喉頭がんのステージ別生存率と平均余命

喉頭がんと診断されるとその予後は気になるかもしれません。喉頭がんの予後は発見されたときのステージ(進行度)と関連しています。5年生存率はがんの治療効果を比較するために使われる目安で、その病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。

喉頭がんは症例数が少ないため大規模なデータはありませんが、放射線治療の効果が高いこともあり、がん全体と比較して5年生存率は高く、治療の効果が期待できる疾患です。

目次

喉頭がんの種類と進行度について

喉頭がんの種類

発生部位による分類

喉頭がんはその発生部位によって声門上部がん、声門がん、声門下部がんに分けられます。がんの発生頻度は声門がんが最も多く6割程度、次いで声門上部がんが3割程度であり、声門下部がんは1-2%とまれです。

細胞の種類による分類

喉頭がんの99%は扁平上皮がんです。まれに腺がんや悪性リンパ腫も発生します。

喉頭がんの進行度(ステージ)

進行度とはがんのひろがり具合を表します。喉頭がんのステージは0から4までの5段階で、一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。さらにステージ4はA、B、Cの3段階に分けられています。

ステージ1、2を早期がん、3、4を進行がんと表現することもあります。

ステージ0

がんが上皮内にとどまっている状態です。

ステージ1

がんが発生部位にとどまり、リンパ節転移がなく、声帯の運動が正常。

ステージ2

リンパ節転移がなく、がんが隣のエリアまでひろがっている状態です。

  • 声門上部がん→声門まで
  • 声門がん→声門上部もしくは声門下部
  • 声門下部がん→声門まで

ステージ3

がんが喉頭外まではひろがらず、声帯の運動が固定され、リンパ節転移がない状態。
もしくは、がんが喉頭外まではひろがらず、同じ側(右のがんであれば右側、左のがんであれば左側)に1つだけ3㎝以下のリンパ節転移がある。

ステージ4

ステージ4 A

がんが喉頭外までひろがっているが、リンパ節転移はない状態もしくはがんと同じ側に1つだけ3㎝以下のリンパ節転移がある状態。
あるいは、がんのひろがりには関係なくがんと同じ側に3-6cmのリンパ節転移がある。
あるいはがんの反対側に6㎝以下のリンパ節転移を認める状態。

ステージ4 B

がんのひろがりには関係なく6㎝を超えるリンパ節転移がある状態。

ステージ4 C

遠隔転移(肺や肝臓など)がある状態。

喉頭がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、喉頭がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。

5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

喉頭がんの5年生存率はどのくらいあるか

喉頭がんの5年生存率は男性で81.8%、女性で81.7%、全体で81.8%と男女差はなく、がん全体と比較してもよい成績となっています。

進行度別では限局(病変が発生部位に限られている状態)では93.7%、領域(所属リンパ節まで)では54.0%、遠隔(他の臓器に転移がある場合)14.5%と報告されています。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。

患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

1980年には10万人あたり2.0人でしたが2008年には4.1人と2倍に増加しています。その後調査最終年の2015年まではおおよそ横ばいとなっています。

死亡数の推移

喉頭がんによる死亡者の割合は、調査年の1958年から2015年にかけて10万人あたり0.7から0.8人の間を横ばいに推移しています。

喉頭がんの末期症状とケアに関して

気管孔の管理

喉頭を摘出すると、永久気管孔になることがあります。永久気管孔とは気管の出口をのどに新たに作ることで、本来肺は口や鼻とつながっていますが、気管孔ができると、肺に入った空気の出口はのどの気管孔だけになります。その場合、口から息を出したり、鼻をかんだりすることができなくなります。

代替音声

食道発声

胃や食道に空気を貯めて、その空気を吐き出すときに発声する方法です。習得に時間がかかります。

簡単な会話が可能になるまでには3か月以上かかりますが、安価で、道具を持ち歩く手間もありません。発声のために追加の手術は必要はありません。長い文章を話すのには不向きです。

電気喉頭

小さな機械を首の皮膚にあてて、電気的に振動させながら発声します。1週間程度で会話は可能です。ただし現在の技術では明瞭な言葉を発することはできません。追加の手術は不要です。

気管食道瘻形成術

気管と食道をつなぐ手術(シャント手術)を行ない、肺の空気を食道から出せるようにして発声します。発声のための手術が必要です。早くて2週間程度で簡単な会話が可能です。

手術で喉頭を摘出した場合には、身体障碍者の音声または言語機能障害の3級に認定されます。

全身に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。
食欲不振や吐き気についてはその症状を和らげる薬が使われます。
飲み込みが悪くなり、口から食べ物を摂取すると誤嚥する可能性が高い場合には腹壁から胃に管を造設する胃ろうが行われることもあります。栄養状態が悪いときには点滴で栄養を補うこともあります。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

がん研有明病院 | 喉頭がん
近畿大学病院
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参照日:2021年9月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医