タモキシフェンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

タモキシフェンは乳がんの治療に用いられる抗がん剤ですが、乳がんは5年から10年といった長期に渡り治療を行うことが一般的とされていますので患者さんへの負担や侵襲性の低い薬剤が望まれています。

タモキシフェンは従来の化学療法剤と異なり、ホルモンの働きに着目されて開発された薬剤のため副作用が少ないとされています。また、抗がん剤は一般的に注射剤が多いとされていますが、タモキシフェンは内服薬として治療を行なうことができますので、治療にかかる時間や簡便さといった観点から見ても患者さんの負担が少ない抗がん剤であると言えるでしょう。

このページでは、抗がん剤「タモキシフェン」に注目して、治療ができるがんの種類やそれぞれの治療効果、また副作用についても詳しく解説していきます。

目次

タモキシフェン(商品名:ノルバデックス)とは

一般名タモキシフェンは、商品名ノルバデックスという抗がん剤です。
タモキシフェンはイギリスのICI社(現在はアストラゼネカ社となっています)により開発された抗がん剤です。

ホルモン剤のグループに属していますが、同じグループに属するフルオキシメステロンやスチルベストロールといった抗がん剤と比較すると、ホルモンへの作用が低く副作用が少ないことが特徴です。

タモキシフェンが適応となるがんの種類

タモキシフェンは、乳がんの患者さんに効果を持つ内服の抗がん剤です。
通常、1日1回20mgを服用します。
症状により増量、または減量されることがありますが、1日の最高用量は40mgまでとなっています。
※飲み忘れた場合には、気付いたときに服用します。

次回の服用時間が近い場合には、1回分を飛ばすようにします。
(短い時間に繰り返し服用する事により、強い副作用が現れることがありますので注意が必要です)

※PTP包装の薬剤となりますので、必ず包装から取り出して服用するようにします。
※PTP包装ごと服用してしまうと粘膜に傷をつけ、重い合併症を引き起こすことがありますので注意が必要です。

タモキシフェンに期待される治療効果

タモキシフェンは、抗がん剤の中でもホルモン剤に分類される薬剤です。

乳がんは女性ホルモンが関与するがんであることが知られていますが、タモキシフェンは乳がんの進行に関与する女性ホルモンの働きを抑える事で、がん細胞の増殖を抑える効果が期待されています。

タモキシフェンが治療できる乳がんについて、「奏効率」という標的となるがんが小さくなった患者さんの割合を示した数値で、その効果を解説していきます。

乳がんの患者さん268症例に対して行った国内臨床試験において、奏効率30.3%(81/268症例)という結果が得られています。

この臨床試験では、軟部組織や骨、内臓等の各転移巣にも有効であることが確認され、閉経後の患者さんだけではなく、閉経前の患者さんにも有効であることも確認されています。

主な副作用と発現時期

タモキシフェンはホルモン剤であるため、化学療法剤であらわれるような骨髄障害や脱毛などの重い副作用が少ないことが特徴です。

※骨髄障害とは、白血球や血小板などが新しく体内で作られにくくなってしまうことを言います。特に白血球数が低下すると免疫力が落ちてしまい、感染症を合併しやすくなり命にかかわる場合もありますので、血液検査を行い数値や状態などをしっかり確認する事が重要です

さらに、同じグループに属するメピチオスタンという抗がん剤と比較すると、有効率に差がないにも関わらず副作用が少なかったことが確認されています。

主な副作用

市販後に使用成績調査が行われ、集計された3,762例の解析データです。

3,762例中、副作用が報告されたのは312例(8.29%)となります。

無月経、月経異常
3.18%(120/3,762例)
悪心、嘔吐、食欲不振
1.51%(57/3,762例)

これら副作用の発現時期は、服用期間中にわたって現れる事が確認されており、患者さんによっては遅い時期にあらわれる方、1日目からあらわれる方とさまざまです。

これらの主な副作用の他に、タモキシフェンのエストロゲン作用の低下により気分が落ち込むなどの症状がみられる場合があります。

特に長期に渡り飲まれている方はストレスや不安感などを感じる事があるかもしれません。

その場合は、主治医や看護師、薬剤師にすぐ相談して、解消できるように対策する事が重要です。

また、視力の低下やかすみ目などが現れることがありますので、直ぐに主治医に報告する必要があります。必要に応じて眼科的検査が行われます。

タモキシフェンの安全性と使用上の注意

タモキシフェンを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。

重要な基本的注意

タモキシフェンの使用により、子宮体がんや子宮肉腫、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープなどが報告されています。
そのため、タモキシフェン投与中や投与が終了している患者さんにおいても定期的に検査を行うことが望ましいとされています。
また、定期的に検査を行っていても、不正出血等の異常な症状が現れた場合には直ちに検査を行うこととされています。

使用上の注意

  • 妊婦、産婦の患者さん:海外において自然流産や胎児の死亡、先天性欠損が報告されていますので、妊娠又は妊婦の患者さんには投与を避けることとされています。タモキシフェン使用の前は、妊娠していない事を確認する必要があります。
  • 授乳中の患者さん:授乳中の投与についての安全性が確立していませんので、授乳中の患者さんへの投与は避けることとされています。タモキシフェン投与の必要がある場合には、授乳を中止する必要があります。
  • 小児等の患者さん:安全性が確立していません

抗がん剤は、使用上の注意や副作用などをしっかり確認し、用法・用量を守って正しく使用する事で最大の効果を得る事が出来る薬剤です。これから治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとっても参考になれば幸いです。

タモキシフェン添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291003F1163_1_17/
タモキシフェンインタビューフォーム
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

ma2

薬剤師

将来に迷っていた高校生の頃に身内が数人がんで亡くなる経験をしたことで、延命ではなく治癒できる抗がん剤を開発したいと考えるようになり、薬剤師を目指しました。
大学卒業後は製薬メーカーに薬剤師として勤務し、抗がん剤などの薬剤開発に約18年携わって参りました。
現在は、子育てをしながら医療系の執筆を中心に活動しており、今までの経験を生かして薬剤の正しい、新しい情報が患者様に届くように執筆しております

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