白血病の初期症状と検査方法、検査に掛かる費用とは

白血病を題材としたドラマや映画などは多く、悲劇のヒロインが病気を疑われるきっかけとなった場面をご覧になった方も数多くいらっしゃると思われます。そうした影響から、「何の前触れもなく、鼻血が出る」といった症状を、白血病の初発症状として想像される方も少なくないではないでしょうか。

確かに、白血病を発症することで鼻血を認めることはありますが、その症状のみを取り上げて白血病であることを疑うことは必ずしも容易ではありません。実際には、「何となく、以前に比べて疲れやすい」、「風邪のような症状が、少し長引いている」など、よほど注意をしていない限り見過ごされてしまうような症状が、白血病の初発症状になることも少なくありません。

白血病は全身をめぐる血液に関しての病気であり、このことを反映して身体の各所に様々な症状が見られる可能性があります。この記事では、白血病において初期症状となりうる多彩な症状を詳しく記載することに加えて、病気が疑われた時に行われうる検査、及びそれに掛かる費用も紹介します。病気であることの身体からのシグナルを見落とすことなく、早期に医療機関を受診し、適切な診断から治療につなげるための参考にして下さい。

目次

白血病の主な症状とは

血液中には、白血球、赤血球、血小板といった細胞が存在しています。これらの細胞はそれぞれ、病原体から身体を守る、酸素を全身に供給する、出血を止める、といった役割を担っています。白血病にかかるとこれらの細胞がうまく働かなくなり、様々な症状が見られるようになります。具体的には、以下のような症状を例に挙げることができます。

感冒症状

白血病にかかると、健常時であればさほど問題とならない病原体に対しても、身体は適切に対処することが出来なくなります。その結果、感染症を発症しやすくなり、発熱やだるさなど、風邪のような症状が見られることがあります。通常の風邪であれば数日で自然に症状が緩和されることが期待出来ますが、白血病では、発熱や倦怠感が1週間以上に渡って持続することもあります。

貧血

白血病では、貧血の症状が見られることもあります。すなわち、顔色が悪い、動悸を感じる、少しの距離を歩いただけでも疲れを覚える、などの症状が見られることがあります。
なお、数週間から数カ月に渡って病状が進行することもあるため、貧血を認識しにくい状況がある点には留意が必要です。具体的には、「歳のせいで疲れやすくなった」と、貧血の存在が見過ごされることもあります。また、お子さんや若い方は予備体力が大きく、ある程度の貧血があっても日常生活を問題なく送ることが出来てしまい(時に、スポーツを問題なくこなせてしまうこともあります)、病気の発見までに時間がかかることもあります。

出血傾向

白血病を発症すると、身体の様々な部位に出血を来しやすくなります。ドラマや映画で描出されることが多い「鼻血」といった症状も、この枠組みに当てはまります。鼻血が出ることそのものは、白血病でなくてもほとんどの方が経験されたことがあると思われる症状ですが、鼻血の回数が多い、鼻血が止まりにくい、などの症状は、より病的であることを示唆する内容として重要です。

その他にも、歯を磨いている時に出血をしやすい、ぶつけた覚えがないにも関わらず、アザがよく見られる、などの状況も、白血病の初発症状となりえます。

その他

白血病では、骨の中に存在する「骨髄」と呼ばれる部位で、異常な細胞が多く増殖します。このことを反映して、骨が痛い、関節が痛い、などの症状として認識されることがあります。また、胃の辺りの不快感、お腹の腫れや痛み、首のリンパ節の腫れ、などが見られることもあります。その他、体重が減った、食欲が低下した、寝汗をよくかく、歯肉が腫れる、皮膚に発疹が出来るなどの症状も、白血病で見られることがあります。

以上、様々な症状が白血病の初発症状となりえますが、注意すべき点として、「明らかな自覚症状がないこともある」ということです。特に慢性白血病の場合においては、本人は無症状であるにも関わらず、健康診断やその他の理由で医療機関を受診した際、病気の存在が初めて疑われることもあります。

白血病自己診断チェック

白血病の疑いをお持ちの方は、以下の質問事項をチェックしてみて下さい。

  • 発熱やだるさなどの風邪のような症状が、1週間以上に渡って続いている
  • 顔色が悪い
  • 以前に比べて疲れやすくなった
  • 少し歩くだけで、動悸がする
  • 鼻血が止まりにくい
  • ぶつけた覚えがないのに、アザがよく出来る
  • 首にゴリゴリとしたしこりを触れる
  • 骨の痛みが続く
  • ダイエットをしていないにも関わらず、体重が減ってきている

以上のチェック項目のみで白血病を診断することは出来ませんが、該当項目がある際には、医療機関を受診されることをお勧めします。

白血病が疑われるときに行われる検査内容

白血病が疑われる状況では、以下のような検査が行われます。

血液検査

白血病が疑われる際には、第一に血液検査が考慮されます。血液検査では、白血球、赤血球、血小板といった細胞の状況を評価します。これによって、白血病細胞が血液中に混じっていないか、貧血はないか、血小板の数が異常に少なくなっていないか、などを評価します。白血病が疑われる時はもちろん、職業上白血病発症のリスクが高い方において(医療関係者やトルエンなどを扱う方など)、病気の早期発見を目的としたスクリーニング検査としての位置付け的に、血液検査が行われることもあります。
なお第一部で記載したように、白血病の病型として、成人T細胞白血病・リンパ腫と呼ばれるものがあります。このタイプの白血病は、HTLV-Ⅰと呼ばれるウイルス感染と関連して生じることが知られています。ウイルス感染の状況を把握することは、白血病発症リスクを推定する上で、とても有益な情報となります。

画像検査

白血病では、胸腺や脾臓、肝臓、リンパ節など、身体の各部位が腫れることもあります。こうした状況を評価することを目的として、胸部単純レントゲン写真、超音波検査、CT検査などの画像検査が行われることもあります。
また、白血病に伴って、脳の一部に腫瘍の塊が形成されることもあります。この状況を評価するために、脳のCT検査やMRI検査が行われることもあります。

骨髄検査

白血病は、骨髄中において白血病細胞が増殖する疾患です。骨髄に収まりきらない白血病細胞が、全身を駆け巡る血液中に漏れ出てくることもあります。この場合には、腕からの採取される血液を通して、異常な細胞を評価することが出来ます。
しかし、白血病であることを確実に診断するために、病気の主座である骨髄を評価する検査が必要とされます。すなわち、骨髄検査は、確定診断的な位置付けをされた検査であると言えます。骨髄検査では、腰骨周囲に痛み止めを注射した上で、骨の中に存在する骨髄が採取され、白血病細胞の有無が評価されます。

染色体検査・遺伝子検査

白血病は、染色体や遺伝子レベルでの異常を元にして発症します。病気に特徴的な変化が存在していないかどうかを評価するために、染色体検査や遺伝子検査が行われます。
これらの検査では、顕微鏡で白血病細胞の見た目を観察するだけでは得られない情報を得ることが出来ます。そのため、白血病のタイプを同定したり、適切な治療方針を決定したりするためにも、必要不可欠な検査です。

髄液検査

白血病細胞は、時に脳の周りに存在する髄液の中に入り込むこともあります。この状況を評価するために、腰椎と呼ばれる背骨を構成する骨の間に針を刺し、髄液を採取することも検討されます。

白血病の疑いから確定診断まで

白血病は、自覚症状に加えて詳細な身体診察を通して疑われます。身体診察では、リンパ節の腫れ具合、肝臓や脾臓の大きさ、歯肉や皮膚の変化などを評価することがなされます。
これらを通して白血病が疑われる際には、先に記載した検査の中でも、特に血液検査が第一に検討されます。血液検査は外来や検診でも行うことが出来る簡便な検査であり、結果も同日から数日以内という短い時間の間に得ることが出来ます。
血液検査にて白血病が疑われた際には、一般的には入院にて検査を行うことが勧められます。骨髄検査や髄液検査、各種画像検査、染色体検査・遺伝子検査を行いながら白血病の確定診断が行われます。
ただし、末梢血を用いた血液検査で白血病の疑いが濃厚な状況、病勢が強く可及的速やかな治療介入が要求される状況においては、検査と並行して治療介入も行われます。

検査に掛かる平均費用

白血病が疑われる症状を有して医療機関を受診した際、第一検査として行われることが多い血液検査に掛かる費用は、診察料を含めて数千円程度であることが一般的です。また、健康診断や職業従事に関連して行われる検査の場合であれば、自己負担なしで受けることも可能です。
白血病に対してより詳細な検査が必要とされる際には、基本的には入院にて行われることが多いです。この際には、包括医療として費用が加算されます。
白血病に対してのスクリーニング的な検査である血液検査は、高額な医療費が必要とされるものではありません。そのため、白血病であることが心配である際には、早めに医療機関を受診して相談されることが重要であると言えます。

JALSG | わかりやすい白血病の話|白血病
国立がん研究センター がん情報サービス | 急性骨髄性白血病
国立がん研究センター がん情報サービス | 慢性骨髄性白血病
国立がん研究センター がん情報サービス | 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
国立がん研究センター がん情報サービス | 成人T細胞白血病リンパ腫
Leukemia – Symptoms and causes – Mayo Clinic
Leukemia | Leukemia and Lymphoma Society
国立がん研究センター がん情報サービス | 白血病〈小児〉 検査
参照日:2019年12月

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医・臨床遺伝専門医・日本癌学会 会員/評議員・アメリカ癌治療学会 会員・ヨーロッパ癌治療学会 会員

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

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