白血病とは

白血病はかつて不治の病として認識されており、病気の診断を受けることイコール「死」を意味する時代もあったのも事実です。

しかし、近年の技術革新は眼を見張るものがあり、そうした固定概念は変化しつつあります。白血病の原因は以前よりも明らかになり、治療の選択肢も格段に広がり治療成績の向上につながっています。その結果、白血病を克服し、社会復帰を果たす方も少なくはありません。

その一方、最大限の治療効果を達成するためにも、正しい知識を持った上で病気に向き合うことが必要不可欠です。これまでの記事を通して、白血病の原因、症状、検査、治療について説明してきましたが、ここでは今一度白血病にまつわる事項を全体的にまとめます。本記事を、白血病克服に向けての羅針盤として有効活用していただけたら幸いです。

目次

血液とは

白血病は、血液のがんです。普段の生活で血液がどのように働いているかを意識する状況は幅広いですが、例えば怪我に伴う出血を例に挙げることが出来ます。血液が正常に機能することで、うまく血液が固まり大事に至ることはありません。

また、風邪をはじめとした感染症にかかることなく日々を過ごす、階段を登るなどの日常動作を問題なくこなすなども、血液がうまく働いているからこそ達成されることです。普段の生活を送る上であまり意識することはないかもしれませんが、血液はみなさんが健康的にいるためにもなくてはならないものです。

しかし、白血病にかかることでこれら当たり前のことが出来なくなってしまい、身体に様々な不自由がもたらされます。

白血病の原因と特徴について

白血病は、特別な原因が明らかではないことが少なくありません。すなわち、あれをしたから白血病になった、この食べ物を食べたから病気の発症に至った、など明確な因果関係を同定できる状況は、必ずしも多くはありません。

その一方で、特定の状況においては、白血病の発症リスクが高まることも知られています。よく知られた状況としては、放射線暴露を例に挙げることが出来ます。それ以外にも、HTLV-Ⅰと呼ばれるウイルスも原因になりえますが、日本では特定の地域への指向性があることも特徴です。これらの因子は、白血病発症との因果関係が比較的強いと言えます。

また、もっと漠然的に白血病の原因となりうる要素が存在することも、近年では指摘されています。例えば身近なものであれば喫煙習慣、まれな状況では家族内での遺伝的要因などです。

白血病の原因となりうる要因を知ることは、病気の予防につなげるためにも大切な観点であると言えます。より詳細には、こちらの記事を参考にして下さい。

白血病の初期症状と診断方法

白血病にかかると、疲れやすくなったり、熱が長引いたり、血が止まりにくくなったりします。白血病のタイプによっては、こうした症状を自覚することなく、健康診断やその他の理由で受けた血液検査などを通して、初めて白血病が疑われることもあります。

血液の病気である白血病では、血液検査を行うことが主体となります。血液の工場とも言える「骨髄」を調べることも、病気を正確に把握するためには必要不可欠です。

白血病は、全身に影響が及ぶ病気です。そのため、血液にフォーカスをした検査以外の検査を行うことも求められます。すなわち、レントゲン写真やCT検査、MRIなどの画像検査が必要とされることもありますし、髄液検査が行われることもあります。

白血病の初発症状や必要とされる検査を理解することが、病気を早期に発見したり、病状を正確に把握したりするためにもとても重要なことです。より詳細には、こちらの記事を参考にして下さい。

白血病の生存率

白血病のような重い病気に罹った場合、病気が治るのかどうかは誰しも気に掛かる部分であると想像します。冒頭でも述べたように、不治の病ではなくなりつつある白血病ですが、白血病には、治りやすいタイプと治りにくいタイプのものがあるのも事実です。すなわち、「白血病」と一言に表現しても、病気の経過、生存率には大きな差があります。

そのため、ご自身の白血病がどのような経過を辿るのかを予測するためにも、ご自身の白血病がどのようなものであるかを知ることが重要です。どういった観点に着目した上で生存率を見極めるかについて、より詳しくはこちらの記事を参考にして下さい。

治療と副作用

白血病の治療計画を立案するためには、白血病の治りやすさを正確に把握することがとても重要です。病気の特性を理解した上で、治りやすいタイプの白血病に対しては、強度を抑えた治療が行われます。その一方、治療経過が困難であることが予測される場合には、血幹細胞移植までを視野に入れた強度を高めた治療が考慮されます。

病気の治りやすさに応じて治療強度を変更するのは、白血病の根治を視野に入れつつも、副作用を最大限軽減することも大切だからです。病気を治すことに躍起になるあまり、長期的な合併症を残してしまことは、可能な限り避けなければいけません。使用される治療内容によっては、不妊症になったり心臓の障害を残したりする可能性もあります。

ご自身の白血病治療強度がなぜ現状のものであるのか、どういった視点に注意して副作用を避けるべきなのかなどを知ることは、うまく病気と付き合うためにも必須であると言えます。ご自身の治療を知るためにも、こちらの記事を参考にして下さい。

造血幹細胞移植件数の多い病院

白血病を根治させるためにも、造血幹細胞移植が必要とされる場面もあります。造血幹細胞移植の治療強度は強く、安全に治療を受けるためにも、患者さんが治療に耐えることができるのかを正確に判断することが大切です。また、どなたがドナーになるか、移植後の経過がうまくいっているかなど、事前準備から治療後のケアまで、長期間に渡っての慎重な対応が必要とされる治療方法です。

造血幹細胞移植の実施においては高度の医療知識が要求されるため、治療に長けた医療機関にて診療を受けることが大切です。より安全に、より高い効果を期待するためにも、こちらの記事を参考にしてみて下さい。

以上、5回に渡って白血病に関してのまとめを行いました。本連載を足がかりとした上で担当の先生と相談を重ね、病気をより深く理解していただけたら幸いです。

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医・臨床遺伝専門医・日本癌学会 会員/評議員・アメリカ癌治療学会 会員・ヨーロッパ癌治療学会 会員

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

プロフィール詳細