喉頭がん治療と副作用について

喉頭がんの基本的な治療は、手術と放射線治療になります。治療方針はがんの発生部位や進行度、発声機能を残したいかどうかといった希望を踏まえて決定します。場合によっては、声を出す機能を失っても確実にがんを治療するか、といった選択をしなければならないかもしれません。治療後に発声や食べ物を飲み込む能力などをどのくらい残せるかも考えて決断が必要です。

病院で治療方針の説明を受けるときには、自分の病気はどの範囲にあって、なぜその治療法がよいのか、その治療のメリットとデメリット、治療後の生活でできないことは何か、その治療以外の選択肢があるのかないのかを聞くことが重要です。

目次

喉頭がんの主な治療法

喉頭は声を発するために重要な臓器であり、喉頭がんの治療はがんの再発転移を防ぎつつ、できる限り発声機能を残せるように検討しなければなりません。

治療方法を考える際には、がんの発生部位(声門、声門上部、声門下部)、ステージ、喉頭(発声機能)温存の希望を踏まえて決定します。

ステージ別の治療方法

早期がんに対しては、放射線治療のみ治療であっても発声機能を残しつつ、予後もよい結果となっています。レーザーを用いた経口的切除は短期間で治療できるメリットがありますが、やや発語に障害が残る可能性があります。喉頭部分切除術は声帯が温存できる治療方法ですが、術後に誤嚥のリスクがあります。喉頭全摘術とは声帯も含めてすべてを摘出する手術です。

ステージ1

放射線療法もしくは喉頭部分切除術(+頚部郭清術)

ステージ2

放射線療法(+化学療法)もしくは喉頭部分切除術/喉頭全摘術(+頚部郭清術)

ステージ3

放射線療法+化学療法(+頚部郭清術)もしくは喉頭部分切除術/喉頭全摘術(+頚部郭清術)(+術後化学療法)

ステージ4A・4B

放射線療法+化学療法(頚部郭清術)もしくは喉頭全摘術+頚部郭清術(+術後化学療法)

ステージ4C

化学療法

手術

手術のメリットとデメリット

手術は大きく分けて、喉頭全摘術と喉頭部分切除術、レーザー治療があります。
頚部リンパ節転移がある場合の基本的な治療は手術で、頚部郭清術を行います。

手術のメリット

手術の一番のメリットは病変を取り出すことにより、より細かい病気の評価と治療の効果の判定が可能であるということです。後述する抗がん剤や放射線療法の場合、治療が効いているかどうかは画像検査で判断しますが、言い換えれば目で見えない大きさの病変については評価できません。しかし手術の場合は、病気がひろがっていると思われる範囲をすべて取り除き、その後取り出した病変に対し顕微鏡による検査(病理検査)を行って、十分に取り切れているかを評価することができます。細胞レベルで評価するため、CTやMRI、PET検査よりも精密な診断になります。
中には手術前に診断されたステージと、手術後の病理検査によってステージが変わる場合があります。これはCTやMRI、PETなどの画像検査には限界があり、実際の病気のひろがりと誤差が出る可能性がある、ということです。

手術のデメリット

手術前にどんなに検査や準備をしても、100%安全な手術はありません。手術や全身麻酔による合併症の危険性はゼロにはなりません。そのため、病院はあらゆる想定をもとに予防や術後の診察を行い、合併症を早期に発見し迅速に対応するようにしています。しかし、自分の体のことですからすべて病院任せにせず、自分でも合併症が起きた場合にすぐ気づけるように、自分の手術ではどんな合併症が起こりうるのかをきちんと聞いておきましょう。
比較的頻度の高い合併症は以下の通りです。

手術中もしくは手術直後に起こりうる合併症

  • 出血:傷口からの出血やのどからの出血などがあります。
  • 創部感染:手術の傷に感染すること。
  • 縫合不全:縫い合わせた部分がしっかりくっつかないこと。場合によっては再手術が必要になることもあります。
  • のどのむくみ:手術の影響でのどの粘膜がむくむことがあります。むくみが強い場合は呼吸困難を来すこともあります。
  • 喀痰の増加:手術でのどを触ると反応的に痰が増えます。通常は痰がからむと咳をして排出しますが、痛みなどで咳がしっかりできないとのどに痰がたまり、それを肺に吸い込むと肺炎になることもあります。特にタバコを吸っている人では痰が増えるので、手術前に禁煙をし、手術前後に痰を出す訓練を行って肺炎を予防します。
  • 下肢深部静脈血栓・肺血栓塞栓症:足の動きが減ることで、足の血管に血栓(血の塊)ができることがあります。さらにその血栓が肺に飛んで肺の血管が詰まると肺血栓塞栓症となり、呼吸困難や低酸素血症となることがあります。
  • せん妄:手術や入院のストレスなどの原因でおきる意識障害。意味不明な言動や幻覚・幻聴、暴れるといった異常行動がみられます。

手術の主な治療法

喉頭全摘出術

喉頭を周囲の軟骨(甲状軟骨・輪状軟骨)や筋肉とともに、場合によっては甲状腺も一緒に切除します。

声を出すための声帯も摘出するためそのままでは声を出すことができません。術後希望があればいくつかの代替音声によって声を出す方法を取得します。また、食べ物や飲み物が気管に入らないようにするための喉頭蓋も摘出するため、呼吸の通り道である気管はのどの前面に出口(気管孔)を作り、口は食道だけにつながるようにつなぎなおします。

喉頭部分切除術

切除する範囲によって声帯を残す水平部分切除術と、声帯の一部だけを切除する垂直部分切除術があります。

喉頭の一部は残るため声を出すことはできますが、のどの動きが低下するため声の性質が変わったり、食べ物を飲み込む時に誤って食べ物が気管に入る誤嚥を起こすことがあります。

レーザー治療

早期の喉頭がんに対しては、放射線と同等の効果があると報告されています。全身麻酔で口から器具を挿入し、のどの内側からレーザーで病変を切除します。

治療期間が短く、放射線を使用しない点がメリットです。レーザーの種類には炭酸ガス、Nd:YAG(ネオジムヤグ)、KPTなどがあり、それぞれの特性によって使い分けされます。

抗がん剤

抗がん剤のメリットとデメリット

抗がん剤治療は、喉頭がんの主たる治療ではありませんが、手術や放射線治療をサポートしたり、手術が困難な場合に行なわれます。

抗がん剤のメリット

抗がん剤は全身に効果を発揮するため、目で見ることができないごく小さながんに対しても効果を発揮します。

抗がん剤のデメリット

抗がん剤の作用は正常な細胞までおよぶため、吐き気、下痢、口内炎、脱毛といった副作用の症状が現れることがあります。

また、自覚症状がなくても血液検査や画像検査を行わないとわからない副作用もあるため、定期的に検査を行って経過を見ていく必要があります。使用する薬によって出現しやすい副作用はわかっているため、あらかじめ副作用が出にくいように予防薬を使用することもあります。

喉頭がんの抗がん剤治療で中心的な役割を果たすシスプラチンでは吐き気や嘔吐、食欲低下、腎機能障害や骨髄抑制(貧血や血小板減少、白血球減少)、難聴・耳鳴り、しびれといった症状が現れる可能性があります。

抗がん剤を使用する主な目的

  • 導入化学療法
    治療に先行して抗がん剤投与を行い、抗がん剤で効果が認められれば、抗がん剤併用の放射線療法を選択できます。
  • 放射線治療の補助
  • 延命目的
    進行がんや再発の場合に、がんの進行を遅らせる目的で行います。

喉頭がんでよく使用される抗がん剤

プラチナ製剤(シスプラチン・カルボプラチン)

二本鎖のDNAを結びつけることでがん細胞の複製を阻害する

代謝拮抗薬(フルオロウラシル)

DNAやRNAと似た形をしていることから細胞内に取り込まれてがん細胞のDNA合成を阻害する

微小管作用薬(ドセタキセル・パクリタキセル)

細胞分裂に関係している微小管に働きかけて、がん細胞の分裂を妨げる

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤

その他に、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を使用する場合があります。

分子標的薬

がんが大きくなるために必要な血管新生や細胞増殖にかかわる因子を阻害することで効果を発揮する薬です。喉頭がんで主として使用される分子標的薬は、2012年に頭頚部がんに対して承認されたセツキシマブ(商品名:アービタックス)です。セツキシマブでは多くの人でニキビや爪の周囲の炎症、乾燥といった皮膚の副作用がみられます。

免疫チェックポイント阻害薬

がんを攻撃することができるTリンパ球の力を強める薬です。現在喉頭がんに使用されている主な免疫チェックポイント阻害剤はニボルバブです。

Tリンパ球はがん細胞の表面になるがん抗原というマークを見つけてがん細胞にくっついて、がん細胞を攻撃します。しかし、免疫システムの暴走を防ぐために、Tリンパ球の表面にはTリンパ球の働きを止めるスイッチ(PD-1)が存在しています。がん細胞にはこのスイッチを押すことができるPD-L1、PD-L2を作ることができるのです。このPD-L1、PD-L2がPD-1と結合するとTリンパ球は働きを止めてしまうため、がん細胞を攻撃することができなくなってしまいます。ニボルバブは別名「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体」であり、Tリンパ球のPD-1に先にくっついてスイッチを押せないようにブロックすることで、Tリンパ球の働きを継続させることができる薬です。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫システムが暴走する働きをブロックする薬であり、副作用としては免疫機能の暴走による倦怠感、吐き気、下痢があります。また、稀ですが重篤な副作用としては間質性肺炎、脳炎、心筋炎、重症筋無力症、糖尿病、消化管に穴があくといったことがありえます。

放射線治療

放射線治療のメリットとデメリット

基本的に1日1回の放射線照射を30~35回行ないます。1回の治療は10分程度と短時間ですが、治療期間は1カ月半と長くなります。通院が可能であれば外来で治療ができます。
声門がんや声門上部がんでは放射線の効果が出やすいですが、声門下部がんでは放射線の効果は得られにくいことが分かっています。

放射線はがん細胞にたくさん当てれば当てるほど効果が高くなりますが、正常な細胞にも大きな副作用を引き起こします。これまでの放射線治療は1方向から放射線を当てていたため、副作用を出現させないためには放射線の量を控えざるを得ませんでした。しかし近年ではコンピューターを使って3次元で腫瘍の形を把握し、あらゆる方向から腫瘍に放射線を当てることで正常細胞への影響を最小限に抑えることができる、強度変調放射線治療(IMRT)という治療もができる施設も増えてきました。

放射線のメリット

治療そのものはじっと寝ているだけで行うことができるので、体力低下や肝機能障害・腎機能障害などがあっても行うことができます。

放射線のデメリット

放射線治療のデメリットとして、放射線をあてた部位が硬くなったり、飲み込みの反射が低下することで、誤嚥性肺炎を繰り返しやすく、長期の生存率に影響を与えているという報告もあります。
その他に照射部の皮膚の発赤や、声がれ、唾液量の減少、嚥下痛、口腔内乾燥、味覚障害、口内炎、咽頭違和感があります。

放射線治療の副作用は、治療中に出現する早期のものもあれば、放射線治療が終わってしばらくしてから出現する晩期(ばんき)副作用もあります。

  • ドライマウス(口の渇き)
  • のどや皮膚の線維化(リンパ浮腫)
  • 甲状腺機能低下

その他の治療法

臨床試験

標準的な治療として確立されてはいませんが、理論上喉頭がんに効果が期待できる治療を受けることができます。限られた病院で実施されています。

緩和ケア

一昔前、緩和ケアは治療法のないがん患者に対して行われるといったイメージでしたが、最近ではすべてのがん患者において肉体的・精神的サポートを行うために緩和ケアが重要と考えられています。そのため、「あなたには緩和ケアが必要です」と言われても、早とちりして「私はもう治療できないんだ」と思わないでください。治療が順調に進んでいても、がん患者さんの多くはがんと宣告されたときから様々な不安を持っています。そしてがんによる症状、治療による副作用、治療後の後遺症に悩む方もいます。そのような肉体的・精神的ケアを行うのが現代の緩和ケアです。
「がんと言われて不安だ」「抗がん剤の治療をしているから吐き気くらいは我慢しなければならない」「治療費がどのくらいか心配だ」といったがんにまつわる様々な不安・症状を取り除くのが緩和ケアです。

喉頭がんの再発や転移について

喉頭がんの再発

喉頭の治療部位に再発した場合、初回の治療が放射線治療であった場合は原則再発に対しては手術を行います。初回の治療で放射線療法を行っていない場合は、放射線治療も選択肢に入れて治療方法を選択します。

喉頭がんの転移

喉頭がんのうち、声門がんは転移しにくいがんですが、声門上部がんと声門下部がんはリンパ節に転移しやすく、遠隔転移では肺への転移が最も多くみられます。

https://www.doi-jibika.net/%E5%96%89%E9%A0%AD%E3%81%8C%E3%82%93.html#anchor07
http://www.ise.jrc.or.jp/cancer/ca06-13.html
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ent/AboutUs/Topics/larynx_laser.html
https://www.ogaki-mh.jp/gankyoten/cancer/koutou.html
https://ganjoho.jp/public/cancer/larynx/treatment.html

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医