喉頭がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて      

喉頭はのどと気管をつなぐ臓器で、がんの発生数としては頻度は少ないですが、タバコやアルコールによって発症しやすくなる病気です。喉頭がんは検診や人間ドックで見つけることは難しい病気であり、病気の発見のためには自ら病院を受診することが必要です。

ここでは喉頭がんがどんな病気なのか、喉頭がんになりやすいのはどんな人なのか、そして喉頭がんの予防について紹介します。

目次

喉頭がんとは

喉頭とは

のどは空気と食べ物が通る場所です。胸では空気の通り道である気管が前方を、その後ろ(背中側)には食べ物の通り道である食道が通っていますが、のどの高さでの食べ物が通る部分を咽頭(いんとう)、そこから分岐して空気の通り道となる部分を喉頭と呼びます。

喉頭の上には喉頭蓋があり、普段は上に(口の方に)上がっていますが、飲食物を飲みこむ時だけ下向きに変わって気管に蓋をし、誤って気管に食べ物が入らないようにする役目があります。

さらに喉頭には声を出すための声帯があります。声帯は発声の時に適当や強さで閉じて、息によって振動しながら音を出します。

喉頭がんの種類

喉頭がんは病気の発生した位置によって分類をするのが一般的で、声帯の位置にできる声門がん、その上(口側)にできる声門上部がん、声帯の下にできる声門下部がんの3つに分類します。
喉頭がんの発生が最も多いのは声門がんで、次いで声門上部がんが多く、声門下部がんは非常にまれな疾患です。

細胞の種類としては、喉頭がんの99%が扁平上皮がんです。

喉頭がんの頻度

2017年にがんと診断された人の中で、喉頭がんは男性の第15位(10万人あたり7.9人)、女性の第21位(10万人あたり0.6人)、全体では第18位(10万人あたり4.1人)です。

また2018年がんで死亡した人の中で喉頭がんは男性の第17位(10万人あたり1.3人)、女性の第21位(10万人あたり0.1人)であり、全体では17位(10万人あたり0.7人)です。

喉頭がんの主な原因とリスクファクター

タバコ

タバコの害としては肺がんが有名ですが、実はタバコの影響が最も強いがんは喉頭がんです。

タバコとがんの関係を調べた調査では、タバコを吸っていない人と比べてタバコを吸っている人の方が死亡率が最も高かったのは男性の喉頭がんで、非喫煙者と比較して32.5倍でした。肺がんが4.45倍であることと比較すると、喉頭がんによる死亡にはタバコの強い影響があると考えられます。

さらに、喉頭がんと診断された人のその後の喫煙の有無について調査したところ、喉頭がんと診断されてから禁煙した人は、診断後も禁煙しなかった人と比較して10年後の生存率が高かったという報告もあり、喉頭がんと診断されてからの禁煙は再発予防に重要であると報告されています。

アルコール

飲酒と喉頭がんの関連を調査した報告では、アルコールを摂取しない人と比較して、アルコールを摂取する人は喉頭がんになる危険性が2.65倍であったという報告があります。さらに喉頭がんの発生は、アルコールの摂取量が多ければ多いほど増えています。

特に喉頭がんの中でも声門上部がんはアルコールとの関連が高いと報告されています。これは解剖学的に声門上部は飲酒したときに直接アルコールに触れる部位であるからと考えられています。

アルコールは喉頭がんに限らず、さまざまながんの発生に関係しており、その原因としてアルコールを代謝したときに発生するアセトアルデヒドが原因であると考えられています。アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酢酸に変換されますが、日本人の44%はALDH2遺伝子の欠損があり、アセトアルデヒドが残りやすい体質であることから、外国人と比較してアルコールの影響によりがんを発生しやすい人種と考えられます。

石綿

石綿はアスベストともいい、保温断熱の目的で建物の壁に使用されていました。石綿関連疾患について述べているヘルシンキクライテリアでは、2014年に喉頭がんは石綿に関係していると認定されています。

この石綿の細かな粉塵を吸い込むと肺がんや悪性中皮腫の原因になることが明らかとなり、現在日本では石綿を含む新たな製品の製造は原則禁止となっています。しかし今でも存在する多くの建物の中には石綿がまだ残っているため、今後も石綿を吸引する可能性が残っていること、また石綿関連疾患である悪性中皮腫は吸い込んでから平均35年経過して発症するという報告もあり、石綿を吸い込んだことがある場合、長い時間が経っていても発症する可能性があるので注意が必要です。

喉頭がんになりやすい人の特徴

喉頭がんは30歳を過ぎから徐々に発症者が増え、ピークは80歳代となっています。男女比では圧倒的に男性に多く、60才代での発症数を比較すると男性の発症率は女性の13倍以上となっています。しかし、タバコを吸わない人だけで比較すると喉頭がんの発生に男女差は認めないという報告があり、喉頭がんが男性に多い理由は性差ではなく、男性に喫煙者やアルコールを飲む人が多いことが影響していると考えられています。

オーラルセックスと喉頭がんの関連性

オーラルセックスとは口もしくは舌を使って相手の性器を刺激する行為です。オーラルセックスによっておきる感染症は性感染症とも言われ、淋菌感染症、クラミジア感染症、ヘルペス感染症、梅毒などがあります。

ヒトパピローマウイルスは通常性行為で感染するウイルスで、男性の陰茎がんや女性の子宮頸がん、膣がんなどの原因になりますが、オーラルセックスでのどに感染した場合には中咽頭がんの原因になると考えられています。
しかし、これまで喉頭がんとヒトパピローマウイルスの関連性を明らかにした報告はありません。(2021年9月時点)

予防と早期発見のコツ

喉頭がんの予防

禁煙

喉頭がんの原因と判明しているタバコをやめることは、喉頭がんになる危険性を低下させます。

禁酒

喉頭がんと関連が指摘されているアルコールを控えることは、喉頭がんの予防になります。喉頭がん発症の危険性を避けるための具体的な量としては1日のアルコール量は男性の場合20g、女性で10gまでとされています。

アルコール10gの目安

  • 日本酒 0.5合
  • ビール ロング缶や中瓶の半分(250ml)
  • チューハイ(7%) 350ml缶の半分
  • ワイン グラス1杯(100ml)
  • 焼酎(25%) 50ml 

非でんぷん野菜(いも類以外の野菜)・果物

栄養と喉頭がんの発生率を調べた調査では、いも類以外の野菜や果物をよく摂取する人では喉頭がんの発生が少なかったという報告があります。

早期発見のためには

通常の健康診断や人間ドックでは喉頭がんを発見するための検査は含まれていません。そのため、喉頭がんの早期発見には自分が喉頭がんになる危険性が高いかどうかを認識すること(喫煙や大量のアルコール摂取、アスベスト吸引など)、そして喉頭がんが疑われたときにはただちに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

江戸川病院 | BNCTプラザ
ガストロペディア | 咽頭・喉頭の解剖用語 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)
がん情報サービス | 全国がん登録
耳鼻咽喉科疾患 | 喉頭がんについて
国立がん研究センター | 日本におけるがんの原因
国立がん研究センター | 喫煙と頭頚部がんリスク
アルコールと癌 | アメリカ臨床癌学会(ASCO)の声明
厚生労働省 | アスベスト(石綿)に関するQ&A
電話相談から見た石綿関連肺ガンの報告
国立がん研究センター | がん情報サービス
参照日:2021年9月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医