スーテントが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

スーテントは、消化管間質腫瘍の治療薬として注目されている薬です。

今まで消化管間質腫瘍においてイマチニブ(製品名:グリベック)以外の治療法がなく、耐性や副作用で服用できなくなった方にとっての有効な治療法がありませんでしたが、スーテントの開発により新しい治療法が見出されました。

スーテントは他のがんにも使えるのか?どのようにして効くのか?といった疑問に対して、本稿ではスーテントについて主な作用や治療効果などを詳しくご紹介しますので参考にしていただければと思います。

目次

スーテント(一般名:スニチニブ)とは

スーテントとは、Sugen社で合成され2000年以降ファルマシア社(現ファイザー社)で開発された分子標的薬の一つです。複数の受容体型チロシンキナーゼ(RTK)におけるシグナル伝達を選択的に遮断することからチロシンキナーゼ阻害薬とよばれています。

今まで治療法がなかったがんに対しての新しい有効性がある薬として開発され、世界中で100を超える国または地域で販売されています。

スーテントが適応となるがんの種類

スーテントは1日1回経口投与にて服用します。

適応となるがんの種類は、イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞がん、膵神経内分泌腫瘍となります。

根治切除不能とは以下のいずれかの状態を指します。

  1. 技術的に外科的切除が困難な場合(頸動脈、頭蓋底、頸椎転移している状態)
  2. 外科的切除では予後不良であることが予測される場合
  3. 外科的切除で著しい機能障害をきたす(高度の嚥下障害など)可能性が高い場合

またイマチニブ投与中に消化管間質腫瘍が悪化した場合、併用せず、イマチニブの投与を中止してからスーテントを服用することとなっています。

スーテントに期待される治療効果

がん細胞が増えるために必要なシグナル伝達において、キナーゼと呼ばれる酵素の活性が必要とされています。がん細胞は自身に栄養や酸素を供給できる血管が必要なので、成長や転移するにしたがって自ら新しい血管を作り出すのを促す物質(血管内皮細胞)を作り出すように働きかけます。

血管内皮細胞はほぼ全てのがんの血管新生に関与し、受容体が複数存在するため一つだけ阻害しても血管新生を完全に阻害することができません。

スーテントは血管新生に関わる複数のキナーゼを阻害することでがん細胞の増殖に必要な情報をブロックし、がんの成長・増殖を抑えます。また、消化管間質腫瘍はチロシンキナーゼの一種であるKITタンパクを合成する遺伝子が異常変異したもので、スーテントはそれらのキナーゼも阻害することがわかっています。

主な副作用と発現時期

スーテントは複数のチロシンキナーゼを阻害するため、様々な副作用が現れます。

主な副作用として、血小板減少(66.6%)、手足症候群(39.5%)、白血球減少(38.7%)、高血圧(37.3%)、甲状腺機能低下症(35.2%)、貧血(20.6%)、好中球減少(19.7%)、口内炎(19.4%)、下痢(18.5%)、肝機能障害(18.4%)、食欲不振(15.8%)、発熱(14.4%)、倦怠感(12.1%)、悪心(10.6%)、リパーゼ増加(10.6%)などがあります。

また服用後3~6週間で皮膚変色するという、スーテント特有の副作用があらわれることがあります。皮膚が黄色っぽくなる・爪に線状の出血があらわれる・髪の毛が白~灰色になるといった症状が見られ、これはスーテントの有効成分の色が原因と考えられており、ほとんどの場合休薬期間中に回復傾向がみられるので心配はありません。

スーテントの安全性と使用上の注意

安全性

スーテントは緊急時に十分対応できる医療施設においてがん化学療法に十分な知識・経験をもつ医師のもとで、スーテントの投与が適切と判断される症例についてのみ投与することとなっています。また、治療開始前に治療を受けられる方またはそのご家族にスーテントの有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与することとなっています。

使用上の注意

妊婦または妊娠している可能性のある方、スーテントの成分に対し過敏症のある方へは投与しないこととなっています。

イマチニブに忍容性のない(副作用のためイマチニブによる治療ができなくなった)消化管間質腫瘍の方、骨髄抑制のある方、高血圧の方、心疾患・脳血管障害・肺塞栓症またはその既往歴のある方、脳転移のある方、甲状腺機能障害のある方、重度の肝障害のある方へは症状が悪化する可能性があるため、慎重に投与することとなっています。

1)副作用が悪化する可能性を防ぐため、服用前と服用中に血液、甲状腺機能、膵酵素、肝機能、心機能検査などが行われることがあります。

2)スーテントを服用中、めまいや眠気、意識消失などがあらわれることがあります。高所での作業や自動車の運転など危険を伴うような機械を操作するときには注意してください。

3)母乳に移行する可能性があるので、スーテントを服用中は授乳を避けてください。

4)血管新生という働きは体が傷跡を治そうとするのに必要な働きですが、スーテントはこれを阻害するために傷の治りが遅くなることがあります。

手術と投与の期間をどの程度空ける必要があるのか明らかになっていないため、手術の際は原則として投与を中断し手術後は傷が治癒するまで投与を避けるなどし、状態をみながら投与を再開することとなっています。

併用に注意すべき薬剤

以下の薬を併用した場合、スーテントの効き目を増減させたり不整脈などの重篤な副作用が出る可能性があるため、併用注意となっています。

  • YP3A4阻害薬(アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗生物質、HIVプロテアーゼ阻害剤)
  • グレープフルーツジュース
  • CYP3A4誘導剤(デキサメタゾン、フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、フェノバルビタール等)
  • セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)を含む食品
  • 抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド等)
  • 心電図QT延長を起こす薬剤(イミプラミン、ピモジド)

まとめ

腎臓がんも近年増加傾向にあり、再発する可能性も多いため治療薬の選択肢が多く望まれます。一つの薬が新しく開発されることによって今まで治療法がなかった多くの患者さんが前向きに治療できるようになるため、これからも開発が進むことを願うばかりです。

指示通り正しく服用し、薬や病気についての正しい知識を得て不安を減らし、治療と向き合うことが大切です。

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日薬理誌 受容体型チロシンキナーゼ阻害薬の現状と展望 船橋泰博
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/136/4/136_4_204/_pdf

保田 菜々子