咽頭がん
咽頭がんは10万人に1~2人の発症数で、がんの中ではまれな病気です。男女比では圧倒的に男性に多く認められますが、これは性差によるものよりも、男性に喫煙者が多い、アルコールを飲む人が多いといったほかの原因の影響を強く受けていると考えられています。
咽頭は鼻の奥から食道までの管状の臓器です。空気や食べ物の通り道であり、呼吸や嚥下に関係しています。この部位にできるのが咽頭がんです。
咽頭がんはタバコやアルコールを摂取する人に発生しやすいことが分かっています。早期発見のための検診や人間ドックはほとんどありません。
そのためにのどに違和感を感じたら自主的に病院を受診することが重要です。治療には手術や抗がん剤、放射線治療などがあり、がんの部位やひろがり具合、のどの機能をどのように残すかといったことを検討して治療方針を決めます。
咽頭がんはほかのがんと比較して症例数が少ないため、咽頭がんになったらどのような検査があるのか、治療後はどのような生活になるのか、想像が難しいかもしれません。
ここではどのような人が咽頭がんになりやすいのか、どうすれば咽頭がんを早期発見できるのか、そして咽頭がんと診断された人に対しては、咽頭がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、それぞれのページで細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
咽頭とは
咽頭は鼻の奥から食道までの管状の臓器です。
咽頭は口を大きく開けたときに見えるのどの部分である中咽頭と、それより上の上咽頭、下の下咽頭の3つに分類されます。咽頭は空気や食べ物の通り道です。
咽頭がんの主な原因と特徴について
咽頭がんは10万人に1~2人の発症数で、がんの中ではまれな病気です。男女比では圧倒的に男性に多く認められますが、これは性差によるものよりも、男性に喫煙者が多い、アルコールを飲む人が多いといったほかの原因の影響を強く受けていると考えられています。
咽頭がんの原因とされているものにはタバコやアルコール、ヒトパピローマウイルスやEBウイルス、Plummer-Vinson症候群などがあります。
咽頭がんとはどのような病気か、そして咽頭がんになりやすい人の特徴や予防の詳細については「咽頭がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。
咽頭がんの初期症状と診断方法
咽頭がんの多くは初期の段階ではあまり特徴的な症状はなく、のどの痛みや違和感、扁桃腺腫大や声がれなどがあります。たとえ症状があっても風邪に似た症状であることから、咽頭がんを疑って病院を受診することは多くありません。そのため咽頭がんは見つかったときにはかなり進行していることも多い病気です。
通常の市町村検診や人間ドックでは咽頭がんを発見するための検査は行われないことが多いので、咽頭がんの検査を受けたい場合は自ら病院を受診しなければなりません。
咽頭がんかどうかを調べる検査としては、のどの奥を見るための鏡や細いカメラを用いて実際にのどの奥を観察します。もし、がんの可能性がある変化を認めた場合には細胞の一部を採取して顕微鏡でがん細胞の有無を確認します。
咽頭がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「咽頭がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。
咽頭がんのステージ別生存率
咽頭がんは上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんの3つに分類されて、治療が検討されます。最も多いのは下咽頭がんです。咽頭がんのステージ(進行度)は0から4までの5段階に大きく分けられ、さらにステージ4は上咽頭がんではA、Bの2段階、中咽頭がんと下咽頭がんはA、B、Cの3段階に分かれています。
がんに対する治療の効果を示す5年生存率はがん全体と同じ程度の数値となっています。
咽頭がんの分類、ステージはどのように決められるのか、罹患者数の推移や5年生存率、咽頭がん治療で一緒に行われることがある気管孔や胃瘻造設などについては「咽頭がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。
治療と副作用
咽頭がんの治療には、手術、抗がん剤、放射線治療などいくつかの選択肢があります。ガイドラインでは病気の部位やステージ(進行度)によって標準的な治療の手順が決まっていますが、最初に行った治療の効果によって、他の治療を追加したり、同時に2つの治療を行うこともあります。
放射線治療は咽頭がんで多い扁平上皮がんに対して効果が高く、手術よりものどの機能を残せる場合もあるため比較的多く行われています。昔は正常な細胞に当たった放射線の影響で副作用も多く起こりましたが、近年ではできるだけ正常な細胞への悪影響を減らすことができる強度変調放射線治療(IMRT)という治療ができる施設も増えてきました。
化学療法では従来使われていたいくつかの抗がん剤に加えて、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬も使用されるようになってきています。
手術では従来外側からのどを切って病変を摘出する外切開手術が行われていましたが、最近では早期の病変に対しては口を介して内側から病変を切除する経口的切除術も行なわれるようになっています。
咽頭がんは治療後3年間でとくに再発しやすいので、この期間は病院の指示通り、こまめに画像検査を行う必要があります。再発や転移がみつかったら、抗がん剤や放射線などで追加治療を行います。
咽頭がんの治療とその副作用の詳細、咽頭がんの再発や転移については「咽頭がん治療と副作用について」をご覧ください。
全国の病院ランキングトップ10
咽頭がんはほかのがんと比較して患者数の少ない疾患であり、どの病院でも治療が可能というわけではありません。多くの病院では「耳鼻咽喉科」や「頭頸部外科」が治療を担当します。(放射線治療は放射線科が担当します。)
どの病院で咽頭がんの治療ができるのかを調べる方法の1つに厚生労働省が公表しているDPCデータがあります。DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度であり、ほとんどの大病院の手術数や症例数を見ることが可能です。咽頭がんの手術データは「耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍」として、他の部位のがんの手術も含めた件数で発表されています。
自分の生活エリアでどの病院を受診したらよいのか分からない場合には、各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」や各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」で相談する方法もあります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、セカンドオピニオンに対応しています。
「手術数で分かる咽頭がんの名医がいる病院ランキングトップ10」では実際のランキングや手術の数を載せています。そのほかに病院選びの際のポイントも載せましたので、参考にしてみてください。