ゼローダが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

ゼローダという抗がん剤について、どのくらいご存知でしょうか。

近年の部位別がん罹患率では常に上位を占めている乳がん・大腸がん(直腸がん・結腸がん)・胃がんの治療に用いられる抗がん剤の1つで、現在世界100か国以上で承認されていており、国内でも多くの現場で用いられています。

増殖する細胞に対して作用する抗がん剤であるため、高い抗がん作用が期待できますが、同時に副作用も高頻度で現れるため、使用には十分な注意が必要な医薬品でもあります。

このページではゼローダについて詳しく解りやすく解説していきましょう。

目次

ゼローダ(一般名:カペシタビン)とは

ゼローダは、国内大手製薬会社の中外製薬株式会社(以下、中外製薬)が製造販売する抗がん剤で、国内では2003年より販売されています。開発から創製まで全て中外製薬が行っている純国産の抗がん剤になります。

フルオロウラシル系代謝拮抗薬(又はフッ化ピリミジン系代謝拮抗薬)と呼ばれる薬剤に分類されており、生体内で同系代謝拮抗薬成分であるフルオロウラシルに変換される薬剤(プロドラッグ)になります。

フルオロウラシルは高い抗がん作用を有しており抗がん剤として長い歴史がありますが、それ自体の投与では、消化器や骨髄といった健康な細胞への作用も多く、排出も早いことから、副作用が強く現れる・十分にがん細胞に作用しない・連日投与といった問題が多くありました。

本剤は、そのフルオロウラシルをがん細胞に選択的に供給することを目的として設計されており、数あるフルオロウラシル系代謝拮抗薬の中で最も効果的・効率的で安全な薬剤として評価が高い薬剤になります。

剤形は錠剤(内服薬)のみで、原則1日2回の服用を休薬期間を設けながら継続していきます。

ゼローダが適応となるがんの種類

現在、ゼローダが適応となるがんの種類は、手術不能または再発の乳がん、直腸がん・結腸がんの術後補助療法(残っているがん細胞による再発予防)、手術不能または再発の直腸がん・結腸がん、胃がんになり、ある程度進行しているものが対象になります。

手術不能または再発の乳がんと直腸がん・結腸がんの術後補助化学療法ではゼローダ単剤投与で適応になりますが、手術不能または再発の直腸がん・結腸がんと胃がんでは、他の抗がん剤と併用が適応の前提となっており、単剤での使用は適応外になります。

ゼローダに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には遺伝情報を担う高分子生体物質「DNA」の複製が必要になります。ゼローダは、DNAの複製を阻害する作用があり、抗がん効果を表していきます。

有効成分カペシタビンは、それ自体には抗がん作用はなく、摂取後、生体内に存在するいくつかの酵素により段階的に様々な化合物に代謝・変換され、最終的に高い抗がん作用を有するフルオロウラシルに変換されます。フルオロウラシルは、DNAの材料と似た性質をしており、DNA複製に働く酵素が間違えてフルオロウラシルに作用してしまうことで、結果的にがん細胞のDNA複製が阻害され増殖が妨げられます。

カペシタビンをフルオロウラシルに変換するために必要な酵素ががん組織に多く存在していることから、標的であるがん組織への選択的・優先的な作用が期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

ゼローダの臨床試験は適応となるそれぞれのがん患者を対象に行われています。臨床試験は薬剤の有効性・安全性などを検討する目的で行われるため、基本的には単剤(対象となる薬剤のみ)で試験されますが、本剤は適応となるがんの種類によっては、他の抗がん剤と併用が適正使用となるものがあるため、それらに基づいた臨床試験が行われています。

日本人の進行・再発乳がん患者を対象に行った臨床試験において、ゼローダ単剤投与による奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)は45.5%で、日本人の進行・転移性結腸・直腸がん患者を対象に行った臨床試験において、XELOX療法(ゼローダとオキサリプラチン併用)とXELOX+BV療法(XELOX療法とヘバシズマブ併用)による奏効率はそれぞれ66.7%と71.9%になります。

胃がんにおける臨床試験データは外国人を対象にしたもので、胃がん術後補助化学療法患者を対象に行った経過観察とXELOX療法の比較試験では、XELOX療法の優越性が認められています。

主な副作用と発現時期

ゼローダは、フルオロウラシルのプロドラッグのため、薬理学的には健康細胞への影響は少なく、従来の抗がん剤で高頻度で見られる脱毛・悪心・口内炎といった副作用症状は軽い、または少ないとされています。しかし、それでも全体の副作用発現率は高く、特徴的な症状も見られるため注意が必要になります。

主な副作用症状

臨床試験による単剤投与における副作用発現率は93.0%で、主なものに、手足症候群59.1%、悪心33.2%、食欲不振30.5%、下痢25.5%、赤血球減少(貧血・めまいなど)26.2%、白血球減少(感染抵抗力低下など)24.8%、口内炎22.5%があります。

特に手足症候群はゼローダの特徴的な副作用で、手や足に痛み・炎症・ひび割れ・水ぶくれができたり、皮膚や爪が変色したりすることもあります。服用開始から1~2週間が発現のピークですが、2~3ヶ月は経過観察が必要になります。発現の要因は解明されていませんが、普段手や足に圧力・摩擦が多い人に高頻度にみられることから、これら刺激から守ることが予防策とされています。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、心障害(心筋梗塞・狭心症・心不全・不整脈など)、肝障害、腎障害、骨髄抑制(汎血球減少・顆粒球減少など)、間質性肺炎(咳・息切れ・呼吸困難など)、腸炎、神経障害(歩行障害・麻痺・運動障害・意識障害など)、血栓塞栓症(脳梗塞・肺塞栓症など)などが、いずれも頻度不明ながら報告されています。検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化する恐れもあるため、経過観察を十分に行う必要があります。

ゼローダの安全性と使用上の注意

安全性

ゼローダは、フルオロウラシル作用の有効性・安全性の向上を目的に開発されており、臨床試験などからも、脱毛や悪心などの副作用の発現率は従来の抗がん剤と比較して低くなっています。また、内服薬であるため、投与による体の負担も軽く済むのも利点となります。

しかし、進行しているがんに対して用いられる薬剤であるため、作用は強く、その他抗がん剤やホルモン剤との併用で用いられることも多く、患者の状態(年齢や体力など)や他剤との組み合わせによっては、安全性が確立していない場合が多いのも現状になります

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分及びフルオロウラシルに対して過敏症の既往歴のある方・重篤な腎障害のある方・妊婦及び妊娠の可能性がある方への投与は禁止されています。また、腎障害(軽度~中度)のある方・肝障害のある方・冠動脈疾患の既往歴のある方・骨髄抑制のある方・消化管潰瘍または出血のある方・高齢者への投与は、副作用リスクを高めるとして慎重投与とされています。

併用禁忌薬はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤 (商品名ティーエスワン:抗がん剤)、併用注意薬はワルファリンカリウム(商品名ワーファリン:抗血栓薬)、フェイトイン(商品名アレビアチン:抗てんかん薬)、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤(商品名ロンサーフ:抗がん剤)になります。

まとめ

ゼローダは、体内の酵素を利用するという画期的な薬剤であり、高い有効性と安全性により、現在ではほとんどの臨床の場でフルオロウラシル系製剤療法の第一選択薬になっています。

延命と同等にQOL(生活の質)の維持を重要視している抗がん剤治療において、高い抗がん作用を有しながらも身体への負担が少ない本剤は、今後も幅広い活躍が期待できる抗がん剤の1つといえます。

がん患者推移
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/annual.html
カペシタビン概要
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%B3
ゼローダ添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4223005F1022_1_23/
フルオロウラシル概要
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%AB

コダニカズヤ