胆道がんのステージ別生存率と平均余命

胆道がんは、早期発見に有用な検診方法も現時点では無く、自覚症状から気づくことも難しいがんです。そのため、医療機関で検査した結果、「疑いあり」、となったとすると、すぐに治療方針を決定し、治療を開始することになります。次に気になる点は、治療によってどのくらい良くなるのかという治療成績ではないでしょうか。がんの治療成績を示す指標としてメジャーなものには、5年生存率と平均余命があります。

胆道がんでは、この治療成績はどのくらいなのでしょうか。胆道癌では、がんの進行度合い(ステージ)によって治療成績が大きく異なっています。ここでは、ステージ別の5年生存率や平均余命について、そして、最後に緩和ケアについても紹介します。

目次

胆道がんの種類と進行度について

胆道がんの種類

胆道がんは発生する部位によって分類されます。これは、胆管がん(肝内・肝外)・胆嚢がん・乳頭部がんに分かれています。なお、肝内胆管がんは、肝臓の中にある胆管にできたがんですが、がん治療についてのルールブック(正確には、「取扱い規約」と言います)では、肝内胆管がんは、肝臓がんの1つとして扱うことになっています。

胆道癌では、がんが発生する部位によって、手術のしやすさ・がんが浸潤する近くの臓器・転移のしやすさ等が異なっています。例えば、膵臓の近くの胆管から、がんが発生した場合には、膵臓に浸潤する確率が(他の部位で発生した場合よりも)高くなりますし、手術によって膵臓が傷ついてしまう可能性も高くなります。

胆道がんの進行度(ステージ)

がんの進行度は、「ステージ」という呼び方をします(日本語では、「病期」と言います)。ステージはローマ数字とアルファベット(AまたはB)を使って表します。がんの進行に伴って、ステージの数が大きくなり、同じ数字であれば、AよりもBの方が進行していることを意味します。胆道がんでは、その種類によって、それぞれステージの決め方が異なっています。

ここでは、各々の種類の胆道がんについて、ステージの決め方を示すことはしません。これは余りにも専門的過ぎるからです。代わりに、ステージを決める時の考え方を紹介します。がんのステージを決める時には、誤解を恐れずに大まかに言うと、次の3点について注目しています。

  1. がんが発生したところだけで止まっているのかどうか、近くの臓器(胆道がんでは、胃・腸・膵臓など)にまで届いているかどうか
  2. がんがリンパ節に届いているのかどうか
  3. がんが発生した所から遠くの臓器まで届いているかどうか。

このような観点で評価し、がんが狭い範囲に止まっていれば、ステージは小さく、広い範囲に広がっていればステージは大きくなります。

このようなステージを決めているのはなぜでしょうか。それは、がんの今の状況や今後どうなるのかを知るための目安になるからです。例えば、治療はどのくらい効果があるのか、どんな副作用が予測されるのか、手術を受けるべきかどうか、治療法の選択肢が複数あるときにはどの治療法がより良いのかなど、知りたいことがたくさんあります。がんの種類とステージがわかっていれば、これまでの統計情報の蓄積から、ある程度、予測することが出来ます。そのため、これを元にして妥当な判断をするために立てることができます。

胆道がんが遠くの臓器まで転移するようなステージまで進んでいれば、胆道がんの元々の症状だけでなく、転移した臓器に関連する症状もでることになります。例えば、胆管がんが肺へ転移していれば、呼吸機能低下などの症状も出てきてしまいます。

胆道がんのステージ別5年生存率

がんでは種類やステージごとに治療がどのくらい効果があるのか(治療成績)が調査されています。ここでは、その統計情報を元に紹介します。

5年生存率とは

がんの治療成績に対する指標として、5年相対生存率という指標があります。これは、日本人全体をおしなべて、5年後に生きている人を100%としたときに、がんと診断された人が5年後に何%が生存しているかを表しています。つまり、5年相対生存率が100%であれば、がんによる死亡はないという事を意味しています。そして、低くなればなるほど、治療にも関わらず生命を救うことが難しいがんであるということを示しています。

胆道がんの5年生存率はどのくらいあるか

胆管がんや胆道がんについての5年相対生存率については、全国がんセンター協議会による生存率共同調査が行われており、ステージ別の結果が公表されています。2008年~2010年の全ての患者さんについて調べた結果は、ステージIでは56.7%、ステージIIでは26.1%、ステージIIIでは12.8%、ステージIVでは2.4%となっています。このうち、手術を受けた患者さんだけで見てみると、ステージIでは64.8%、ステージIIでは36.1%、ステージIIIでは24.5%、ステージIVでは7.0%となっています。ステージIやIVでは近年ほぼ横ばいですが、ステージIIやIIIについてはやや上昇傾向にあります。

ステージIではかなり高い数字になっていますが、ステージIVでは一桁となっています。このように大きな違いがあるのは、胆道がんの特徴の一つです。また、手術した患者さんの方で5年相対生存率が良いという結果になっています。これは手術が可能ながんは、手術が不可能ながんと比べて、状態が良いことも影響しています。

ステージ4の平均余命とは

ステージIVの平均余命

多くの統計情報では、5年相対生存率が公表されていますが、平均余命については、数値で紹介されていません。しかし、公表されている生存分析のグラフ(どの位の時期にがんによる死亡に至っているのか図示したグラフ)から、生存期間の中央値を算出することが出来ます。九州大学が公表しているグラフから、胆管がんのステージIVの患者さんについて、生存期間の中央値を読み取ると約10ヶ月です。この数値はステージIVの患者さんが100人いたとすると、そううちの半数にあたる50人は10ヶ月までに亡くなってしまうということを示しています。

短い平均余命に対する取組み

ステージIVの患者さんにおける短い平均余命に対して、医学界も手をこまねいている訳ではなく、いくつもの研究が行われています。例えば、鹿児島大学では、早期診断法を構築するための研究が行われていますし、東京医科歯科大学でも治療薬の開発に向けた研究が行われています。これらの研究は、もちろん今日明日に成果が得られるわけではありませんが、治療法や検査法が日進月歩で進んでいることを知っておいて頂ければと思います

罹患数と死亡数の推移

罹患者数の推移

胆道がんに罹ってしまう方の推移はどのようになっているのでしょうか。国立がん研究センターが全国推計値として統計情報を公開しています。これによると、男女ともに同程度の罹患者数で、2010年から2014年まで、毎年10,000人~12,000人の罹患者がいました。年次の推移としては、ほぼ横ばいでした。

死亡者数の推移

死亡者についても国立がん研究センターが統計情報を公開しています。男性では2010年から2017年の間に、毎年8,000人~9,000人の胆道がんによる死亡があり、女性でもほぼ同数の死亡でした。罹患者数と同様に年次推移としては、ほぼ横ばいで推移しています。

胆道がんの末期症状とケアに関して

胆道がんの末期症状

胆道がんの症状は、黄疸によって白目や皮膚が黄色くなったり、発熱や腹痛が生じたりします。がんが進行してくると、これらに加えて再発・転移などによって生じる痛みや、メンタル面の悩み・抑うつなどがより強く生じてきます。また、抗がん剤治療などの副作用として、吐き気・食欲不振・口の渇き・口内炎なども発生してきます。

緩和ケアについて

これまでは、がんの経過が進むまでは「がん本体」に対する治療を行い、治療終了後に体や心のつらさに対する緩和ケアを行うという考え方でした。しかし、がんの初期であっても体や心のつらさはあります

そのため、新しい考え方では、体や心のつらさに対する治療(緩和ケア)は、がんの早い時期にも生活を守り、自分らしい暮らしを保つために必要なこととして捉えられています。つまり、緩和ケアは末期治療というわけではなく、がんの早期から生活の質を守るための治療・対策として行われています。

こうした緩和ケアは、担当医・看護師・麻酔科医・薬剤師・ソーシャルワーカーなどの緩和ケアチームが協力して、個々人の状況を踏まえて治療やアドバイスを行います。適切な緩和ケアの実施のためには、患者さん本人から痛みやつらい事柄を伝えることが必要になります。つらいことは、我慢しないで、自分の言葉で伝えましょう。

エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン 改訂第2版. 医学図書出版株式会社
臨床・病理 胆道癌取扱い規約. 第6版. 金原出版
国立がん研究センター がん統計
国立がん研究センター がん情報サービス
国立がん研究センター がん情報サービス | 年齢・全身状態別余命データ
【全国がんセンター協議会】 | 全がん協生存率調査
九州大学病院 がんセンター | 胆道がん
参照日:2019年8月

三橋利晴/sankyoh

産業医・疫学者

2004年、医学部を卒業・医師免許取得(医籍登録番号は43万台)。その後、直ぐに大学院に進学し、疫学・予防医学・産業保健を研究した。大学院卒業後は、産業保健の実務を行いながら、医学研究を行っている。

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