肝臓がんとは

肝臓がん

肝臓はお腹の右上にあり、約1㎏もある体内最大の臓器です。肝臓は肝細胞でできており、肝臓の中には血管や胆汁が流れる胆管があります。

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肝臓がんは自覚症状に乏しく、症状で診断することができない病気です。日本では多くの患者がB型・C型肝炎ウイルスに感染しており、慢性肝炎や肝硬変を持っています。特に肝硬変の人は肝臓がんの高リスクであり、定期的に検査を受けて肝臓がんの早期発見をこころがけましょう。

広い意味での肝臓がんは、肝臓から発生したもの(原発性)と他の臓器にできたがんが肝臓に転移したもの(転移性)があります。また、原発性の10%は肝臓内にある胆管という管から発生した胆管細胞がんで、残りの90%が肝細胞癌です。

元気な方はどのようにすれば肝臓がんになりにくいのか、どうすれば肝臓がんを早期発見できるのかについて、肝臓がんと診断された人は肝臓がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、このサイトではそれぞれ細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

肝臓とは

肝臓はお腹の右上にあり、約1㎏もある体内最大の臓器です。肝臓は肝細胞でできており、肝臓の中には血管や胆汁が流れる胆管があります。

肝臓の主な役割としては血液をろ過して有害物質を取り除いたり、腸で吸収された栄養を貯めておく、食べ物に含まれる脂肪の分解を助ける胆汁を作る、といった役割を果たしています。

肝臓がんの主な原因と特徴について

肝臓がんになる人の8割以上がB型もしくはC型肝炎ウイルスに感染しています。これらのウイルスに持続的に感染すると一部の人は慢性肝炎や肝硬変に進行します。肝硬変になると1年あたり7%の人(100人中7人)に肝臓がんが発生します。

そのほかにアルコールをよく飲む人、アルコールは飲まないけれど脂肪性肝炎の人の一部にも肝臓がんが発生します。そのほかに肝臓がんを発症しやすいと報告されているのは、糖尿病の人、タバコを吸う人です。逆に、コーヒーの摂取は肝臓がんになりにくいという報告があります。

肝臓がんの調査では男性で45歳から、女性で55歳から罹患者が増え、肝臓がんで死亡する人の特徴は女性より男性のほうが約3倍多いと報告されています。

B型・C型肝炎ウイルスにはどのようにして感染するのか、どうしてこれらのウイルスに感染すると肝臓がんになりやすいのか、そのほか肝臓がんになりやすい人の特徴の詳細については「肝臓がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

肝臓がんの初期症状と診断方法

肝臓がんには固有の症状はありません。がんの症状よりも先に肝硬変による黄疸や腹水、血が止まりにくいといった症状があらわれることもあります。

肝臓がんの早期発見のために市町村の検診で行われているのはB型・C型肝炎ウイルスの検査です。近年では新たにこれらのウイルスに感染することは少なくなってきているので、毎年検査を受ける必要はありませんが、これまでに1度も肝炎ウイルスの検査を受けたことがない人は、ぜひこの検査を受けましょう。

人間ドックや任意の検診では画像検査で肝臓がんを探す検査が可能です。ただし小さな病変は検診レベルでの検査では確定診断できないため、その場合は精密検査として造影剤を使った検査が行なわれます。

肝臓がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「肝臓がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

肝臓がんのステージ別生存率

肝臓がんの病変のひろがり具合はステージとして表現されます。ステージは1から4まであり、数字が大きくなればなるほど病気のひろがりが広いことを示しています。生存率とは病気ごとの治療効果を表現するための数値で、一般的には5年後の生存率を表す「5年生存率」が使われています。

5年生存率は100%に近いほど治療効果の高い病気ということになります。肝臓がんのステージ別5年生存率はステージ1で59.6%、ステージ2で35.6%、ステージ3で14.0%、ステージ4で1.9%でした。肝臓がんの人の多くは肝臓自体に慢性肝炎や肝硬変といった病気を持っていることが多く、肝臓がんの治療には肝臓の機能の評価が必要となります。

肝臓がんのステージや平均余命、罹患者数や死亡数の推移、末期肝臓がんの症状やケアについては「肝臓がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。

治療と副作用

肝臓がんの治療法は種類が多く、肝切除術(開腹手術もしくは腹腔鏡手術)、穿刺療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼術など)、肝動脈塞栓術、放射線治療(陽子線、重粒子線)などがあります。

肝臓がんの治療方法の決定にはガイドラインがありますが、治療の選択肢が多く、設備や医師の技術などにより、異なる病院では異なる治療方法が提案されることもあります。

病院で治療方針の説明を受けるときには、自分の病気はどの範囲にあって、なぜその治療法がよいのか、その治療のメリットとデメリット、その治療以外の選択肢があるのかないのかを聞くことが重要です。

肝臓がんの治療の副作用の詳細については「肝臓がん治療と副作用について」をご覧ください。

全国の病院ランキングトップ10

肝臓がんの治療はがんの治療だけでなく、その後の生活を考えてできるだけ肝臓の機能を残すことも考慮しなければなりません。特に肝炎ウイルス感染や肝硬変の人ではのちに別の部位に肝臓がんが見つかることもあります。

治療方針を決める際にはこのようなことも考える必要がありますが、病院によっては設備や医師の技術などにより異なった治療が提案されることもあります。ですから、場合によってはある病院の治療方針に不安がある場合はセカンドオピニオンなどで別の病院の医師の意見を聞いてみるとよいかもしれません。

どの病院で治療を受けるかを検討する際には、治療が終わっても肝臓の経過を長期的にその病院でみてもらう必要があるかもしれない、ということにも留意しましょう。セカンドオピニオンや他の病院に紹介してもらう際には通常かかりつけ医に紹介状を書いてもらう必要があります。普通はそこでその地域で肝疾患に強い病院を紹介してもらうことになります。しかし、自分で病院を探すことになった場合はあまり情報がないかもしれません。

そんな時に参考になるのはDPCデータです。厚生労働省が集計しているDPCデータでは入院患者の主な病名や行った治療などが公表されており、その数で肝臓がん患者をどのくらいみているか推測することができます。

詳細は「手術数で分かる肝臓がんの名医がいる病院ランキングトップ10」で実際のランキングや数字を載せていますので、参考にしてください。

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医