがん全体と比較して高い数字になっています。

しかし、皮膚がんにはほとんど転移しないものから、悪性黒色腫のように進行の早いものまであります。

悪性黒色腫の場合の5年生存率はステージ1で86.2%、ステージ2で79.6%、ステージ3で53.1%、ステージ4で11.0%となっています。

有棘細胞がんではステージ0~1ではほぼ100%、ステージ2では85%、ステージ3は55~65%、ステージ4では30%以下と報告されています。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

皮膚がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによると約5カ月です。このデータは皮膚がん以外で死亡した人も含んでいます。ステージ0~3では、観察期間である5年後でも生存率は50%以上でした。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

国立がん研究センターの報告によると、皮膚がんは波はあるものの増加傾向にあり、1980年を基準とすると2007年には罹患率が2倍を突破、2013年以降は4倍にまで増えています。
将来の予測データでは、今後も2039年までは皮膚がんの罹患率は増加していくと推測されています。

死亡数の推移

1958年には10万人あたりの死亡者数は0.7人で、2000年前まではほぼ横ばいでしたが、2000年を過ぎてから少しずつ増加し、2018年には2倍弱になっています。

皮膚がんの末期症状とケアに関して

皮膚がんの末期症状

末期皮膚がんの患者の多くは皮膚病変は切除されていることが多く、末期の症状は転移した臓器から発生する症状であることがほとんどです。例えば脳に転移すれば麻痺などの神経症状、肺に転移すれば咳や胸に水が溜まる、骨に転移すれば痛みが出るといった具合です。

皮膚がん末期のケアについて

他の臓器に転移した末期の状態であっても、症状を和らげる目的で全身状態が許せば薬物療法や放射線療法がおこなわれます。そのほかに胸に水が溜まれば水を抜いたり、酸素吸入をします。痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。

栄養状態が悪いときには中心静脈栄養や末梢点滴などで水分や栄養を補います。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

https://gan-senshiniryo.jp/cancer/skin-cancer/cancer_2629
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http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/038020107j.pdf

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医