脳腫瘍と診断を受けたら、どの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?
脳腫瘍は通常「脳神経外科」が治療を担当します。また、放射線治療を行う場合には「放射線科」が治療を担当することもあります。
脳腫瘍は複数の治療を組み合わせたり、時間差で異なる治療を行う可能性のある病気です。また脳腫瘍の治療はどうしても他の部分の脳のダメージを回避できず、麻痺や言葉の障害、てんかんなどの後遺症を残さざるを得ないこともあります。
理想的にはがんを完全に取り除きつつ、できる限りその他の脳の機能を残すことが求められます。ただし、その見極めは非常に難しく、そういった意味でも脳腫瘍の治療は経験豊富な医師に診てもらうのが理想です。さらに、病院によっては設備的に治療の方法が限られる場合もあり、その場合はそのままその病院で治療を受けるのか、転院するのかといったことも考えなければなりません。
どの病院が脳腫瘍の治療を行っているのかはホームページや問い合わせなどでも確認できますが、経験数を推測するデータとしては厚生労働省が発表している、病院ごとの手術件数があります。
手術数の多い病院は脳腫瘍の患者を多く診ている可能性が高いため、ここでは脳腫瘍に関連した手術数をDPCデータを基にランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。
目次
脳腫瘍の手術が適応となる症例
脳腫瘍も基本的にはまず、手術で治療することができないか検討します。
しかし脳の特性上、抗がん剤や放射線治療の方が脳の機能を損なわないと判断された場合には手術以外の治療も積極的に勧められます。治療は1つとは限らず、2つ以上を組み合わせたり、時間差で行なったりすることもあります。
脳腫瘍の手術数トップ10
厚生労働省はDPCデータをもとに、各病院で行われている手術件数を公表しています。
DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。
脳腫瘍に関連した手術のデータ(平成29年公表データ)
脳腫瘍の治療は「脳神経外科」が担当します(放射線治療は「放射線科」が担当します)。
「脳腫瘍」の手術症例が多い病院:数字は年間症例数
- 東京女子医科大学病院(228例)
- 東京医科大学病院(195例)
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院(160例)
- 慶應義塾大学病院(134例)
- 筑波大学附属病院(114例)
- 社会医療法人寿会 富永病院(99例)
- 大阪市立大学医学部附属病院(98例)
- 鹿児島大学病院(95例)
- 東京大学医学部附属病院(94例)
- 国立大学法人京都大学医学部附属病院(91例)
各都道府県でもっとも手術件数が多い病院
- 北海道 社会医療法人医仁会 中村記念病院
- 青森県 弘前大学医学部附属病院
- 岩手県 岩手医科大学附属病院
- 宮城県 東北大学病院
- 秋田県 秋田大学医学部附属病院
- 山形県 国立大学法人山形大学医学部附属病院
- 福島県 一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属総合南東北病院
- 茨城県 筑波大学附属病院
- 栃木県 獨協医科大学病院
- 群馬県 国立大学法人群馬大学医学部附属病院
- 埼玉県 埼玉医科大学国際医療センター
- 千葉県 国立大学法人 千葉大学医学部附属病院
- 東京都 東京女子医科大学病院
- 神奈川県 北里大学病院
- 新潟県 新潟大学医歯学総合病院
- 富山県 国立大学法人富山大学附属病院
- 石川県 国立大学法人 金沢大学附属病院
- 福井県 福井大学医学部附属病院
- 山梨県 山梨大学医学部附属病院
- 長野県 信州大学医学部附属病院
- 岐阜県 国立大学法人岐阜大学医学部附属病院
- 静岡県 浜松医科大学医学部附属病院
- 愛知県 藤田保健衛生大学病院
- 三重県 国立大学法人三重大学医学部附属病院
- 滋賀県 医療法人社団昴会 湖東記念病院
- 京都府 国立大学法人京都大学医学部附属病院
- 大阪府 社会医療法人寿会 富永病院
- 兵庫県 神戸大学医学部附属病院
- 奈良県 奈良県立医科大学附属病院
- 和歌山県 和歌山県立医科大学附属病院
- 鳥取県 鳥取大学医学部附属病院
- 島根県 島根県立中央病院
- 岡山県 岡山大学病院
- 広島県 広島大学病院
- 山口県 宇部興産中央病院
- 徳島県 徳島大学病院
- 香川県 香川大学医学部附属病院
- 愛媛県 愛媛県立中央病院
- 高知県 高知大学医学部附属病院
- 福岡県 福岡大学病院
- 佐賀県 佐賀大学医学部附属病院
- 長崎県 長崎大学病院
- 熊本県 熊本大学医学部附属病院
- 大分県 大分大学医学部附属病院
- 宮崎県 宮崎大学医学部附属病院
- 鹿児島県 鹿児島大学病院
- 沖縄県 琉球大学医学部附属病院
手術数以外にも注目したいポイント
どのような治療方法を行なうことができるか
脳腫瘍は1つの治療で終了するとは限らず、手術、抗がん剤、放射線治療などを同時もしくは時期をずらしながら治療することも多い病気です。そのため、病院を選ぶときには、その病院でどの治療ができて、できない治療はあるのかどうかを確認することは重要です。
たとえば病院の設備の違いにより、治療の選択肢が限られる場合があります。放射線設備のない病院では放射線治療を選択することはできません。もちろんその場合、放射線が最適な治療と判断されれば放射線設備のある病院に紹介してもらうこともできますが、できれば診断から治療まで同じ病院で診てもらう方が手間も少なく安心です。
通院や手術となると通いやすさも重要ですが、脳腫瘍は患者数も少なく、ほかのがんと比較して治療に対応できる病院は多くはありません。脳腫瘍の治療病院を選ぶときには「放射線治療が可能か」「IMRT(強度変調放射線治療)が可能かどうか」「リハビリにも対応しているか」といった点も確認しておくとよいでしょう。
がん診療連携拠点病院
がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制の整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。
脳腫瘍と診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。
治療開始までの期間
一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。
最初の受診から治療開始までの期間の目安は1-3週間です。
厚生労働省|平成29年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について
神奈川県立がんセンター|検査・治療待機期間
神奈川県立がんセンター|治療・検査待ち期間一覧