悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は血液がんの1つで、白血球の1種であるリンパ球ががん化したものです。実際にはリンパ球はさらに細かく分類できるので、リンパ腫は100種類近くに分類されます。

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悪性リンパ腫は血液がんの1つで、細かく分類すると100近くの種類があります。

治療方針は細胞の種類と、診断されたときの病気のひろがり具合で決定されますが、基本的には全身をめぐる血管やリンパにがん細胞は存在する可能性があるので、抗がん剤を使った治療が主軸となります。

悪性リンパ腫の多くは原因不明ですが、中には関連性が示唆されているものもあります。たとえばヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病リンパ腫の原因に、ピロリ菌感染は胃MALTリンパ腫の原因になる、といったものです。遺伝子異常もリンパ腫発症の一因ですが、これば成長の途中で現れる変化であり、悪性リンパ腫は親から子へ遺伝する病気ではありません。

悪性リンパ腫は全身のどの部分でも発症する可能性があるので、健康診断や人間ドックなどので「悪性リンパ腫があるかどうか」と調べるのは非常に困難です。診断の多くは、体表のリンパ節の腫れに気づいたり、もしくはほかの目的で行った検査で偶然しこりが見つかり、精密検査をしてみたら悪性リンパ腫だったということの方が多いかもしれません。

悪性リンパ腫はほかのがんと比較して症例数が少ないため、悪性リンパ腫になったらどのような検査があるのか、治療後はどのような生活になるのか、想像が難しいかもしれません。

ここではどのような人が悪性リンパ腫になりやすいのか、どうすれば悪性リンパ腫を早期発見できるのか、そして悪性リンパ腫と診断された人に対しては、悪性リンパ腫とはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、それぞれのサイトで細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫は血液がんの1つで、白血球の1種であるリンパ球ががん化したものです。

実際にはリンパ球はさらに細かく分類できるので、リンパ腫は100種類近くに分類されます。
とくに治療を考えるにあたって重要なのは、どの種類のリンパ腫なのか、それは進行が早いのか遅いのか、そして診断時点でどの程度ひろがっているかです。

リンパ腫は体のどの部位からも発症する可能性があります。肝臓にしこりがあるから肝臓がんだと思ったらリンパ腫だった、脳に腫瘍があるから脳腫瘍だと思ったらリンパ腫だった、ということがありえるのです。

悪性リンパ腫の主な原因と特徴について

リンパ腫の多くは原因不明です。一部のリンパ腫は遺伝子異常を認めますが、この遺伝子異常は生まれたあとに起きたものであり、親から子に遺伝するものではありません。タバコはこの遺伝子異常をきたしやすいという報告もあります。

特定のウイルスや細菌感染がリンパ腫の原因になっているという報告もあります。有名なものではヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病リンパ腫の原因に、EBウイルスの持続感染はホジキンリンパ腫やバーキットリンパ腫に関係していると考えられています。

さらに、非ホジキンリンパ腫の患者にはB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染者が多いという報告があります。細菌ではピロリ菌感染が胃のMALT(マルト)リンパ腫の原因になると考えられています。これらのウイルスや細菌は感染したら必ずリンパ腫になるわけではありませんが、感染していることが分かっていればリンパ腫になることを予防できる場合もあるので、リンパ腫が心配な人はこれらの感染症がないか検査を受けてみてもいいでしょう。

食生活では肉の加工食品に多く含まれる飽和脂肪酸をたくさん摂取する人では、リンパ腫になりやすい傾向が見られたという報告もあります。

悪性リンパ腫とはどのような病気か、そして悪性リンパ腫になりやすい人の特徴や予防の詳細については「悪性リンパ腫になりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

悪性リンパ腫の初期症状と診断方法

リンパ腫は全身どの部位にも発生することがあり、皮膚から触れることができるリンパ節が腫れない限りは初期の段階では症状に乏しく、早期診断が難しい病気です。体の表面から触れることができるリンパ節には首、腋の下、足の付け根などがあります。

リンパ腫は病状が進むと発熱、寝汗、体重減少といった症状が出てくる場合があります。

リンパ腫を疑うしこりや症状を認めた場合には、基本的に病変の一部もしくはすべてを採取して、顕微鏡で検査を行います。これはどの種類のリンパ腫であるか明らかにしないと治療方針が決められないためです。病変が体表に近い場合は局所麻酔で組織を取り出すこともありますが、脳の中や胸の中、お腹の中の場合は全身麻酔が必要になることもあります。

リンパ腫と診断され、その種類が明らかになれば、あとはどこまで病変がひろがっているかを画像検査などで調べます。リンパ腫の種類と病気のひろがり具合で治療方針が決まるので、全身の画像検査は必須です。

悪性リンパ腫の初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「悪性リンパ腫の初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

悪性リンパ腫のステージ別生存率

悪性リンパ腫は他のがんと同じように、病変がひろがればひろがるほど、つまりステージが進むと予後は悪くなります。

しかし、リンパ腫にはさまざまな種類があり、一概にリンパ腫としてひとくくりでその予後を推測することはできません。ステージが進んでいても治療が効きやすいタイプであれば、平均的な予後よりも長く生存することはよくあります。

さまざまな種類があるリンパ腫の予後を推測する方法として、予後不良因子の数で推測する方法もあります。

悪性リンパ腫の分類、ステージはどのように決められるのか、罹患者数の推移や5年生存率については「悪性リンパ腫のステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。

治療と副作用

悪性リンパ腫は血液のがんであり、全身にひろがりやすいことから、治療の基本は抗がん剤になります。

最初の治療は基本的にリンパ腫の種類ごとに決まっていますが、その後の治療は、最初の治療の効果の程度や副作用の有無など、個々の状態によって異なります。
適応は限られますが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を追加で使用することもあります。

ときには放射線治療や手術を組み合わせることもあります。

血液がんに対して強力な治療を行った場合は、正常な血液もダメージを受けることがあります。その場合には造血幹細胞移植と呼ばれる治療前の患者自身、もしくはHLAの一致する他人からの血液の元となる細胞を移植する治療を並行して行うこともあります。

悪性リンパ腫の治療とその副作用の詳細、悪性リンパ腫の再発や転移については「悪性リンパ腫治療と副作用について」をご覧ください。

全国の病院ランキングトップ10

悪性リンパ腫はほかのがんと比較して患者数の少ない疾患であり、どの病院でも治療が可能というわけではありません。多くの病院では「血液内科」が治療を担当します。(放射線治療は放射線科が、手術は外科が担当します。)

どの病院で悪性リンパ腫の治療ができるのかを調べる方法の1つに厚生労働省が公表しているDPCデータがあります。DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度であり、ほとんどの大病院の手術数や症例数を見ることが可能です。悪性リンパ腫については手術症例の数や手術を行っていない入院患者数(その多くは抗がん剤治療の患者と推測されます)のデータが公表されています。

自分の生活エリアでどの病院を受診したらよいのか分からない場合には、各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」や各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」で相談する方法もあります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、セカンドオピニオンに対応しています。

「手術数で分かる悪性リンパ腫の名医がいる病院ランキングトップ10」では実際に悪性リンパ腫を治療している病院の情報を載せています。参考にしてみてください。

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医