ビダーザは、世界で初めて誕生した骨髄異形成症候群の患者さんの治療に用いられる抗がん剤です。難病指定となっている骨髄異形成症候群は造血幹細胞移植を行うことで治癒を目指す事が出来ますが、ドナーの有無や患者さんの年齢、全身状態などで移植が行うことが出来ない場合に、ビダーザを第一選択薬として治療が行われます。
このページでは、抗がん剤「ビダーザ」について詳しく解説していきますので、治療を検討されている方はぜひご覧ください。
目次
ビダーザ(一般名:アザシチジン)とは
ビダーザは、米国のファーミオン社(現セルジーン社)が開発した薬剤で、世界で初めての骨髄異形成症候群の治療薬として米国で承認を受けてから、現在では40か国以上の国で承認され患者さんに使用されています。
日本においては日本新薬株式会社が臨床試験を実施し、2011年に承認を取得しました。また、2008年には希少疾病用医薬品としての指定も受けています。
ビダーザが適応となるがんの種類
ビダーザは「骨髄異形成症候群」に適応を持ち、皮下投与か点滴により静脈内へ投与されます。1日1回体表面積当たり75mgのビダーザを注射にて7日間連続して投与した後に3週間の休薬期間を設け、これを1サイクルとして投与が繰り返されます。
用法用量の注意点
- 他の抗がん剤との併用については、有効性や安全性が確立していません。
- 原則として皮下投与が行われますが、出血の程度が重いなどの患者さんの場合は点滴による静脈内投与が行われます。
- 血液検査や腎機能検査、血清電解質の検査結果により投与量が減量される場合があります。
ビダーザに期待される治療効果
ビダーザにはがん細胞を構成するタンパク質の合成を妨げる事で、がんの増殖を抑制するという作用があります。さらに、治療の対象となる骨髄異形成症候群の患者さんは、もともと人に備わっているがん細胞を死滅に追いやる遺伝子の働きが弱いことが分かっていますが、ビダーザはこの遺伝子のはたらきを回復させる作用も持っています。
ビダーザは日本で承認を受ける際に、効果と副作用を確認するための臨床試験が実施されています。その臨床試験は日本人53名の患者さんが対象となっており、効果の指標である「血液学的寛解率(血液がんで用いられる顕微鏡検査と血液検査で正常値を得られた患者さんの割合を示します)」は、28.3%という成績が得られています。
主な副作用と発現時期
ビダーザなどの抗がん剤は、がん細胞だけではなく正常細胞にも作用するため副作用が現れることがあります。よく現れる副作用を事前に把握することでご自身の変化に気づきやすくなり、早期に対処することが可能となりますのでしっかり確認していきましょう。
国内で実施された骨髄異形成症候群の患者さん53名を対象とした臨床試験において、報告された主な副作用は以下となります。
- 好中球減少症:88.7%(47/56例)
- 血小板減少症:86.8%(46/56例)
- 白血球減少症:84.9%(45/56例)
- ヘモグロビン減少:73.6%(39/56例)
- 便秘:69.8%(37/56例)
- 赤血球減少症:67.9%(36/56例)
- 注射部位反応:67.9%(36/56例)
- ヘマトクリット減少:60.4%(32/56例)
- リンパ球減少症:52.8%(28/56例)
- 倦怠感:50.9%(27/56例)
- 発熱:41.5%(22/56例)
これら副作用の発現時期は、投与当日から投与初期にかけて多く報告されていますが、患者さんによっては半年以上経過してから現れる方も確認されています。さらに、患者さん個人によって現れる時期や程度の重さが異なりますので、ビダーザを投与中に体調などの変化が現れた場合はすぐに医療機関に相談することをおすすめ致します。
ビダーザの安全性と使用上の注意
ビダーザを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。
重要な基本的注意
- 血小板減少や好中球減少、貧血が現れることがありますので、ビダーザの投与前から投与中にかけて血液検査を定期的に行う必要があります。検査結果や患者さんの状態に異常が見られる場合には減量や休薬などの対応が取られることがあります。
- 腎不全などの腎障害が現れることがありますので、定期的に腎機能検査を行う必要があります。検査結果に異常が見られる場合には減量や休薬などの対応が取られることがあります。
- 生殖可能な年齢の患者さんにビダーザを投与する場合には、性腺に対する影響が考慮されます。
使用上の注意
- 感染症を合併している患者さん:骨髄抑制の副作用により感染症が重くなる可能性があります。
- 肝障害をお持ちの患者さん:転移性がんで広い範囲に病変があった患者さんに対するビダーザを投与中、進行性の肝性昏睡により死亡に至った例が報告されています。
- 高齢の患者さん:一般に高齢の患者さんは生理機能が低下しているため、慎重に投与されます。
- 妊婦や妊娠している可能性のある患者さん:投与は避けられます。(マウスやラットを用いた動物実験において、胚・胎児死亡や奇形の発生が確認されています。
- 授乳中の患者さん:授乳中の患者さんへの投与は安全性が確立していませんので、授乳を中止する必要があります。
- 小児の患者さん:使用経験がないため安全性が確立していません。
抗がん剤は、使用上の注意や副作用などをしっかり確認し、用法・用量を守って正しく使用する事で最大の効果を得る事が出来る薬剤です。
ビダーザは骨髄異形成症候群の化学療法において中心的な役割を持つ抗がん剤ですが、その効果を十分に得て長く治療を行うためには、副作用が現れた時に出来るだけ軽症のうちに対処する事が重要となります。副作用には好中球減少症や血小板減少などの骨髄抑制が多く報告されており、自覚症状として「息切れ」、「寒気」、「たちくらみ」などがありますので、このような症状が現れた場合は早期に主治医に報告しましょう。
これからビダーザの治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとってもこの記事が参考になれば幸いです。
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国立がん研究センター がん情報サービス | 骨髄異形成症候群
参照日:2019年8月