ユーエフティは20年以上も代表的な抗がん剤として広く使われ、配合化合物であるという特徴があります。通常の抗がん剤と比べ、配合剤にすることでどのようなメリットがあるのか、副作用はあるのか、など疑問に思われる方も少なくありません。
以下にユーエフティについて主な作用や治療効果などを詳しくご紹介しますので、参考にしていただければと思います。
目次
ユーエフティ(一般名:テガフール・ウラシル配合剤)とは
ユーエフティは、テガフールとウラシルを1対4の割合で配合された代謝拮抗剤とよばれる抗がん剤です。テガフールは1966年にHiller、S.A.らによって合成された抗がん剤であり、ウラシルは核酸(DNAとRNAの総称)の成分であるピリミジン塩基の一つで単独では抗がん作用がありません。
1960年代からフッ化ピリミジン系の抗がん剤(テガフールなど)とピリミジン塩基を合わせると抗がん作用は高くなることが検討されていましたが、同時に毒性も高くなることが問題とされていました。そこで1978年に日本の藤井らより、テガフールとウラシルが1対4の比率で毒性を強めることなく抗がん作用を高めることができることが明らかにされました。
ユーエフティが適応となるがんの種類
ユーエフティは内服薬(カプセル・顆粒)にて1日2~3回に分けて服用します。
適応となるがんの種類としては
- 頭頸部がん
- 胃がん
- 結腸・直腸がん
- 肝臓がん
- 胆のう、胆管がん
- すい臓がん
- 肺がん
- 乳がん
- 膀胱がん
- 前立腺がん
- 子宮頸がん
があり、主に消化管のがんに使用されることが多いです。
結腸・直腸がんにはユーエフティの作用を高めるためにホリナートカルシウムと併用します。ホリナート単体では抗がん作用はありませんが、ユーエフティと併用することで有効成分であるフルオロウラシルの効果を高めます。
ホリナートが食事に影響するため、食事の前後1時間を避けて1日3回ユーエフティと同時に服用し、28日間服用したあと7日間休薬として1クールを繰り返します。
またカプセルは副作用で食欲不振や悪心嘔吐などの消化管系の副作用が見られ、それらを軽減して腸で溶けるように改善されたものが顆粒剤です。
ユーエフティに期待される治療効果
ユーエフティの成分であるテガフールとウラシルですが、テガフールはそのままでは作用を発揮しませんが、体内に入り、肝臓でゆっくりと抗がん作用のあるフルオロウラシル(5-FU)に変化するプロドラッグです。
高い薬理活性がある物質でも体内に入ると分解されて作用が減少してしまうため、体内に入ってから薬理活性を示すように作られた薬がプロドラッグとよばれます。
ウラシルは体内でフルオロウラシルが分解するのを妨げることで、より効果を高く維持します。
そして代謝拮抗薬の大きな特徴は「成り済まし」です。代謝拮抗薬はDNAやRNAの材料によく似ているため、使用することでがん細胞は自身が増殖するときに使用するDNAやRNAを本物と見誤って正常な増殖ができなくなり、がん細胞の分裂を妨げることで抗がん作用を示します。
使用実績
全国で行われた臨床試験による奏効率(その治療をしたあと、がん細胞がどのくらい縮小または消滅したかを示したもの)は23.3%となっており、がん種類別の奏効率としては頭頸部がん(31.0%)、胃がん(25.4%)、結腸・直腸がん(18.3%)、肝臓がん(16.7%)、胆のう・胆管がん(18.8%)、膵臓がん(17.4%)、肺がん(8.7%)、乳がん(30.2%)、膀胱がん(30.6%)、前立腺がん(14.7%)、子宮頸がん(19.4%)となっています。
またホリナートカルシウムとの併用により、日本では36.4%の奏効率が示されました。奏効率が20%以上で効果があるとされるので、ユーエフティ単体またはホリナートとの併用により良い効果が期待されると考えられています。
主な副作用
ユーエフティは成長の早い細胞を攻撃するため、がん細胞以外にも胃腸粘膜の細胞や血液を作る骨髄細胞などの成長の早い正常な細胞にも攻撃する可能性があります。
ユーエフティ服用により14.8%の方に副作用が現れる可能性があります。主な副作用として、食欲不振(3.8%)、嘔吐(1.1%)、下痢(1.5%)などの消化器症状、白血球減少(3.1%)、血小板減少(1.1%)、貧血(0.8%)などの血液障害、肝障害(1.8%)、色素沈着(0.7%)などがあり、服用後2か月ほどであらわれることがあります。
重大な副作用として脱水症状があります。腸の粘膜が刺激を受けるため下痢になり、重症化して続くと脱水症状になることがあります。予防法としましては水分をこまめにとること、スポーツ飲料など電解質を補給すること、カリウムの多い食品(バナナや100%ジュース、海藻など)をとることなどがあります。
ユーエフティの安全性と使用上の注意
安全性
ユーエフティは、重篤な副作用の可能性などから緊急時に十分に措置できる医療施設及びがん化学療法に十分な経験を有する医師のもとで、適応患者の選択を慎重に行い実施することとなっています。
使用上の注意
重篤な骨髄抑制・下痢・感染症のある方、TS-1を投与中または投与中止後7日以内の方、妊婦または妊娠している可能性のある方へは投与しないこととなっています。
また骨髄抑制のある方、肝障害・心疾患または既往歴のある方、腎障害のある方、感染症、消化管潰瘍または出血のある方、耐糖能異常のある方、水痘の方、高齢者の方、他の化学療法・放射線治療を受けている方、前化学療法を受けていた方への投与は副作用や症状の悪化の可能性により慎重に投与することとなっています。
1)劇症肝炎などの重篤な肝障害が起こることがあるため、定期的(投与開始から2ヵ月間は1ヵ月間に1回以上)に肝機能検査などを行います。
2)テガフールから代謝されて生じるフルオロウラシルの濃度が上がるため、TS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)との併用は禁忌となっています。ユーエフティからTS-1に変更またはその逆に変更する場合、薬の効果が残っている場合があるため最低7日間の休薬が必要です。
3)6か月以上の長期投与により嗅覚の異常が発現する可能性があります。コーヒーやたばこ、花などの匂いがわかりにくいといった自覚症状があればすぐに医師に相談してください。減量や休薬する場合があります。
4)顆粒剤は腸内で溶けるようにコーティングをしており、服用時にかむとコーティングがはがれるため、かまずに服用してください。
併用に注意すべき薬剤
以下の薬を併用した場合、ユーエフティや併用薬の作用を増減したり血液障害などの副作用が現れる可能性があるため、併用注意となっています。
・フェニトイン
・ワルファリン
・他の抗がん剤または放射線照射
まとめ
抗がん剤服用において血液症状は自覚しにくく、消化器症状は自覚しやすい症状です。下痢や腹痛など重症化すると体力低下や脱水症状に陥り症状が悪化する可能性もあるため、いつもと違う症状を感じた場合は我慢せずにすぐに医師や看護師に相談することをおすすめします。
指示通り正しく服用し、薬や病気についての正しい知識を得て治療と向き合うことが大切です。
大鵬薬品 | ユーエフティ配合カプセルT100
参照日:2019年12月