多くの方が感じているように、がんは早期発見することで根治が期待できます。。子宮体がんもその例外ではありません。
では、子宮体がんでは早期発見のために、どのような症状に注意すれば良いのでしょうか。子宮体がんでは「不正性器出血」が最も多い自覚症状になっています。そのため、早期発見のためには不正性器出血があるような場合には、早めに専門医を受診するなどして、検査を受けることが必要です。そして、もし、検査で「子宮体がんの可能性がある」と言われてしまったら、急いで精密検査を受けて下さい。
そこで、この記事では、子宮体がんの症状、子宮体がん検診の項目、精密検査の方法などについて紹介していきます。是非、子宮体がんを早期発見するための参考情報にして下さい。
目次
子宮体がんの主な初期症状
子宮体がんで最初に気づく症状として最も多いものは、不正性器出血です。そもそも性器出血には、月経・分娩・産褥期などに見られる生理的な性器出血と、それ以外の時期にみられる不正性器出血があります。年齢とともに不正性器出血の頻度は高くなります。不正性器出血があれば、「必ず子宮体がんがある」というわけでは無く、他の原因によって出血することもあります。どのような原因であれ、不正性器出血は放置すると良くありませんので、早めに婦人科を受診しましょう。
他の症状には、排尿しにくくなる、排尿時の痛みがある、性交時の痛みを感じる、下腹部や腰に痛みがある、などの症状があります。これらの場合にも子宮体がんや他の原因が隠れていることがありますので、早めに婦人科を受診し、対処することが必要です。
子宮体がん自己診断チェック
上に書きましたように子宮体がんでは、多くの場合、初期の自覚症状としては不正性器出血があります。自己診断チェックをする際には不正性器出血に注意することが重要です。また、子宮体がんのリスクが高くなるような要因(リスクファクター)もあります。ここではそういった事柄をリストアップしています。このチェックリストにある症状やリスクファクターは、子宮体がんだけに特徴的なものではありませんが、他の子宮や膣の病気でも起りうるものですので、心当たりが有る場合には、婦人科の医師に相談するようにして下さい。
- 不正性器出血がある。
- おりものが多くなった。
- 排尿時に痛みを感じるようになった。
- 性交時に痛みを感じるようになった。
- 初経が早かった、または閉経が遅い。
- 乳がん治療でタモキシフェン使用がある。
検診と検査項目
子宮体がんには、子宮頸がんとは異なって、各市区町村が実施している「子宮体がん検診」はありません。これは、厚生労働省が定めている「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」では、子宮体がんについての検診が定められていないからです。つまり、「子宮体がん検診を行なうことには、広く様々な方に有用である・メリットがある」という科学的な証拠が現時点では十分にはないということです。ただ、一部の市区町村や検診機関では子宮体部の細胞診による検診を行っているところもありますので、お住まいの市町村やお近くの検診機関の情報を調べてみて下さい。
検診などで行なわれる検査
次に、子宮体がん検診で行なわれる検査について紹介します。子宮体がんは、病状が進行していない早期の段階で出血することが多く、不正性器出血での発見が約90%といわれています。このため症状が出たらすぐに検査を行うことによって早期発見が可能となると考えられます。
細胞診
子宮体がんに対する検診で行なわれる検査には細胞診という検査があります。細胞診は、次に紹介する組織診と比較すると検査費用面でも安く、また検査時の痛みも少なくてすむため、広く行なわれている方法です。検査の時には、子宮の内部に細いチューブやブラシのような器具を直接挿入して、細胞を採取して、その細胞を顕微鏡で観察します。細胞を採取する際には、軽い痛みを感じる場合があります。また、検査後に出血などの症状が出ることもあります。
超音波検査
出典:女性検診|城クリニック子宮の中まで細胞診用の検査器具を挿入することが難しい場合には、超音波検査で子宮内膜の厚さを測って判断することも行われます。超音波検査はプローベと呼ばれる超音波を発する器具を体の表面にあてて行なう検査です。超音波は、体内の臓器で反射してプローベに帰って来ますので、その反射波を捉えて体内の状態を確認します。子宮体がんに対する検査では、多くの場合プローベを腟に入れて、そこから超音波を発することで子宮体部の中の様子を調べます。子宮体がんになると子宮内膜の厚みが増してくることが多いので、その厚みを捉えることができる超音波検査は有用な検査のひとつです。ただし、初期のがんでは子宮内膜があまり厚くなっていないので検出できない可能性があります。
子宮体がんの疑いから確定診断まで
確定診断のための検査
組織診
細胞診で子宮体がんの疑いがある場合には、次に組織診を行ないます。組織診では、検査用の器具を使って、子宮体がんがあるのではないかと疑われる子宮内膜の組織を採取し、顕微鏡で観察します。組織を採取する場合は、細胞診とは異なり痛みを伴うので通常は麻酔をかけて行います。この検査でがんが有るかどうか、また、有るとしたら組織型と悪性度を調べ、確定診断をします。
がんの広がりを特定するための検査
その他、がんの広がり具合を調べたりするために以下の様な検査も併用します。画像検査では、がんの広がり具合や他の臓器・部位への転移がないかどうかを確認します。
内診
婦人科での検査では、がんの検査に限らず多くの場合で内診が行なわれます。内診では腟に指を入れ、もう片方の手を下腹部にあてて、両手で挟み込みようにしながら、子宮の位置や大きさ・形・硬さを確認していきます。
子宮鏡検査
がんの位置や形状を直接確認するため、内視鏡を腟から子宮体部に入れて見るための検査です。病理診断(細胞診や組織診)と組み合わせて行う場合が多く、直径約3mmの細いカメラを挿入して内部を観察します。
CT検査/MRI検査
CTはX線を使って体を輪切りにした画像を作成し、体内の臓器の状態を調べます。MRIでは磁気を使うことによって、体の断面図を作成します。これらの検査では、子宮体がんが他の臓器(肺や肝臓など)に転移していないか、また、近くのリンパ節への転移が無いか等の情報を集めることができます。
検診に掛かる平均費用
特に自覚症状などが無い場合に、子宮体がんの検診を受ける場合には、全額自費負担になります。この場合の負担額は、細胞診で5000円~8000円、超音波検査で5000円前後になります。この金額は検診機関によって異なりますので、ご注意ください。
一方で、不正性器出血があるなど自覚症状がある場合には、保険診療での受診となりますので、年齢などによりますが、通常は3割負担です。保険診療では主治医の先生が症状や背景情報に応じて必要と考えられる検査を行ないますので、一概に金額が確定しませんが、4000円~5000円(3割負担の場合)前後であることが多いようです。
費用負担はかかってしまいますが、不正性器出血などの自覚症状がある場合は、早めに専門医を受診するようにして下さい。また、子宮頸がん検診と同時に子宮体がん検診を受検することもできる検診機関もありますので、子宮頸がん検診の機会を活用頂くのも良いと思います。
公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会 | 子宮体がん治療ガイドライン2018年版
国立がん研究センター がん情報サービス | 子宮体がん(子宮内膜がん)
Evidence-Based Clinical Decision Support System| UpToDate | Wolters Kluwer
公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会 | 子宮体がん
日本プライマリ・ケア連合学会誌 2013 | 性器出血
徳洲会グループ | 産婦人科の病気:子宮体がん
社会と健康研究センター | 検診研究部 科学的根拠に基づくがん検診推進のページ
みやびレディースクリニック(神戸市中央区の婦人科)
女性クリニック We!Toyama | 検査・治療にかかる費用
新潟県立がんセンター新潟病院 | がん・疾患情報サービス
参照日:2020年5月