悪性リンパ腫のステージ別生存率と平均余命

リンパ腫と診断されるとその予後は気になるかもしれません。

リンパ腫の予後は細胞の種類と、発見されたときのステージ(進行度)が関連しています。5年生存率はがんの治療効果を比較するために使われる目安で、その病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。

リンパ腫は種類が多くそれぞれ病気の特徴が異なることや、比較的患者数が少ないこと、同じ病気であっても発生した部位が異なる場合もあるため、リンパ腫をひとまとめにしてその予後を推測することは大変困難です。

病気の進行の速さによって悪性度で分類する方法もありますが、あくまでこの分類は無治療の場合の進行の速さで分類したものであり、治療の効果とは異なりますので、言葉に惑わされず、自分の病気を正しく理解して、主治医とともに適切な治療を選択しましょう。

目次

リンパ腫の種類と進行度について

リンパ腫の種類

細胞の種類による分類

リンパ腫はその細胞の種類によって治療方針が大きく異なることから、画像検査である程度悪性リンパ腫であろうと診断がついても、最終的にはその組織を採取して、顕微鏡で観察したり、免疫染色などを行って、その細胞の種類までを特定します。

悪性リンパ腫は、まずホジキン病と非ホジキンリンパ腫の2つに大別します。

ホジキン病は病変を顕微鏡で観察したときに「リード・スタンバーグ細胞」という特徴的な細胞を認めます。「リード・スタンバーグ細胞」のないリンパ腫は非ホジキンリンパ腫です。
日本人のリンパ腫の9割は非ホジキンリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫はリンパ節以外の部位にも発症しやすく、病期が体のあちこちに飛んで発症しやすいという特徴があります。一方ホジキン病は欧米人に多く発症するタイプで、リンパ節以外の部分にはあまり病変は現れず、比較的病変が連なって見られることが特徴です。

非ホジキンリンパ腫はもととなったリンパ球の種類によって以下のようにさらに分類されます。

  • Bリンパ腫
  • Tリンパ腫
  • NKリンパ腫

細かく分類すると、悪性リンパ腫は100近くの種類に分類することができます。

進行の速さによる分類

悪性リンパ腫を、進行の速さによって3つに分類したものです。

低悪性度リンパ腫 年単位で進行するタイプ
中悪性度リンパ腫 月単位で進行するタイプ
高悪性度リンパ腫 週単位で進行するタイプ

あくまでこの分類は、リンパ腫を治療しなかった場合の進行の速さを示したもので、決して高悪性度のものの治療が難しいわけではありません。

リンパ腫の進行度(ステージ)

リンパ腫の病期はⅠ~Ⅳ期の4つに分類されます。基本的にはⅠ、Ⅱ期は「限局期」、ⅢとⅣは「進行期」とも言います。

Ann Arbor分類

Ⅰ期 限られた1つの領域内のリンパ節のみに限られている。
Ⅱ期 横隔膜(胸とお腹を仕切る膜)より上の範囲で2か所以上のリンパ節領域。
もしくは横隔膜より下の範囲で2か所以上のリンパ節領域。
Ⅲ期 横隔膜の上と下、両方のリンパ節領域に認められる。
Ⅳ期 1つ以上のリンパ系ではない部位へのびまん性浸潤。

リンパ腫のステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、リンパ腫のある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。

5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

リンパ腫の5年生存率はどのくらいあるか

リンパ腫の5年生存率(2009~2011年のデータ)は男性で66.4%、女性で68.6%、全体では67.5%となっています。

2002~2006年のデータでは男性で52.5%、女性で60.5%と報告されており、治療の効果は年々向上していると考えられます。

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けた進行度別の5年生存率は以下の通りです。

  全症例 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期
ホジキンリンパ腫 76.0% 91.4% 84.6% 65.3% 44.7%
非ホジキンリンパ腫 68.3% 86.7% 74.3% 64.0% 54.6%

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

リンパ腫の平均余命

リンパ腫の平均余命のデータは発表されていません。この理由としては、リンパ腫にはさまざまな種類があるため、一概に表現できないためと考えられます。

かわりにリンパ腫にはさまざまな予後予測のための予後不良因子があります。
たとえば中~高悪性度非ホジキンリンパ腫の予後不良因子(国際予後指標:IPI)は以下の通りです。

  1. 年齢:61歳以上
  2. 血性LDHの値:正常上限異常
  3. パフォーマンスステータス:2-4
  4. 病期(ステージ):ⅢもしくはⅣ期
  5. リンパ節外病変:2つ以上

*パフォーマンスステータスとは日常生活がどの程度できるかを0-4の5段階で分類したもので、パフォーマンスステータス2-4とは1日の半分以上をベッド上で過ごしている人が対象となります。

この5つの項目のうち該当する個数で以下のように判断します。

0-1個:低リスク
2個:低中間リスク
3個:高中間リスク
4-5個:高リスク

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

1980年には10万人あたり4.1人でしたが、1999年には10人を超え、2012年には20人と年々増加傾向にあります。調査最終年の2015年には23.7人と報告されています。

死亡数の推移

悪性リンパ腫による死亡者の割合は、1980年には10万人あたり3.1人でしたが、1999年には2倍の6.1人、調査最終年の2021年には11.2人と、罹患者数の増加に伴い、死亡数も増加しています。

リンパ腫の末期症状とケアに関して

悪性リンパ腫は、体のあらゆる部位に病変が発生するため、人によって症状はさまざまです。
ここでは、悪性リンパ腫によって全身的に現れる症状と対処について解説します。

全身に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、鎮痛剤や医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。

食欲不振や吐き気については制吐剤やステロイドなど、症状を和らげる薬が使われます。
十分な栄養摂取ができなくなった場合は全身状態や患者の希望を考慮し、腹壁から胃に管を造設する胃ろうや、鼻から胃に管を入れて栄養剤を入れる経鼻胃管、点滴などの代替栄養を検討します。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

1.大阪医療センター|悪性リンパ腫(血液内科)
2.大阪国際がんセンター|悪性リンパ腫(ICD10:C81-85,C96 ICD-O-M:9590‐9729,9750-9759)
3.がん治療.com|悪性リンパ腫

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医