皮膚がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

皮膚は体の表面をおおう臓器であり、そこにできる皮膚がんは発見しやすい病気と言えます。しかし、がんは痛いもの、がんは進行が早いもの、と思い込んでいると痛みのない緩やかな進行のがんを見逃してしまうことにもなりかねません。

ここでは皮膚がんがどんな病気なのか、皮膚がんになりやすいのはどんな人なのか、そして皮膚がんの予防について紹介します。

皮膚とは

皮膚とは

皮膚は体の表面を覆う膜で、皮膚も臓器として考えられています。
皮膚は大きく分けると表面の表皮とその下の真皮の層になっていて、その下に皮下脂肪があります。

さらに表皮は表面から角質、顆粒層、有棘細胞層、基底層という構造になっています。基底層にある基底細胞が分裂して有棘細胞層→顆粒層→角質へと移動することで皮膚は常に新しい状態に維持されています。

真皮には血管が多く存在し、がんが真皮までおよぶと転移しやすくなります。さらに真皮には汗を出すエクリン腺とアポクリン腺があります。エクリン腺は全身に存在しますが、アポクリン腺は毛根と一緒に存在し腋や陰部に多く存在しています。

皮膚がんの種類

皮膚がんの種類は豊富にありますが、多くみられるのは以下の4種類です。

基底(きてい)細胞がん

日本人では最も多い皮膚がんで、表皮の一番深い層にある基底細胞ががん化したものです。塊になって大きく発育しますが、転移しにくいがんです。

基底細胞がんの原因には日光があると考えられ、日光を浴びやすい顔、特に盛り上がっている鼻や額、まぶたにできやすく、その約80%が顔と頭にできます。その他に傷跡や放射線の影響で発生することもあります。

肉眼では青黒く見え、ほくろと見間違えやすいですが、皮膚を見る専用の機械では簡単に区別できます。一部は皮膚がへこんで潰瘍になることもあります。

悪性黒色腫(メラノーマ)

日焼けすると皮膚が黒くなるのは基底細胞にあるメラノサイトという細胞からメラニンという色素が作られるからです。そのメラノサイトががん化したものが悪性黒色腫です。
発生頻度は1年間で日本人100万人あたり10-20人程度です。

悪性黒色腫の原因としては日光(紫外線)や皮膚への摩擦といった刺激が考えられています。

黒く見える皮膚がんで、肉眼ではほくろのように見えます。ほくろとの区別するポイントとしては、左右非対称で正常な皮膚との境目がはっきりしない、黒い部分の色が不均一、大きさが6mm以上、だんだん大きくなるといった特徴があります。

日本人では約半数が手のひらや足の裏、手足の指や爪にできますが、中には鼻や口の中、肛門といった粘膜にできることもあります。
進行が早く転移しやすいがんです。

有棘(ゆうきょく)細胞がん

基底細胞がんについで2番目に多い皮膚がんです。有棘細胞層には顕微鏡で細胞をみるととげがあるように見える有棘細胞という細胞があります。これががん化したのが有棘細胞がんです。

主に日光(紫外線)によって正常な細胞が変化してできるがんで、通常は日光を浴びやすい顔や頭、手の甲などにできます。硬く盛り上がり、大きくなるとカリフラワーのような形になったり、表面がもろくなって液体や膿などが出てきたり、臭いを発したりします。進行はゆっくりですが、長期になると転移することもあります。

その他の原因としては傷跡や放射線、ウイルス感染が関係しているものもあります。また上皮内がん(基底層を超えないがん)に分類される日光角化症やボーエン病は、進行すると有棘細胞がんとなります。

乳房外パジェット病

もともと乳房パジェット病という乳がんがあります。その性質に似ているため乳房外パジェット病と呼ばれるがんです。真皮に及んでいないものをパジェット病、真皮以上におよんだものをパジェットがんと区別して呼ぶこともあります。

汗を産生するアポクリン腺から発生するがんで、アポクリン腺の多い腋の下、外陰部、肛門の3カ所が好発部位です。

男性のほうが女性の2倍発生しやすいと言われています。転移は少ないのですが、複数の場所に同時に発生することがあります。

赤くプツプツした平らながんで、湿疹と区別しにくく、通常の湿疹の治療をしても治らない場合に乳房外パジェット病を疑います。正常とがんの境目が分かりにくいという特徴があり、切除する場合広めに切除する必要があることや、1度の切除でとりきれないこともよくあります。切除以外の治療(抗がん剤や放射線治療)の効果が低いことも特徴です。

皮膚がんは種類が多く、そのほかに皮膚粘液がんやメルケル細胞がん、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、皮膚の悪性リンパ腫などががあります。

皮膚がんの頻度

2017年にがんと診断された人の中で皮膚がんは男性の第12位(10万人あたり19.7人)、女性の第11位(10万人あたり17.8人)、全体では第10位(10万人あたり18.7人)でした。

また2018年がんで死亡した人の中で皮膚がんは男性の第16位(10万人あたり1.3人)、女性の第19位(10万人あたり1.3人)であり、全体では16位(10万人あたり1.3人)でした。

目次

皮膚がんの主な原因とリスクファクター

ヒトパピローマウイルス

ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスは接触により皮膚や粘膜から感染するウイルスで、100以上の種類があります。ウイルスの種類によってさまざまな部位にいぼ(パピローマ)を作ることがあります。多くのいぼは良性ですが、一部はがんに変化することもあります。特にがんになりやすいHPVをハイリスクHPVと呼び、がんの原因になりにくいローリスクHPVと分けられています。HPV感染と関連づけられて有名ながんは子宮頸がんです。近年子宮頸がんを予防するワクチンが使用可能となりましたが、これはHPVに対するワクチンです。

80%以上の人が生涯に1度はHPVに感染すると報告されていますが、多くの人ではHPVに感染しても免疫の力でウイルスを排除しています。一部の人でHPVの感染が続くとがん抑制遺伝子の働きが弱まり、がんを発症すると考えられています。

皮膚がんでは特に有棘細胞がんや有棘細胞がんの前がん病変であるボーエン病にHPVが関係していると考えられています。

ヒ素

ヒ素は一度に大量摂取すると急性ヒ素中毒として嘔吐や下痢、血圧低下などを起こして命を落とすこともあります。

しかし、ごく微量のヒ素を長い期間摂取するとこのような症状は現れませんが、皮膚炎や神経炎、慢性気管支炎といった慢性ヒ素中毒症を発症します。慢性ヒ素中毒の患者ではボーエン病などの皮膚がんや肝臓がん、肺がん、尿路系のがんを発症しやすいということが分かっています。

タール

タール蒸留所や煉炭製造工場、コークスガス製造工場などで働いていた人では有棘細胞がんなどの皮膚がんを発症しやすいということが分かっています。

皮膚がんになりやすい人の特徴

皮膚がんは男女比で比べると男性に多いがんです。

皮膚がんは基本的に年齢が上がれば上がるほど発生率が増え、55-59歳の年齢になると男女ともに約1万人に1人、男性ではその後80歳代で1000人に1人、90歳代で300人に1人、女性では90歳代で1000人に1人が皮膚がんを発症します。

色素性乾皮症

色素性乾皮症は日光の当たる部分にたくさんシミができ、皮膚が乾燥する病気で、皮膚がんになりやすい病気です。色素性乾皮症は遺伝する病気で、常染色体劣性遺伝です。両親がこの病気の遺伝子を持っている場合、子供は1/4の確率で色素性乾皮症を発症します。日本では22,000人に1人くらいの割合で発症していると報告されています。

日焼けと皮膚がんの関連性

日焼けは皮膚がんの原因であり、日光に含まれる紫外線が問題と考えられています。皮膚の細胞膜は紫外線によって傷つけられ、さらに皮膚の免疫力が低下し、発症したがんを抑制できなくなります。短期間に大量の紫外線を浴びた場合だけでなく、小さいころから積み重なって浴びた紫外線の量が関係しているとも考えられています。

皮膚がんのなりやすさは皮膚の色でも異なり、黒人では人口10万人あたりの皮膚がんは3人程度ですが、白人では232人、黄色人種である日本人は10人程度と報告されています。
日焼けと関連していると考えられるがんは悪性黒色腫や基底細胞がん、有棘細胞がんとその前がん病変である日光角化症などがあります。

予防と早期発見のコツ

皮膚がんの予防

紫外線を避けるため、日焼け止めや帽子、日傘などで長時間強い日光に皮膚をさらさないように工夫することが皮膚がんの予防につながる可能性があります。

早期発見のためには

多くの皮膚がんは皮膚に変化が現れるため、比較的自分自身で見つけることは可能です。しかし、中には皮膚科の専門ではない医師の診察を受け、「湿疹」などと診断されて塗り薬などを使用している人もいるでしょう。塗り薬で治癒した場合はがんの可能性はほとんどありませんが、薬を使用しても改善しない皮疹の場合は、念のため皮膚科の専門医に診てもらうようにしましょう。改善しないのに漫然と塗り薬を使用すると、皮膚がんだった場合に進行してしまうことがあります。

参考文献 執筆の参考にした文献やサイト等を最後に紹介します。信頼できる情報源を提示して下さい。

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http://www.skincancer.jp/citizens_skincancer04.html
https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/learn/results34/
http://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/introduction/3105/3106/21198.html
https://www.ogaki-mh.jp/gankyoten/cancer/hifu.html
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https://www.nms.ac.jp/kosugi-h/section/plastic-surgery/tadasikutaisyosuruhihugan.html
https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/12hifu.html
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/HPV.html
https://www.asia-arsenic.jp/pollution/health-damage
https://www.pref.miyazaki.lg.jp/kankyokanri/kurashi/shizen/toroku.html
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0327&dataType=1&pageNo=1
https://www.nanbyou.or.jp/entry/112
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/q08.html
https://maebashi.gunma.med.or.jp/healthmemo/%E7%B4%AB%E5%A4%96%E7%B7%9A%E3%81%A8%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%8C%E3%82%93/
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春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医