胆道がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

胆道がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

職場や地域の健康診断や人間ドックで、大腸がん検診や子宮がん検診の検査を追加するかどうか尋ねられたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが、「胆道がん検診を追加しますか?」と聞かれた経験がある方はいらっしゃらないと思います。これは、胆道がんを発見するための専用の簡単な検査方法が無いためです。

また、胆道がんだとはっきりわかる症状が少ないので、胆道がんは、がんの中でも見つかりにくい種類のがんと言われています。

このように見つかりにくい胆道がんを、少しでも早く見つけるためにはどのようにすれば良いのでしょうか。ここでは、そのために役立つ情報や検査についてお伝えしたいと思います。

目次

胆道がんの主な初期症状

胆道がんの初期症状には、黄疸・腹痛・吐き気・体重減少などがあります。ただし、これらは胆道がん「だけ」の症状ではなく、他の病気でも出てくる症状です。また、特に胆道がんの初期には、ほとんど症状が無いこともありますので、このような理由から胆道がんを早期発見することはとても難しいのが現状です。そのため体の不調を放置しない心構えが重要になります。

黄疸とはどのような症状か。

初期症状として「黄疸」を紹介しました。しかし、黄疸という言葉に聞き覚えがない方も多いと思います。

黄疸は体の中に「ビリルビン」という黄色い色素がたまってしまう状態です。その中でも、胆道がんでは「閉塞性黄疸」という種類の黄疸が生じます。閉塞性黄疸では、白目や皮膚などが黄色くなります。他にも、だるさ・皮膚のかゆみ・尿の色が濃くなる・便の色が薄くなる、といった症状もあります。

ただし、このような黄疸の症状は胆道がん以外の多くの病気でも生じます。黄疸になったからといって、「胆道がんになった」というわけではありません。

胆道がんの自己診断チェック

胆道がんは、初期では自覚症状が少なく、簡単な検査も無いので、自己診断することは困難です。ですが、自覚症状や以前に受けた検査の結果からチェックできることがあります。これらの項目は確実なものではありませんが、体の異常をチェックする時の参考にして下さい。

1.白目が黄色くなっていないか?

2.皮膚が黄色くなっていないか?

3.便の色が薄い色(白~灰色)になっていないか?

4.尿の色が濃い色になっていないか?

5.ダイエットをしているわけではないのに、数ヶ月連続で体重が減っていないか?

6.お酒を飲んでいるわけではないのに、肝臓の検査値が高いと言われたことはないか?

検診と検査項目

最初に書きましたように「胆道がん検診」というがん検診はありません。代わりに一般的な健康診断や人間ドックでも検査されている項目の結果に注目します。

血液検査

胆道がんと関係がある血液検査には、肝胆道系酵素の検査とビリルビンの検査があります。

健康診断の血液検査では、ほとんどの場合で肝胆道系酵素を検査しています。肝胆道系酵素の検査には、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、ALPといった検査項目があります。これらの検査の結果が高い時には肝臓や胆道に異常がある可能性があります。ただし、胆道がんの初期には検査値が高くならないこともあります。

黄疸の原因であるビリルビンも血液検査で調べることが出来ます。健康診断では一般に測定することが少ないですが、人間ドックでは測定することが多いですし、自覚症状があるときには、医療機関で測定することもできます。

腫瘍マーカー

血液検査の中には「腫瘍マーカー」と呼ばれる検査があります。これは、がんの発生によって値が高くなる血液検査のことです。一部のがんでは、この腫瘍マーカーが早期発見に役立てているものもあります。

胆道がんにも腫瘍マーカーがあれば早期発見に役立つのですが、残念ながら胆道がんの早期発見に役立つ腫瘍マーカーはありません。一応、他のがんでも使われている腫瘍マーカー(CA19-9やCEA)が高くなることもありますが、その上昇の頻度は必ずしも高くはありません。

早期発見の難しさ

ここで紹介した検査は胆道がんだけで高くなったり、異常値になったりするわけではありません。そのため、血液検査の結果から体の不調について知ることは出来ても、胆道がんかどうかを確実にはっきりさせることは出来ません。早期発見には難しい面があります。

胆道がんの疑いから確定診断まで

自覚症状や検査結果から胆道がんや胆道の病気ではないかと疑うような場合、色々な検査を行います。まず、痛みや体への影響が少ない検査から行い、段々と、体への負担があるけれどより詳しく分かる検査の順で調べていきます。ここでは、3つのステップに分けて検査を紹介します。

ファーストステップ

腹部超音波検査

出典:胆道がん|国立研究開発法人国立がん研究センター

血液検査で肝胆道系酵素の異常があった場合は、侵襲の少ない検査として、最初に腹部超音波検査(腹部エコー)を行うことが多いです。文字通り、超音波を使って、お腹の中の状態を描画し、胆道に異常がないか確認します。

検査では、お腹にゼリーを塗り、超音波が出る機械(プローベ)をお腹に当てて調べていきます。痛みや不快感がほとんど無く、安全にできる検査です。この検査によって、胆道がんを疑うような結果であった場合、次の検査へ進んでいくことになります。

CT検査

出典:胆道がん|国立研究開発法人国立がん研究センター

CTは、色々な方向からX線を当てて、その「影」を元に、体を輪切りにしたような画像を作る方法です。普通に撮影する「単純CT」だけでなく、造影剤を注射しながら撮影する「造影CT」も行う必要があります。造影CTでは、胆道に異常な膨らみがないか調べるだけでなく、がんが発生し、血管が異常に多くなってしまった場所がないかも調べることが出来ます。

この検査を受けるときにはベッドに寝そべるだけです。ベッドが動いて、そのまま大きな輪っか(CTの機械の本体)をくぐるだけですので、検査を受けるときの負担はあまりありません。造影剤を使うときには、点滴のように血管に針を入れますので、この時に痛みがあります。

上部消化管内視鏡

いわゆる「胃カメラ」です。胆道がんの中でも乳頭部がんがあるかどうか調べるには、カメラで十二指腸の近くを確認する必要があります。カメラで直接どのような状態になっているのか見たり、病変があればその部分を取ったりして、がんが無いかを調べます。

カメラを口から飲み込む検査ですので、慣れていないと飲み込むときは苦しいです。

サードステップ

MRI/MRCP検査

出典:特集2 胆管がん 早期診断が難しく、治りにくい病気|全日本民主医療機関連合会

MRIは、強力な磁力を使って、体の中の断面図を描く検査です。その断面図から胆道がんの有無を調べ、がんが有った場合には、その広がり具合を調べることが出来ます。MRCP(MR胆管膵管撮影)は、MRIの装置を使って、胆道や膵管の状態を描き、詳しく調べる方法です。

これらの検査は、ベッドに寝そべったまま、ベッドが動いて狭い筒の中に入っていきます。そのため、閉所恐怖症の方にとっては苦痛な検査です。また、強力な磁石を使うので、体の中に機械や金属がある場合(心臓ペースメーカー・人工内耳など)は検査を受けることが出来ません。

胆膵内視鏡による検査

乳頭部よりも奥(肝臓に近い側)にある胆道を見ようとしても普通の胃カメラでは見ることが出来ません。そのため、特殊な方法を使ってカメラで観察したり、胆管を造影したりすることによって病変を観察する検査方法があります。

いくつかの方法がありますが、医師が他の検査結果から最適と考えられる方法を選んで行います。この方法には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)・経皮経肝胆道鏡(PTCS)や先端に超音波で検査する機器を用いた検査もあります。

これらの検査には、検査による偶発症(急性膵炎や胆管炎など)があることもあり、検査には入院が必要になります。検査を受ける際には偶発症についても医師からの説明がありますので、わからないことは良く確認してから検査を受けるようにして下さい。

検診にかかる平均費用

健康診断・人間ドックで受ける検査

職場の健康診断は、職場が費用を負担するため無料で受けることが出来ます。法律(労働安全衛生法)でも受けることが義務づけられていますので、ぜひ受けるようにしましょう。ただし、年齢が若い場合や職場の方針によっては、健康診断に血液検査が無い場合があります。血液検査があるかどうかは担当の方に確認して下さい。地域の健康診断も同様に安価で受けることができます。

また、人間ドックのメニューによっては腹部超音波検査があります。この価格は実施機関によって若干が異なりますが、5,000円~6,000円前後が多いです。

保険適応で受ける検査

健康診断や人間ドックでの異常や自覚症状がある時には、医療機関で検査が必要です。そのときの体の状態を元に主治医の先生が必要な検査を判断します。

このような場合、検査の費用は通常の医療機関での診療と同じ扱い(健康保険の適応)ですので、基本的に3割が自己負担となります。

検査は医療機関での診療の一環として行われるため、一概に平均金額を示すことは出来ません。おおよその金額は次のようになります。

腹部超音波検査:約1,590円

単純CT検査:約3,900円

造影CT検査:約6,900円

胃カメラ(観察のみ):約3,600円

ERCP(2日入院費用含む):約33,000円

Evidence-Based Clinical Decision Support System| UpToDate | Wolters Kluwer
Clinical manifestations and diagnosis of cholangiocarcinoma
Gallbladder cancer: Epidemiology, risk factors, clinical features, and diagnosis
東京大学医学部附属病院消化器内科 胆膵グループ | ERCP
岡山第一病院 | 診療のご案内
横須賀共済病院横須賀共済病院 | MRCP/MRI検査について
医療法人 山下病院 | 主な検査、入院等の費用
相澤病院 | 入院医療費概算一覧表
塩竈市立病院 | 料金表、オプション表(人間ドック)
参照日:2019年8月

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医・臨床遺伝専門医・日本癌学会 会員/評議員・アメリカ癌治療学会 会員・ヨーロッパ癌治療学会 会員

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

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