脳腫瘍とは

脳腫瘍

脳腫瘍には頭蓋内から発生する「原発性脳腫瘍」と、他の臓器から脳に転移した「転移性脳腫瘍」の2つに分類されます。原発性脳腫瘍はさらに良性と悪性に分類されます。脳腫瘍の分類はかなり細かく、現在は130種類以上に分類されています。

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脳は神経細胞が集まってさまざまな機能をする臓器です。手足を動かす、言葉を理解し発する、考える、感情をコントロールするといった機能があります。

脳腫瘍はがん全体のなかでは頻度が少なく、原因となる細胞によって現在130種類以上に分類されているため、なかなか同じ病気の人を見つけるのは難しいかもしれません。同じ病気であっても、腫瘍のできる位置で症状は異なるため、他の人の経験を参考にしたり、比べたりすることもほとんど意味がありません。

そういう意味で、脳腫瘍と診断されたら、きちんと自分の病気の状態について医師から説明してもらうことは重要です。

脳腫瘍はどの病院でも治療ができるものではありません。基本的に脳神経外科で相談することになると思いますが、放射線治療は必要なのか、必要であれば放射線の設備はあるかといったことも確認する必要があります。

脳腫瘍は症例が少ないため、脳腫瘍になったらどのような検査があるのか、治療後はどのような生活になるのか、想像が難しいかもしれません。

ここではどのような人が脳腫瘍になりやすいのか、どうすれば脳腫瘍を早期発見できるのか、そして脳腫瘍と診断された人に対しては、脳腫瘍とはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、それぞれのページで細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

脳とは

脳は頭部にある頭蓋骨に囲まれた部分です。神経細胞(ニューロン)と神経線維、そしてこれらのすき間を埋めている神経膠(こう)細胞(グリア細胞)で構成されており、神経のやり取りで手足を動かす、言葉を理解したり発したりする、記憶する、感情を調節するといったさまざまな役割を行なっています。

脳の悪性腫瘍は「がん」という表現をせず、「脳腫瘍」という表現をします。「がん」は臓器の表面を構成する「上皮細胞」から発生したものだけにつけられる名称ですが、脳の中の細胞は「上皮細胞」ではないので「脳腫瘍」と呼びます。

脳腫瘍の主な原因と特徴について

脳腫瘍には頭蓋内から発生する「原発性脳腫瘍」と、他の臓器から脳に転移した「転移性脳腫瘍」の2つに分類されます。原発性脳腫瘍はさらに良性と悪性に分類されます。脳腫瘍の分類はかなり細かく、現在は130種類以上に分類されています。

脳腫瘍の原因としては稀な病気であるneurofibromatosis、von Recklinghausen病、Turcot症候群、Li-Fraumen症候群といった遺伝性疾患や、ウイルス感染、受動喫煙や携帯電話の通話、極低周波電磁波、一部の薬剤や燻製肉の摂取、ゴム製のおしゃぶりなどに含まれているN-ニトロソ化合物の摂取などが報告されています。

また脳腫瘍になりやすい人の特徴として、高身長や肥満、過度に糖分を摂取している、生野菜を食べない、未治療のむし歯が3本以上あるといった報告もあります。
身内に脳腫瘍の人がいる場合は、脳腫瘍の発症リスクが3~10倍高いとされています。

脳腫瘍とはどのような病気か、そして脳腫瘍になりやすい人の特徴や予防の詳細については「脳腫瘍になりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

脳腫瘍の初期症状と診断方法

脳にはさまざまな役割があるので、一概に脳腫瘍といってもその症状はさまざまです。

「脳は神経でできているから脳腫瘍ができたら頭が痛くなるに違いない」、と思われるかもしれませんが、脳の中には痛みを感じる神経がないので、脳腫瘍の初期から頭痛を訴える人は2割程度とも言われています。脳腫瘍に特徴的な頭痛は脳の中の圧が上がる起床時にもっとも痛くなる頭痛です。

その他に脳腫瘍のできた位置によって、いろいろな症状が現れます。たとえば、手足を動かす場所に病変ができれば手足の麻痺が、言語の位置にできれば言葉を話せなくなったり、聞いた言葉の意味が分からなくなったりします。腫瘍ができたことで脳に異常な電気が流れててんかん発作をおこしたり、認知症の症状や性格変化が見られることもあります。

これらの症状は脳腫瘍に限られたものではなく、脳梗塞や脳出血などでもおきることがあり、原因を調べるためには脳の画像検査が必要です。具体的には頭部CTや頭部MRIなどで検査を行います。

脳腫瘍がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「脳腫瘍がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

脳腫瘍の進行度別生存率

脳腫瘍はほかのがんと異なり、TMN分類やステージという表現はありません。

かわりに悪性度を表すグレード分類で表現します。グレードは1~4があり、基本的にはグレード1が良性腫瘍、グレード2~4が悪性腫瘍です。同じ病名でも、グレードが異なることはあり、また経過によってグレードの数字は途中で変わることもあります。

脳腫瘍にはさまざまな種類があるため、一概に悪性度が高ければ予後が悪い、とは言えません。予後を推測するデータとして5年生存率がありますが、これはその病気の人が適切な治療を受けて5年後生存している可能性を数値化したものです。脳腫瘍全体の5年生存率はがん全体と比較すると低い数字になっていますが、脳腫瘍を細かく分類すると、5年生存率が90%以上のものもあります。

脳腫瘍の罹患者数の推移や5年生存率、脳腫瘍の悪性度、末期の症状などについては「脳腫瘍の進行別生存率と平均余命」をご覧ください。

治療と副作用

脳腫瘍の治療の難しい点は、脳にはさまざまな機能があるため、他のがんのように病変を大きく切り取ってできる限り再発を予防する治療をおこなうと、それまでできていたことができなくなる可能性があることです。

脳腫瘍の治療はできるだけ治療しつつ正常な部分にはダメージが少ないよう、バランスをとることが非常に難しいのです。

もう1つの特徴は脳は有害物質が侵入しないように、血管と脳の間に血液脳関門という場所があります。抗がん剤もこの血液脳関門を通過しにくいので、使用できる薬にはいろいろと制限があります。

脳腫瘍の治療は手術前に脳の3D画像を作成したり、手術中に電気を流して機能を確認したり、病変部分に直接抗がん剤を薬をしみこませたものを貼り付けるといった工夫で治療成果を上げています。手術・抗がん剤・放射線治療などを、ときには2つ以上組み合わせたり、時間差で行なったりすることもあります。

脳腫瘍の治療とその副作用の詳細、脳腫瘍の再発や転移については「脳腫瘍治療と副作用について」をご覧ください。

全国の病院ランキングトップ10

脳腫瘍は比較的ほかの部位のがんよりも患者数の少ない疾患であり、どの病院でも治療が可能というわけではありません。基本的には「脳神経外科」が治療を担当することが多いですが、放射線治療は放射線科が担当することもあります。

どの病院で脳腫瘍の治療ができるのかを調べる方法の1つに厚生労働省が公表しているDPCデータがあります。DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度であり、ほとんどの大病院の手術数や症例数を見ることが可能です。

自分の生活エリアでどの病院を受診したらよいのか分からない場合には、各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」や各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」で相談する方法もあります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、セカンドオピニオンに対応しています。

「手術数で分かる脳腫瘍の名医がいる病院ランキングトップ10」では実際のランキングや手術の数を載せています。そのほかに病院選びの際のポイントも載せましたので、参考にしてみてください。

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医