手術数で分かる肺がんの名医がいる病院ランキングトップ10

肺がんと診断を受けたら、どの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?

肺がんの治療方針はガイドラインで決まっているため、基本的にはどの病院であっても勧められる治療は同じです。ただし、肺に別の病気があったり、持病がある場合には、その治療方針は慎重に決める必要があります。また、肺がんの治療は2つ以上の治療を組み合わせることがあり、薬の内容など細かい点では病院ごとに差が出てくることもあります。
一般的に肺がんの患者をたくさん診ている病院はこれらの治療方針の決定や、実際の治療を多く行っていると考えられます。

ここでは厚生労働省が発表しているDPCデータをもとに、肺がんの手術を多く行っている病院や肺がん患者が多く集まっている病院をランキングにしました。病院選びの参考にしてください。

目次

肺がんの手術が適応となる症例

肺がんで手術が選択されるのは非小細胞がんのステージ1・2・3Aと、小細胞がんのステージ1・2Aです。ただし、年齢や体力、持病により手術ができない場合もあります。逆にこれ以上のステージであっても、条件を満たせば手術を行う場合もあります。

肺がんの手術には肺葉切除術、縮小手術、片肺全摘術があり、基本的に肺葉単位で切除範囲を決めます。手術の方式としては胸を切り開いて行う開胸手術と、肋骨の間などから手術器具を差し込んで行う胸腔鏡手術があります。

開胸手術と比較して胸腔鏡手術の特徴は傷が小さく術後の回復が早いことや、胸の筋肉を切る量が少ないことから、術後の呼吸機能があまり失われないということがあります。入院期間も短く、開胸手術では10日程度ですが、胸腔鏡手術の入院日数は1週間程度です。機器や手術技術の向上により開胸手術ではなく胸腔鏡手術となる肺がんの症例数は年々増加傾向にあります。症例数の多い病院では手術症例の8割以上が胸腔鏡手術の病院もあります。

肺がん手術数トップ10

手術件数の多い病院はDPCデータを見ることでわかります。DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。

肺の悪性腫瘍手術のデータ

厚生労働省が集計し公表している平成30年度のDPCデータをもとに、肺がんに関連した手術件数の多い病院トップ10です。このデータでは通常の肺がん手術に加え、気管支鏡による治療やレーザー療法、気管支拡張術なども含まれているため、順位や手術件数はあくまで参考としてください。

肺の悪性腫瘍に対する手術症例の多い病院:数字は年間症例数

  1. 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(721例)
  2. 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(515例)
  3. 順天堂大学医学部附属順天堂医院(489例)
  4. 公益財団法人 がん研究会 有明病院(473例)
  5. 神奈川県立がんセンター(405例)
  6. 静岡県立静岡がんセンター(388例)
  7. 独立行政法人国立病院機構姫路医療センター(368例)
  8. 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(340例)
  9. 愛知県がんセンター(338例)
  10. 岡山大学病院(303例)

肺の悪性腫瘍・手術なしのデータ

肺がんの治療は手術だけではありません。DPCのデータでは薬物療法や放射線治療別の症例数は報告されていませんが、肺悪性腫瘍の患者を多く診ている病院は肺がんの治療の経験数が多い病院と考えられます。ここでは肺がんで手術をしなかった症例数のランキングを掲載します。この中には薬物療法や放射線治療の患者、そして検査のみで治療をしなかった患者も含まれていますので、あくまで順位や症例数は参考としてください。

肺の悪性腫瘍(手術なし)症例の多い病院:数字は年間症例数

  1. 独立行政法人国立病院機構近畿中央呼吸器センター(2,840例)
  2. 札幌南三条病院(2,005例)
  3. 東海大学医学部付属病院(1,660例)
  4. 独立行政法人国立病院機構姫路医療センター(1,543例)
  5. 一般財団法人厚生会仙台厚生病院(1,503例)
  6. 静岡県立静岡がんセンター(1,456例)
  7. 地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター(1,303例)
  8. 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(1,268例)
  9. 独立行政法人国立病院機構 山口宇部医療センター(1,237例)
  10. 独立行政法人国立病院機構 渋川医療センター(1,182例)

手術数以外にも注目したいポイント

治療の選択肢がいくつあるのか

最初に見つかった肺がんの治療方針はガイドラインで定められており、どの病院でも大きく変わることはありませんが、設備によってはできない治療もあります。例えば放射線治療やレーザー治療は、それが可能な設備がなければ実施することができません。また、薬物療法については病院の考えによって使用する薬が異なる場合があります。

がん診療連携拠点病院

がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制を整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。
肺がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。

治療開始までの期間

一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。

一部の病院のホームページで掲載されている診断後治療開始までの期間は以下の通りです。
手術:2-6週
薬物療法:1-2週
放射線治療:2-4週間

がん研有明病院 | 診療実績
がん研有明病院 | 肺がん
聖路加国際病院 | がん種別治療待ち日数、入院日数の目安
参照日:2020年9月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医