咽頭がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

咽頭がんの多くは初期の段階では無症状であり、また症状が出ても風邪に似た症状であることから、なかなか病院を受診しようと考えることは少なく、がんが見つかったときにはかなり進行していることも多い病気です。通常の市町村検診や人間ドックでは咽頭がんを発見するための検査は行われないことが多いので、咽頭がんの検査を受けたい場合は自ら病院を受診しなければなりません。

咽頭は鼻の奥やのどの内側なので、診断のためには鼻や口から鏡やカメラを使って観察します。がんと診断されると首のリンパ節に転移していないか、その他の臓器に転移がないかを調べる検査を行います。

ここではどのような時に咽頭がんを疑って受診すべきか、そして咽頭がんが疑われた場合どのような検査が行われるのかについて紹介します。
 

目次

咽頭がんの主な初期症状

咽頭がんの多くは初期の段階からはっきりとした症状が出ることは少なく、病状が進行して初めて自覚症状が出ることもよくあります。

部位別に現れやすい症状は以下の通りです。

上咽頭の主な初期症状

主に鼻で呼吸したときの空気の通り道です。アデノイドも上咽頭に含まれます。
現れやすい症状は、耳閉感、難聴、繰り返す中耳炎、鼻づまり、鼻出血、複視などがあります。

中咽頭の主な初期症状

口を大きく開けたときに奥に見える部分が中咽頭です。扁桃腺や舌根(舌の奥3分の1)を含みます。
現れやすい症状は、のどの違和感、のどの痛み、飲みこむ時の違和感、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくい、耳の痛み、血痰、扁桃腺腫大、声の変化などがあります。

下咽頭の主な初期症状

現れやすい症状は嗄声(声がれ)、のどの痛み、飲みこむ時の違和感、血痰などです。
         

咽頭がんの自己診断チェック

咽頭がんの症状はがんの発生した部位により症状の出やすさや、症状の出る時期が異なります。

喉の違和感や声がかすれるといった症状は風邪でも現れることがあります。咽頭がんの症状の多くは風邪と間違えやすいので、風邪症状が長く続く場合には咽頭がんの可能性を考えて病院を受診する必要があります。

以下に記載した多くの項目に当てはまる場合は、早めの病院受診をお勧めします。

  1. タバコを吸っている(もしくは吸っていた)
  2. お酒をよく飲む
  3. のどの異物感がある
  4. 食べ物を飲み込んだ時に違和感がある
  5. 嗄声や声がれがある
  6. 口や舌が動かしにくくなってきた
  7. 耳や鼻の違和感がある
  8. 首にしこりがある

検診と検査項目

咽頭がんを対象とした住民健診はすべての市区町村で行なわれているわけではありませんが、一部の地域では実施されています。(喉頭がんと咽頭がんの検診合わせて、平成29年市区町村実施率0.9%)

人間ドックでも、咽頭がんを対象にした検査はほとんど行なわれていません。但し、胃カメラの検査を行った場合、偶然に咽頭がんを見つけることはあります。

胃カメラは現在鼻から挿入する経鼻内視鏡と口から挿入する経口内視鏡があります。経鼻内視鏡では上咽頭から下咽頭までを通るので、この範囲のがんを見つけられる可能性があります。

経口内視鏡では上咽頭を通らないので、中咽頭と下咽頭のみ病変を見つけられる可能性があります。しかし本来胃カメラは食道や胃の検査ですので、咽頭がんがあっても必ず見つけられる、というものではありません。(胃カメラで異常を指摘されなくても、咽頭がんではないと言い切れません)

咽頭がんを疑う症状がある場合は、咽頭の専門である耳鼻咽喉科を受診したほうが確実です。耳鼻咽喉科では経鼻内視鏡より細いカメラを用いたり、上咽頭がんが疑われる時には後鼻鏡、下咽頭がんが疑われる場合には喉頭鏡などを用いて病気が疑われる範囲を観察します。

咽頭がんの疑いから確定診断まで

ファーストステップ

ファーストステップとは、咽頭がんの可能性があるかどうかを見る検査です。

後鼻鏡

斜めに鏡のついた鏡を口の奥に入れて、鼻とのどの間の上咽頭を見る検査です。

間接喉頭鏡

後鼻鏡は主に上咽頭を見る検査ですが、喉頭鏡は口から下にある下咽頭を見るための検査です。下咽頭や喉頭にあたる声帯などを見るために行う検査です。

咽頭ファイバースコープ

鼻からのどに直径3-4mmの比較的柔らかい(ファイバー)を挿入して、上咽頭から下咽頭を観察します。鏡を使った後鼻鏡や間接喉頭鏡よりも、より病変に近づいて病変を観察することができます。

頚部触診

医師が首を触って、のどの動きを確認したり、しこりがないかを診察します。首のリンパ節に転移している場合は大きくなったリンパ節を触れることができます。

セカンドステップ

セカンドステップとは、咽頭がんかどうか確定診断する検査です。

病理検査

咽頭がんが疑われる部位の細胞を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する検査です。咽頭ファイバースコープで観察した際に、鉗子と呼ばれる器具を用いて病変の一部をつまんで採取します。

サードステップ

セカンドステップとは、咽頭がんのひろがり具合を見る検査です。

咽頭がんと診断後、転移の可能性がある場合は、各種の画像検査を行って、病変のひろがりをチェックします。

腫瘍マーカー 

咽頭がんが疑われたときに血液検査で調べるのは、扁平上皮がんで増加しやすいSCCです。
咽頭がんであっても腫瘍マーカーは正常値ということもあるため、これらの数値が正常値であるからがんではない、ということではありません。また、咽頭がん以外のがんでも増加することがあります。

超音波検査(エコー検査)

観察部位にゼリーを塗り、機械をあてて中の状態を調べます。咽頭がんの場合には最初に転移しやすい頚部リンパ節への転移や病気のひろがり具合を判断するために首のエコー検査を行います。

腹部への転移が疑われる場合には空腹状態で腹部の観察も行います。
放射線を使用せず行うことができるのが利点ですが、検査を行う人の技能により検査の正確度が異なる、検査の記録が一部しかできないため客観性に劣る、といった点がデメリットとしてあります。

単純/造影CT検査

放射線を用いた検査です。頭部、頚部、胸部、腹部など転移の可能性がある部位を撮影します。血管や病変を見やすくするために血管から造影剤を注入する造影CTが行われることもあります。

単純/造影MRI

磁気を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、頚部、胸部、腹部などに対して行います。場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影MRIが行われることもあります。

超音波・CT・MRIは見やすい臓器が異なるので、同じ部位に複数の検査を行うこともあります。

PET検査

がん細胞が取り込みやすい物質に放射線物質をくっつけた検査薬を体内に注射して、その分布を調べる検査です。全身を一度に調べることができます。糖尿病で血糖値のコントロールが不安定な人はこの検査で正しい結果が出ないことがあります。

骨シンチグラフィ

放射性物質を注射し、骨への取り込み具合を撮影して、骨への転移の有無を調べます。

検査にかかる平均費用

保険適応で受ける検査費の目安

咽頭がんが疑われる所見があれば、その後の検査はすべて保険診療で受けることができます。

  • 咽頭ファイバースコープ 
    3割負担:1800円 1割負担:600円
  • 病理組織検査
    3割負担:3030円 1割負担:1010円
  • 腫瘍マーカー SCC 
    3割負担:321円 1割負担:107円
  • 頚部エコー検査
    3割負担:1050円 1割負担:350円
  • 腹部エコー検査
    3割負担:1600円 1割負担:530円
  • 単純CT検査(1部位)
    3割負担:4000円 1割負担:1500円
  • 造影CT検査(1部位)
    3割負担:9000円 1割負担:3000円
  • 単純MRI検査(1部位)
    3割負担:9000円 1割負担:3000円
  • 造影MRI検査(1部位)
    3割負担:16000円 1割負担:5000円
  • PET検査
    3割負担:30000円 1割負担:10000円
  • 骨シンチグラフィ
    3割負担:17000円 1割負担:6000円

厚生労働省|がん検診の種類について

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医