喉頭がんと診断を受けたら、どの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?
喉頭がんは比較的患者数の少ない疾患であり、どの病院でも治療ができるわけではありません。一般的には「頭頸部外科」や「耳鼻咽喉科」などが対応しています。また、放射線治療を行う場合には「放射線科」が治療を担当することもあります。
喉頭がんは治療後に発声能力や嚥下能力が低下することもあり、理想的にはがんを完全に取り除きつつ、できる限りこれらの能力を残すことが求められます。ただし、その見極めは非常に難しく、そういった意味でも治療経験豊富な医師に診てもらうのが理想です。また、病院によっては設備的に治療の方法が限られる場合もあり、その場合はそのままその病院で治療を受けるのか、転院するのか考えなければなりません。
どの病院が喉頭がんの治療を行っているのかはホームページや問い合わせなどでも確認できますが、経験数を推測するデータとしては厚生労働省が発表している、病院ごとの手術件数があります。手術数の多い病院は喉頭がんの患者を多く診ている可能性が高いため、ここでは喉頭がんに関連した手術数をDPCデータを基にランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。
目次
喉頭がんの手術が適応となる症例
喉頭がんの治療方法は、がんの発生部位(声門、声門上部、声門下部)、ステージ、喉頭(発声機能)温存の希望を踏まえて検討されます。
喉頭がんの主となる治療方法は手術と放射線です。
喉頭がんの手術は大きく分けてレーザー、喉頭部分切除術、喉頭全摘術があります。頚部リンパ節転移がある場合は頚部郭清術を追加します。
レーザー治療
全身麻酔で口から器具を挿入し、のどの内側からレーザーで病変を切除します。
喉頭部分切除術
声帯を残す水平部分切除術と、声帯の一部だけを切除する垂直部分切除術があります。
喉頭全摘出術
喉頭を周囲の軟骨(甲状軟骨・輪状軟骨)や筋肉とともに、場合によっては甲状腺も一緒に切除します。のどの前面に気管の出口(気管孔)を作り、口は食道だけにつながるように再建します。
通常手術はステージ0からステージ4Bまでが対象になります。
喉頭がん手術数トップ10
厚生労働省はDPCデータをもとに、各病院で行われている手術件数を公表しています。
DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。
頭頸部悪性腫瘍手術のデータ
喉頭がんは多くの病院が「頭頸部外科」や「耳鼻咽喉科」で治療を担当します(放射線治療は「放射線科」が担当します)。
平成29年度に公表されたデータでは、喉頭がん単独の手術件数ではなく「頭頸部悪性腫瘍」として、口腔がんや咽頭がんの手術も含めた合計手術件数となっていますので注意が必要です。
頭頸部悪性腫瘍手術症例の多い病院:数字は年間症例数
- 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(358例)
- 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(275例)
- 公益財団法人 がん研究会 有明病院(273例)
- 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(252例)
- 愛知県がんセンター中央病院(242例)
- 静岡県立静岡がんセンター(235例)
- 東京医科歯科大学医学部附属病院(167例)
- 国立大学法人京都大学医学部附属病院(160例)
- 東京医科大学病院(159例)
- 埼玉県立がんセンター(155例)
ここに記載した病院はすべて、ホームページに喉頭がんの手術症例や放射線治療の設備、IMRT実施についての記載がされています。
手術数以外にも注目したいポイント
どのような治療方法を行なうことができるか
病院の設備の違いにより、治療の選択肢が限られる場合があります。例えば放射線設備のない病院では放射線治療を選択することはできません。もちろんその場合、放射線が最適な治療と判断されれば放射線設備のある病院に紹介してもらうこともできますが、できれば診断から治療まで同じ病院で診てもらう方が手間も少なく安心です。
通院や手術となると通いやすさやも重要ですが、喉頭がんは患者数も少なく、ほかのがんと比較して治療に対応できる病院は多くはありません。喉頭がんの治療病院を選ぶときには「放射線治療が可能か」「IMRT(強度変調放射線治療)が可能かどうか」「発声や嚥下のリハビリは対応しているか」といった点も確認しておくとよいでしょう。
がん診療連携拠点病院
がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制の整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。
喉頭がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。
治療開始までの期間
一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。
最初の受診から治療開始までの期間の目安は4-6週間です。
DPC Web辞書 | 03001x 頭頸部悪性腫瘍 2019年10月改定DPC
厚生労働省 | 平成29年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について
千葉県がんセンター | 手術等の待ち期間について
国立がん研究センター中央病院 | 治療・検査待ち期間一覧
参照日:2021年9月