肺がん
肺がんの発症は男女ともに50歳を過ぎたあたりから増え、年齢が上がれば上がるほど発症率は増加します。性別では男性が女性の2倍発症していますが、この原因としては男性のほうが喫煙者が多いことも関連していると考えられます。
肺がんはがんの中で最も年間死亡者数の多い病気です。肺がん検診も行われていますが、実際の肺がん検診受診率は半分程度と報告されています。また、肺がんのタイプによっては胸部レントゲンで発見しにくいものもあります。性別や喫煙の有無により発症しやすい肺がんのタイプが異なるため、自分がどのタイプの肺がんになりやすいのかを知っておくことは重要です。
多くのがんは手術が基本的な治療になりますが、肺がんでは細胞のタイプによっては薬物療法や放射線療法の方が予後が良い場合もあります。近年では抗がん剤だけではなく様々な分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤といった新しい薬も開発されています。
元気な方はどのようにすれば肺がんになりにくいのか、どうすれば肺がんを早期発見できるのかについて、肺がんと診断された人は肺がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、このサイトではそれぞれ細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
肺とは
肺は胸の空間、胸腔(きょうくう)に左右に1個ずつある、呼吸にかかわる臓器です。気管はのどから胸に下りて胸の真ん中あたりで左右に分岐し、さらに右の肺で3つに、左の肺で2つに分かれています。
肺は肺胞と呼ばれる小さな空間の集まりで、この肺胞の表面で酸素を取り込んで二酸化炭素を放出する役割をしています。1つの肺胞は直径0.3mmで、肺の中にはこの肺胞が約3億個存在し、総面積は70㎡、畳で約40畳にも相当します。
肺がんの主な原因と特徴について
肺がんの発症は男女ともに50歳を過ぎたあたりから増え、年齢が上がれば上がるほど発症率は増加します。
性別では男性が女性の2倍発症していますが、この原因としては男性のほうが喫煙者が多いことも関連していると考えられます。肺がんの原因としてタバコは有名ですが、そのほかにもアルコールや女性ホルモンなどで肺がんの発症率が上がるという報告があります。逆にキャベツやイソフラボンを摂取すると肺がんの危険性を下げる効果が報告されています。
肺がんはがんの中で死亡者数が最も多い病気ですが、性別や喫煙の有無によりなりやすい肺がんのタイプが異なります。自分がどのタイプの肺がんになりやすいかを知ることは肺がんの予防や早期発見にとても重要です。
肺がんの分類や肺がんになりやすい人の特徴、そして肺がん予防の詳細については「肺がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。
肺がんの初期症状と診断方法
肺がんで現れやすい症状には咳や呼吸困難、体重減少などがあります。このような症状はがんの発生する位置によって、早期から出現する場合もあれば、進行するまで現れない場合もあります。
市町村で行われる肺がん検診は40歳以上を対象としていますが、その中でも50歳以上で喫煙指数(1日のタバコの本数にこれまでの喫煙年数をかけたもの)が600以上の人を肺がんになりやすいハイリスク軍とし、全員に行われる胸部レントゲンに加えて喀痰細胞診を行います。これはレントゲンでは発見しにくく喫煙者に多い扁平上皮がんを早期発見するために行われる検査です。その他に人間ドックなどでは低線量CTなどが行われています。
胸部レントゲンで要精密検査と判断されるのは100人のうち2人程度です。さらに要精密検査と判断された中で実際に肺がんがみつかるのは100人に2人と報告されています。
肺がんが疑われる場合の精密検査はその病変の部位により気管支鏡検査や腫瘍マーカー、細胞診などが行われます。
肺がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「肺がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。
肺がんのステージ別生存率
肺がんの患者数は年々増加し、2015年には10万人あたり91.4人と1995年から約2倍に増えています。患者数の増加に比例し、死亡者数も1990年から2倍に増加している疾患です。
肺がんのひろがり具合を数値化したものが進行度(ステージ)です。肺がんのステージは0から4まで分類され、一般的に数字が大きくなると進行していると考えます。肺がんのステージ別生存率は他のがんと比較して厳しい数字となっています。当然早期発見できればその後の予後も良い数字となっており、肺がんは予防と早期発見が重要な病気です。
主要な肺がんの種類、ステージはどのように決められるのか、そして平均余命、罹患者数や死亡数の推移、末期肺がんの症状やケアについては「肺がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。
治療と副作用
肺がんの治療方法には手術、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤)、放射線療法などがあります。これらの治療は単独で行う場合もあれば、組み合わせて行なうこともあります。
肺がんの治療方針を決めるときには、細胞のタイプやがんのひろがり具合、日常生活がどのくらい自立しているかといったことを考慮します。
特に治療に関して小細胞がんか非小細胞がんであるかは重要です。なぜなら小細胞がんは進行が早く転移を起こしやすいが、薬物療法や放射線治療の効果が得られやすいという特徴があるためです。非小細胞がんの基本的な治療方針は手術であり、大きく治療内容が異なります。
肺がんの手術には肺葉切除術、縮小手術、片肺全摘術があり、手術方法も胸を開いて行う開胸手術と、小さな傷で器具を用いて行う胸腔鏡手術があります。薬物療法には従来の抗がん剤に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、がん細胞のタイプに合わせた治療が開発されています。
肺がんの再発や転移は治療後2年以内に起きることが多く、その場合には初期治療と同様に病気の位置やひろがり具合を考慮して再度治療方針を決定します。
肺がんの治療とその副作用の詳細については「肺がん治療と副作用について」をご覧ください。
全国の病院ランキングトップ10
肺がんと診断された時、どの病院で治療を受けるか悩むかもしれません。大筋の治療方針はガイドラインで決まっているので、病変の位置や持病など特殊な事情がなければどの病院でも同じ治療方針を提示されるでしょう。しかし、同じ薬物療法であっても使用される薬が異なったり、放射線治療でも照射する放射線の回数や治療期間には違いが出てくるかもしれません。
肺がんの治療は終わっても、副作用や再発のチェックのために引き続き通院が必要になることが多いので、通常は自宅から通える病院で決めることが多いですが、セカンドオピニオンとして他の病院の意見が聞いてみたい、特殊な事情がありガイドラインと異なる治療を希望しているといった場合には、肺がん患者を多く診ている病院で相談するのがおすすめです。
肺がんの患者が多いこともあり、病院によっては年間2000例以上の患者を診ている病院もあります。ただし、肺がん患者の集まる評判のいい病院は受診や治療に入るまでに待ち時間(待機期間)が長くなることもあります。進行の早い肺がんの場合、治療までに時間がかかることは取り返しのつかないことになる場合もあるので、気をつけましょう。
どの病院で相談したらいいか、ということの1つの目安に、その病院はどのくらいの肺がんの患者を診ているのか、ということが参考になります。そんな時に参考になるのはDPCデータです。厚生労働省が集計しているDPCデータでは入院患者の主な病名や行った治療などが公表されており、その数で肺がん患者をどのくらいみているか推測することができます。
「手術数で分かる肺がんの名医がいる病院ランキングトップ10」では厚生労働省が発表しているDPCデータを基に手術や患者数のランキングを載せています。病院選びの参考にしてください。