手術数で分かる腎臓がんの名医がいる病院ランキングトップ10

腎臓がんと診断を受けたら、どの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?

腎臓がんの治療の基本は手術です。手術には開腹手術、腹腔鏡手術、手術支援ロボット、経皮的凍結療法、ラジオ波焼灼術などの選択肢があります。また、腎臓の切除範囲も腎臓を丸ごと取り出す根治的腎摘除術と出来る限り腎臓の機能を残す腎部分切除術があります。どのような方法でどの範囲を切除するのかは、その医者や病院の装備、技術、経験値によって異なる場合もあり、このような場合には、腎臓がんの治療経験が豊富な病院で治療を受けるほうが安心かもしれません。

腎臓がんの手術数の多い病院は腎臓がん治療の経験が多い病院と考えられるので、ここでは腎臓がんの手術数をDPCデータからランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。

目次

腎臓がんの手術が適応となる症例

腎臓がんの基本的な治療は手術です。転移などがあり、全部を取り切れない場合でも、がんの量を減らすことは予後の改善につながるので、可能な範囲で切除を試みます。
手術の方法は病気の大きさや場所、本人の年齢や体力などを考慮して選択されます。

切除する範囲の違い

  • 根治的腎摘除術:がんのある腎臓を丸ごと摘出します。
  • 腎部分切除術:がんのある部分をくり抜く様に切除します。

術式

  • 開腹手術:お腹を切り開いて行う手術です。
  • 腹腔鏡手術:お腹にいくつか小さな穴をあけて、内視鏡などの器具を通して行なう手術です。
  • 手術支援ロボットによる手術:腹腔鏡手術はお腹の傷が小さいことがメリットですが、お腹の中を直接見ることができない、直接臓器に触れられないため開腹手術と比較して難しい手術です。その難しさを減らすために開発されたのが手術支援ロボットです。この手術支援ロボットを用いることにより、視野を拡大したり、器具の手ブレなどを防ぐことができます。
  • 経皮的局所療法:お腹を切らずに皮膚から病変まで針を刺し、ガスを注入して病変を凍らせたり(経皮的凍結療法)、熱を発して焼灼することによってがんを死滅させる治療(ラジオ波焼灼術)です。

入院期間は開腹手術の場合7~14日、腹腔鏡手術の場合5~10日、経皮局所療法では2~5日です。

腎臓がん手術数トップ10

(DPCデータ又は信頼できるデータでのトップ10病院を紹介)
厚生労働省が集計し公表している平成29年度のDPCデータをもとに、腎臓がんに関連した手術件数の多い病院トップ10です。
DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。
ここでは腎臓がんについて報告された手術の症例数でランキングを作成しました。

腎腫瘍手術のデータ

DPCでデータでは腎腫瘍の手術には開腹手術、腹腔鏡手術、手術支援ロボット、経皮的局所療法の全てが合計されて報告されています。(それぞれの病院のホームページに掲載されている装備などから、対応可能な手術方法を併記しましたが、腎臓がんに対して行われているかどうかは実際の病院にご確認ください。)

腎腫瘍手術症例の多い病院:数字は年間症例数

<腹:腹腔鏡、ロ:手術支援ロボット、凍:凍結療法、ラ:ラジオ波焼灼術>

  1. 東京慈恵会医科大学附属柏病院(108例)<腹、ロ、凍>
  2. 岡山大学病院(104例) <腹、ロ、凍、ラ>
  3. 九州大学病院(101例) <腹、ロ、凍>
  4. 国立大学法人三重大学医学部附属病院(92例) <腹、ロ、凍、ラ>
  5. 東京医科歯科大学医学部附属病院(90例) <腹、ロ>
  6. 市立札幌病院(90例) <腹、ロ>
  7. 東京慈恵会医科大学附属病院(89例) <腹、ロ、凍>
  8. 公益財団法人 がん研究会 有明病院(81例) <腹、ロ>
  9. 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(79例) <腹、ロ、凍>
  10. 埼玉医科大学国際医療センター(74例) <腹>

手術数以外にも注目したいポイント

がん診療連携拠点病院

がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制を整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。
腎臓がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。

病院によって勧められる治療が異なることがある

腎臓を丸ごと取り出す根治的腎摘除術はそれほど難しい手術ではありませんが、腎部分摘除術の場合は、手術後の腎機能低下が少なくて済むというメリットがある反面、病変を取り残さないように切除範囲を決める必要があることや、血流の多い腎臓を切るため術後出血などの合併症が起こりやすく、手術する医師の技術や経験により差が出る手術になります。また、手術支援ロボットや凍結療法、ラジオ波焼灼療療法はそのための装備が病院にないと行うことができません。
一般的に腎臓がんの治療は手術をしたらそれで終わり、ということではなく、手術後に定期的に検査を受けるなど、長く付き合っていく病院になることが多いので、通院が負担にならないような病院であることも考慮しましょう。

治療開始までの期間

一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。

厚生労働省 | 平成28年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について
参照日:2020年7月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医