膀胱がんの症状である血尿や膀胱炎症状は他の病気でも見られる症状であり、まさかがんとは思わず見過ごされがちです。
しかし、膀胱がんは病変が筋層に及んでいるかどうかで、手術の際に膀胱を残せるかどうかが異なり、膀胱を切除する必要が出てきた場合には手術後の生活も大きく変わります。そのためには、膀胱がんの初期症状にはどのようなものがあるのか、そして検査ではどのような異常が出やすいかを知っておくことは重要です。
目次
膀胱がんの主な初期症状
- 血尿
- 膀胱がんでよく見られる症状は血尿です。血尿は赤色だけではなく、出血量が少なければピンク色、出血から時間が経つと茶色や黒っぽい尿になることもあります。尿の中に血の塊が見えることもあります。出血は必ず継続するとは限らず、血が出たり止まったりを繰り返すこともあります。
- 膀胱炎症状
- 膀胱に刺激が加わると、膀胱は尿がたまったと勘違いして尿意をもよおします。本来であれば尿が排出されれば尿意は消失しますが、膀胱がんや膀胱炎などで膀胱への刺激が続くと、残尿感や頻尿といった症状がみられます。
膀胱がんの自己診断チェック
自己診断のみで膀胱がんかどうかを判断することはできませんが、下の項目に多く当てはまる場合は膀胱がんを疑って病院受診することをお勧めします。
- 男性である
- 50歳以上である
- 血尿がある
- 尿潜血が陽性と言われた
- 頻尿である
- 残尿感がある
- 膀胱炎を繰り返している
- タバコを吸う
- カフェインをよく摂る
- ずっと尿道カテーテルを留置している
検診と検査項目
市町村の検診
市町村の検診で膀胱がんに関連した検査は尿検査です。しかし、市町村検診では尿一般検査しか行われず、がん細胞を直接見ることができる尿細胞診(後述)は行われていません。尿一般検査で尿潜血が陽性の場合、膀胱がんを疑って精密検査を受けることになります。
人間ドックや任意検診における膀胱がん検査
尿細胞診は尿に含まれる細胞成分を検査します。身体的負担のない検査ですが、特異度は高いものの感度が低いことが難点です。特異度が高い、とは本当は病気のない人がその検査で誤って陽性(病気である)と判断される割合が少ない、ということです。感度が低い、とは本当は病気がある人に陰性(病気はない)と判断する割合が高い、ということになります。つまり尿細胞診で陽性と言われた場合は、ほぼ膀胱がんがある、と判断されますが、陰性と言われた中にも一定の割合で膀胱がんの人がいる、ということになります。
検査のコースによっては尿を提出しても尿細胞診が含まれていないことがありますので、尿検査で異常なし、と言われても尿細胞診まで行われているかどうか確認が必要です。
腫瘍マーカー
膀胱がんの腫瘍マーカーは尿で測定します。
- 尿中NMP22
- 尿中サイトケラチン8・サイトケラチン18
- 尿中BTA
- 尿中BFP
主にNMP22 とサイトケラチン8・サイトケラチン18は膀胱がんが疑われる場合の診断補助に、BTAは膀胱がんと診断された人の経過観察や再発の早期発見のために使用されます。
これらの腫瘍マーカーは膀胱がんの時以外に、別の病気で血尿が出ているときや尿道カテーテルを留置した場合、膀胱炎や尿路結石でも陽性になることがあります。
腹部超音波検査(エコー検査)
空腹状態でお腹にゼリーを塗り、機械をあてて膀胱の形を見ます。放射線を使用せず行うことができる点が利点ですが、お腹にガスがたまったりしていると膀胱の一部が見えないことがあります。
そのほかに検査を行う人の技能により検査の正確度が異なる、検査の記録が一部しかできないため客観性に劣る、といった点がデメリットとしてあります。検診目的で行われる腹部超音波検査は肝臓や胆のう、膵臓や腎臓などを優先して行う検査となります。膀胱はある程度尿がたまって膨らんでいる状態でないと見ることができません。もし、膀胱を中心に見てほしいときには、事前にその旨を申し出て相談しておきましょう。
腹部単純CT
放射線を用いて膀胱の形を見る検査です。膀胱がんそのものの診断よりは、リンパ節や他臓器への転移の有無を調べるために行います。
腹部単純MRI
磁気を使用した検査です。CTでははっきりしないがんの浸潤度(膀胱壁のどの深さまでがんが進んでいるか)もMRIではわかることがあります。特にがんが膀胱周囲の脂肪組織まで浸潤しているかどうかについてはCTよりもMRI検査のほうが有用です。
膀胱がんの疑いから確定診断まで
ファーストステップ(膀胱がんの可能性があるかどうかを見る検査)
1.尿一般検査
尿潜血陽性の場合、膀胱がんの可能性があります。
2.尿細胞診
疑陽性、もしくは陽性の場合膀胱がんを疑います。
1~5の5段階評価の場合、3が疑陽性、4,5が陽性に該当します。
3.腫瘍マーカー
4.膀胱超音波(エコー検査)
5.腹部単純CT
6.腹部単純MRI
超音波やCT、MRIは画像検査ですが、病変によってはこれらの検査で確定診断できる場合と、できない場合があります。がんの種類や大きさなどにより、ある画像検査では見つけられなくてもほかの画像検査では発見されることもあるので、いくつかの画像検査を組み合わせるといった工夫が必要なこともあります。
セカンドステップ(膀胱がんかどうか確定診断する検査)
膀胱鏡
膀胱がんの診断として最も確実な検査です。尿道から専用の内視鏡(カメラ)を挿入し、膀胱の内側の壁を直接観察します。
おおまかな検査の流れとしては排尿後に、仰向けに足を開いて寝た格好で検査をします。尿の出口からカメラを挿入し、膀胱にたどり着いたら滅菌した水を注入して膀胱を膨らませて観察をします。女性は尿道が短いので5分程度、男性でも20分程度の検査時間です。検査が終了したら帰宅できます。
サードステップ(膀胱がんのひろがりをみる検査)
- 腹部造影CT
- 腹部造影MRI
これら2つの検査は、がんを目立たせて画像検査で見やすくするために造影剤を用いる検査です。
路造影
膀胱がんが発見された場合には、同じ細胞でできている腎盂や尿管にも同時にがんができていることがあります。これらの部位のがんの有無を調べる目的で行われるのが尿路造影です。尿路造影にはレントゲンを使って行う検査(静脈性腎盂造影〔DIP/IVP〕)とCTを使って行う検査(CT urography)があります。
静脈性腎盂造影はレントゲンで尿がついて見える造影剤を血管に注射し、腎盂や尿管に造影剤がたまった頃に撮影します。できあがった検査結果は1枚の写真です。CT urographyも造影剤を血管に注射するところは一緒ですが、CTで撮影するため、結果は3Dになり、いろいろな角度から腎盂や尿管を見ることができます。
検診にかかる平均費用
健康診断・人間ドックで受ける検査
- 尿細胞診 2750円
- 腫瘍マーカー NMP22 1630~3150円
- 腹部超音波検査 6000円
保険適応で受ける検査
- 腹部超音波検査(エコー検査)
- 3割負担 4000円、1割負担 1500円
- 単純CT検査(1部位)
- 3割負担 4000円、1割負担 1500円
- 造影CT検査(1部位)
- 3割負担 9000円、1割負担 3000円
- 単純MRI検査(1部位)
- 3割負担 9000円、1割負担 3000円
- 造影MRI検査(1部位)
- 3割負担 16000円、1割負担 5000円
- 膀胱鏡
- 3割負担 2850円 1割負担 950円
シー・アール・シー|膀胱がんの腫瘍マーカーには何がありますか?
国立がん研究センター がん情報サービス | 膀胱がん 検査
参照日:2020年9月