テモダールは、希少がんである悪性神経膠腫という脳に発生するがんやユーイング肉腫に適応を持ち、悪性神経膠腫では治療のガイドラインにおいて、効果の高さと副作用が比較的軽い事から化学療法を行う場合の第一選択薬として推奨されている薬剤です。
副作用が比較的軽い事に加え、飲み薬であるカプセル製剤となっていますので、通院しながら治療を行うことができる薬剤となります。
このページでは、抗がん剤「テモダール」に注目して、治療ができるがんの種類やそれぞれの治療効果、また副作用についても詳しく解説していきます。
目次
テモダール(一般名:テモゾロミド)とは
商品名テモダールは、一般名をテモゾロミドといいます。
テモダールは、シェリング・プラウ社(現 Merck Sharp & Dohme Corp., a subsidiary of Merck & Co., Inc.,Whitehouse Station, N.J.,U.S.A.)によって開発された抗がん剤です。
米国において1999年に承認されたのを最初として、現在では世界90か国以上で承認されている薬剤で、日本では2006年に承認されています。
テモダールが適応となるがんの種類
テモダールは、日本においては「悪性神経膠腫」と「ユーイング肉腫」の患者さんの治療に使用する事が出来る抗がん剤です。
使用方法は、適応となるがんの種類により異なります。
- 初発の悪性神経膠腫
- 放射線照射と併用して治療が行われ、150mg/㎡を1日1回連続42日間経口投与し、4週間休薬します。
その後、テモダール単独で150mg/㎡を1日1回連続5日間経口投与し、23日間休薬します。この28日間を1クールとして繰り返し投与されますが、次回クールからは1回200mg/㎡まで増量する事が可能です。 - 再発の悪性神経膠腫
- テモダールを150mg/㎡を1日1回連続5日間経口投与し、23日間休薬します。この28日間を1クールとして繰り返し投与されますが、次回クールからは1回200mg/㎡まで増量する事が可能です。
- ユーイング肉腫
- イリノテカンと併用して治療が行われ、100mg/㎡を1日1回連続5日間経口投与し、16日間以上休薬します。これを1クールとして繰り返し投与されます。
テモダールに期待される治療効果
テモダールは、抗がん剤の中でも「アルキル化剤」というグループに属する薬剤です。
人間の細胞は正常細胞でもがん細胞でもDNAが複製する事で細胞が増えていきます。
アルキル化剤とは、がん細胞に結合しアルキル化という化学反応を起こすことで、DNAの複製を制御しがん細胞の増殖を抑制する効果が期待できます。
悪性神経膠腫の患者さんを対象とした国内臨床試験において、テモダールの奏効率(※)は34.0%という結果が得られています。
※奏効率:標的となるがんが小さくなった患者さんの割合を数値で示した効果の指標です。
ユーイング肉腫については、公知申請(※)により承認されていますので臨床試験は行われていません。
※公知申請:ある薬剤が欧米で承認されていても日本で承認されていない為使用できない「ドラッグ・ラグ」を解消することを目的として、その薬剤が保険適応となることです。
保険適応外使用の是正も目的としていますので、適正使用にも繋がります。
主な副作用と発現時期
抗がん剤は一般的にがん細胞だけではなく正常細胞にも作用してしまうため、治療を受けるとほとんどの方で副作用があらわれてしまいます。
テモダールは比較的副作用が少ないとされていますが、副作用が報告されていますので、事前にどんな副作用があらわれるのかを知っておくことが重要になります。
主な副作用
製造販売後調査として実施された特定使用成績調査において、対象となった患者さんは1,980例で、そのうち副作用が報告されたのは1,396例(71%)です。
- リンパ球数減少:27%(544/1,980例)
- 白血球数減少:21%(417/1,980例)
- 血小板減少:18%(349/1,980例)
- 肝機能異常:10%(206/1,980例)
- 好中球減少:10%(205/1,980例)
これら副作用の発現時期は、投与数日から投与期間中において報告されており、患者さんによって遅い時期にあらわれる方、1日目からあらわれる方とさまざまです。
副作用対策を早期に行うことで治療を長く続けることができ、がん細胞と戦うことが可能となりますので、治療中に異変を感じる事があれば我慢せず、主治医の先生にすぐに相談する事が大切です。
テモダールの安全性と使用上の注意
テモダールを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。
重要な基本的注意
- テモダールは、骨髄抑制などの重い副作用が現れる事がありますので、定期的に血液検査や肝機能検査、腎機能検査などが必要となります。
- テモダールの治療後に、二次発癌が発生したとの報告があります。
- B型肝炎ウィルスをお持ちの患者さんは、テモダールの投与によりB型肝炎ウィルスの再活性化による肝炎が現れることがありますので、検査を行うなど症状の発現に注意が必要となります。
- テモダールの治療中に悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状が高い頻度で報告されていますので、適切な処置が必要となります。
※骨髄抑制とは、白血球や血小板などが新しく体内で作られにくくなってしまうことを言います。特に白血球数が低下すると免疫力が落ちてしまい、感染症を合併しやすくなり命にかかわる場合もありますので、血液検査を行い数値や状態などをしっかり確認する事が重要です。
※二次発癌とは、投与された薬剤の影響で別の部位などに、新しいがんが発生してしまうことです。
使用上の注意
- 骨髄機能が低下している患者さん:骨髄機能がさらに低下する可能性があります。
- 肝障害のある患者さん:副作用が強くあらわれてしまう可能性があります。
- 腎障害のある患者さん:副作用が強くあらわれてしまう可能性があります。
- 感染症を合併している患者さん:テモダールの副作用である白血球減少により、感染症に対する抵抗力がさらに低下してしまう可能性があります。
- 肝炎ウィルスの感染又は既往歴のある患者さん:再活性化する可能性があります。
- 水ぼうそうの患者さん:感染症の中でも、水ぼうそうにかかっている方は特に全身状態が急激に悪化する危険性があります。
- 高齢の患者さん:テモダールの海外臨床試験において、70歳を超える患者さんでは70歳以下の患者さんと比較すると好中球減少と血小板減少の副作用が増加する事が報告されています。
- 小児の患者さん:悪性神経膠腫については国内における小児の使用経験が少なく、ユーイング肉腫については小児の使用経験がありません。
抗がん剤は、使用上の注意や副作用などをしっかり確認し、用法・用量を守って正しく使用する事で最大の効果を得る事が出来る薬剤です。これから治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとっても参考になれば幸いです。
テモダール添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4219004M1024_1_23/
テモダールインタビューフォーム
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
神経膠腫(グリオーマ)ガイドライン
http://www.jsco.or.jp/guide/user_data/upload/File/167/glioma.pdf#search=%27%E6%82%AA%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E8%86%A0%E8%85%AB+%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%27