子宮頸がんのステージ別生存率と平均余命

子宮頸がんの患者さんは徐々に増えています。実際に、1997年には7000人まで減った罹患者数が、最近では年間10000人が子宮頸がんと診断されています。

がん検診を受けて「子宮頸がんの疑いあり」となってしまった時には、治療してきちんと治るのか?ということが気になるのではないでしょうか。子宮頸がんでは治療成績はどのくらいなのか。実は子宮頸がんは進行していなければ、治療成績は良く、生存率は高いのです。

がん検診で「子宮頸がんの疑いあり」や「子宮頸がん」と診断された時には疑問や不安が出てくる事と思います。ここではそれらを解決するための情報として、子宮頸がんの生存率についてデータや最近の研究の結果を元に紹介します。合わせて、末期における体や心のつらさに対応する緩和ケアやストレスケアの重要性についても説明します。

目次

子宮頸がんの種類と進行度について

子宮頸がんの種類

子宮頸がんには、がんになる前の正常な細胞の種類から2タイプに分類されます。1つ目は「扁平上皮がん」というタイプで、全体の7割程度を占めています。もう1つは「腺がん」で、全体の3割程度ですが、近年では割合が増えてきています。

子宮頸がんの進行度合

扁平上皮がんの前がん病変は、異形成と呼ばれる状態で、腺癌の前がん病変は、上皮内がんと呼ばれています。

子宮頸部の扁平上皮がんの前がん病変である異形成は、その程度によって軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類に分類されています。ここから更に進行すると、微少浸潤扁平上皮がん、浸潤がんへと段階的に進行します。

一方で、腺がんでは、上皮内腺がん、微小浸潤腺がん、浸潤腺がんという段階を経てがんの病変が進展すると考えられていますが、その過程は未だ十分には明らかになっていません。

子宮頸がんの病期分類

子宮頸がんでは、大きく分けて次のように病期(ステージ)分類がなされています。

Ⅰ期
「がんが子宮に止まっている」
Ⅱ期
「がんが膣または子宮周囲組織に広がるが、進展は高度でない」
Ⅲ期
「がんが膣または子宮周囲組織に広がるが、進展が高度」
Ⅳ期
「がんが膀胱、直腸に進展するか、遠隔転移がある」

このようにステージなどを用いてがんのリスク評価を行っているなぜでしょうか。それは、がんの今の状況や今後どうなるのかを知るための目安になるからです。例えば、治療はどのくらい効果があるのか、どんな副作用が予測されるのか、手術を受けるべきかどうか、治療法の選択肢が複数あるときにはどの治療法がより良いのかなど、知りたいことがたくさんあります。正しくリスク評価ができていれば、これまでの統計情報の蓄積から、ある程度、治療の効果や今後の経過を予測することが出来ます。

子宮頸がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは何か。

がんの治療成績に対する指標として、5年相対生存率という指標がよく用いられます。この指標は、日本人全体をおしなべて、5年後に生きている人を100%としたときに、がんと診断された人が5年後に何%が生存しているかを表す数字です。つまり、5年相対生存率が100%であれば、がんによる死亡はないという事を意味しています(ただし、相対生存率が100%であっても他の原因による死亡してしまう可能性はあります)。そして、低くなればなるほど、治療にも関わらず生命を救うことが難しいがんであるということを示しています。

子宮頸がんの5年生存率はどのくらいあるか。

子宮頸がんの5年相対生存率については、全国がんセンター協議会による生存率共同調査が行われており、ステージ別の結果が公表されています。2008年~2010年の全ての患者さんについて調べた結果では、ステージⅠで93.0%、ステージⅡで79.2%、ステージⅢで64.2%、ステージⅣで29.2%となっています。特にステージⅣの方では急激に生存率が落ちています。

子宮頸がんでは、患者さんのうち56.6%の方が手術を受けています。手術を受けた患者さんだけで相対生存率を見てみると、93.8%、83.4%、72.0%、23.9%となっています。ステージⅢまでであれば、手術した方の方が高い結果になっています。一方で、ステージⅣでは、手術した方は全体と比べてやや相対生存率が低い結果になりました。

ステージ4の平均余命とは

子宮頸がんステージIVの平均余命

多くの統計情報では、治療成績として5年相対生存率が公表されていますが、平均余命については、数値で紹介されていません。しかし、公表されている生存分析のグラフ(どの位の時期にがんによる死亡に至っているのかを図示したグラフ)から、生存期間の中央値を読み取ることが出来ます。

九州大学が公表しているグラフから、子宮頸がんのステージIVの患者さんについて、生存期間の中央値を読み取ると約20~25ヶ月です。この数値はステージIVの患者さんが100人いたとすると、そのうちの半数にあたる50人は25ヶ月までに亡くなってしまうということを示しています。

罹患数と死亡数の推移

罹患者数の推移

子宮頸がんに罹ってしまう方の推移はどのようになっているのでしょうか。国立がん研究センターが全国推計値として統計情報を公開しています。この統計によると1970年代・1980年代は8000人~10000人で推移していましたが、1997年ころには減少し、7000人台にまで減少しました。しかし、最近になって再度増加傾向になり、2009年以降は10000人を超えています。

世界的には子宮頸がんワクチンの接種率が高くなっているため、既に減少傾向にあるか、今後の減少が見込まれています。しかし、日本では子宮頸がんワクチンの接種率が1%台であり、このままの状態が続けば、将来も子宮頸がん罹患者数の減少には至らないと見込まれています。

死亡者数の推移

死亡者数についても国立がん研究センターが統計情報を公開しています。1994年以前は、死亡者数が毎年2000人を超える事はありませんでしたが、徐々に増加しており、2017年では2795人の方が亡くなっています。

子宮頸がんの末期症状とケアに関して(末期状態での症状や対策方法など)

子宮頸がんの末期症状

子宮頸がんが進行すると、不正性器出血(月経中でないときや性交時の出血)や、おりものの変化(色、におい、量)が見られたりするようになります。さらに進行すると、がんが膣などにも浸潤しますので、激しい下腹部痛や腰痛などの症状が現れます。また、膀胱や直腸への転移があると尿や便に血が混じったりすることもあります。遠隔の臓器へ転移すると、その臓器特有の症状も現れます。

緩和ケアについて

子宮頸がんはステージⅣであっても、5年相対生存率は20~30%です。しかし、遠隔臓器にも転移があるなど、重篤な状況では、予後は良いとは言えません。そのような状況では、がんを完全に取り除くことが難しくなります。そのため、体や心のつらさ緩和するための治療(緩和ケア)に比重を移していきます。

これまでは、がんの経過が進むまでは「がん本体」に対する治療を行い、治療終了後に体や心のつらさに対する緩和ケアを行うという考え方でした。しかし、子宮頸がんの初期であっても体や心のつらさはあります。そのため、最近の考え方では、緩和ケアは、がんの早い時期にも生活を守り、自分らしい暮らしを保つために必要なこととして捉えられています。つまり、緩和ケアは末期にだけ行う治療というわけではなく、がんの早期から生活の質を守るための治療・対策として行われています。

こうした緩和ケアは、担当医・看護師・麻酔科医・薬剤師・ソーシャルワーカーなどの緩和ケアチームが協力して、個々人の状況を踏まえて治療やアドバイスを行います。適切な緩和ケアの実施のためには、患者さん本人から痛みやつらい事柄を伝えることが必要になります。つらいことは、我慢しないで、自分の言葉で伝えることが重要です。

ストレスマネジメントについて

ストレスは子宮頸がん患者の死亡率を高めることが研究結果として報告されました。スウェーデンで行なわれた研究ですが、ストレスを多く感じていた患者さんは、そうでない患者さんよりも133倍の死亡リスクがあったということです。がんの治療には、ストレスを感じる出来事も多くあり、長い期間を要します。
そのような治療生活の中で、できるだけストレスをためない生活を送るためにも、ストレスマネジメントは重要と考えられます。

国立がん研究センター がん情報サービス | 子宮頸がん
国立がん研究センター がん情報サービス | 子宮頸がん 治療
がん研有明病院 | 子宮がん
東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科 | 子宮頸部異形成について
全がん協生存率 | 全がん協加盟施設の生存率協同調査
Psychologic Distress Is Associated with Cancer-Specific Mortality among Patients with Cervical Cancer | Cancer Research | American Association for Cancer Research
国立がん研究センター がん統計
国立がん研究センター がん情報サービス
健康長寿ネット | 子宮がん末期
九州大学病院 がんセンター | 子宮がん
参照日:2020年2月

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医/臨床遺伝専門医

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

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