SCCは扁平上皮細胞という細胞から発生するがんが体内にあるときに上昇することがある腫瘍マーカーです。
とはいえ、SCCが上昇している場合に体内に必ずがんがあるというわけではありません。
健康な人の扁平上皮にもSCCは多く存在しているため、皮膚や肺の炎症時や唾液や皮膚の一部が血液に混入した場合にも高値になることもあります。
そこで本ページでは、SCCの詳しい解説と、数値が高い場合の対処についてご紹介します。検査を受けてSCCが高かった場合は参考にしてください。
目次
SCCとは
SCCは腫瘍マーカーの一種です。腫瘍マーカーとは体の中にがんがあるときに上昇することのある物質で、がんの種類によってさまざまなものがあります。SCCは扁平上皮細胞と呼ばれる細胞の中に多く含まれており、SCCが上昇した場合には扁平上皮がんが体内にある可能性を示しています。
扁平上皮細胞とは、私たちの体のうち外の世界と接する部位にある細胞です。皮膚をはじめ、食道、気管支、肺、子宮頸部などに存在しています。健康な人のこれらの臓器でもSCCは存在しているのでがんだけでなく、扁平上皮に炎症があったり、皮膚や唾液が検査時に混入したりすると上昇することもあります。そのため、結果の解釈には注意が必要な腫瘍マーカーです。
また、SCCの測定値とがんの進行度合いには関連性があまり見られず、早期のがんであってもSCCが上昇しているということも起こります。その一方、効果的な治療を行うことができればSCCは敏感に反応して数値が低下するため、[su_highlight background=”#f4fe2c”]治療の効果判定には優れた検査項目[/su_highlight]です。
基準値について
SCCの基準値は全国的に統一されていません。一般的には1.5ng/mLが採用されていることが多いですが、受診する医療機関によっては別な基準値が採用されていることがあります。実際、とある大手の検査会社では2.5ng/mLを採用しています。ですから、自分が受診している医療機関での基準値を確認し、その基準値に比べて自分の測定結果が高いか低いかを確かめることが大切です。
SCCが高くなる原因
SCCは腫瘍マーカーの一種であるため、がんが体の中にあるときに上昇することが多いです。その一方、体内にがんがなくてもSCCが上昇することもあるため、SCCが上昇したからと言ってすぐにがんと決めることはできません。SCCが高くなる原因について詳しく見ていきましょう。
子宮頸がん
子宮の入り口を子宮頸部といいますが、この場所から発生するがんを子宮頸がんと言います。子宮頸部は膣に近い方は扁平上皮細胞、子宮に近い方は腺細胞という細胞が分布しており、扁平上皮細胞からがんが発生するとSCCの値に影響を及ぼします。
肺がん
肺は様々な細胞から作られていますが、そのうちの扁平上皮細胞から発生するがんの場合はSCCが上昇します。
食道がん
食べ物が胃に到達するまでの通り道である食道も扁平上皮細胞が表面を覆っています。そのため、食道がんでもSCCが上昇します。
皮膚がん
皮膚にはもともと多くのSCCが存在しているため、皮膚がんが活発に増殖すると血液中にSCCが混入し、数値が高くなります。
呼吸器の良性疾患
扁平上皮細胞が分布している気管支や肺などで炎症が起こると、SCCが上昇することがあります。具体的な疾患としては、肺炎、気管支炎、気管支喘息、肺結核、COPDなどです。
良性の皮膚疾患
皮膚にはもともとSCCが多く含まれているため、皮膚の炎症でもSCCが上昇することもあります。乾癬や天疱瘡などの疾患がこれにあたります。
人工透析
透析中の患者さんでは、いくつかの腫瘍マーカーが上昇することが知られています。SCCはその1つです。そのため、がんがあるせいでSCCが上昇しているのか、人工透析の影響で上昇しているのか詳しく検査することが大切です。
検査時の不良
SCCは健康な人であっても皮膚や唾液に多く含まれているため、これらの成分が検査時に混入すると、偽高値(実際には高くないのに高い数値の検査結果が出る)になることがあります。これは患者さんが原因というよりも、医療者による原因が大きいです。また、腫瘍マーカーの検査は患者さんの血液と検査の試薬の相性で過剰に反応してしまうこともあり、そのような場合にも偽高値になることがあります。
SCCを下げる方法は?
SCCが上昇している原因によっては、生活を改善することでSCCが下がります。例えば、肺炎や気管支炎、皮膚の炎症など一時的に体の状態が悪くなっているせいでSCCが上昇しているのであれば、医師の診療の下、生活習慣を見直し、これらの疾患から回復することでSCCは低下します。
また、検査時の不良が原因の場合は、医療者が採血・検査時に皮膚や唾液の混入がないように注意したり、検査の試薬を変更したりすることでSCCの正しい測定結果を得ることができます。
がんが原因でSCCが上昇している場合には、がんに対する治療を受けることが大切です。一方、透析が原因でSCCが上昇している場合には、透析の中止は難しいため低下させるのは難しいでしょう。しかしこれはがんによる上昇ではないため、積極的に下げるための治療が必要ということではありません。
SCCが基準値以上だった時の対策
SCCが上昇している場合には全身を調べてどこかに病変がないか、病変があるならそれはがんなのかどうかを調べることが必要になります。ここからはSCCが高値であった場合の精密検査についてご紹介します。
その他の血液検査やSCCの再検査
他の項目の血液検査を実施することで、全身の状態を確認します。SCC以外の腫瘍マーカーを測定すると、どこの臓器でがんが発生しているかを予測することも可能です。また、SCCが偽高値の可能性がある場合には、再検査を実施します。
X線検査
肺がんや食道がんが疑われる場合にはX線検査を実施します。食道のX線検査ではバリウムを飲んでの検査になります。
内視鏡検査
食道がんや肺がんを疑う場合には内視鏡を使ってがんがないかどうかを調べます。
CT検査
CT検査で、全身のどこに病変があるか、がんの転移がないかどうかを調べます。放射線を使用するため、放射線被曝が避けられません。
MRI検査
MRI検査も、全身の病変の有無、転移の有無を調べることができます。放射線を使用しないため被曝のリスクはありませんが、磁力で検査を実施するため体内に金属がある場合にはMRI検査はできません。
病理検査(細胞診、組織診)
病理検査では体から採取した細胞や組織を顕微鏡で観察し、がんの有無やどのような性質をもったがんなのかを調べます。
HPV感染の検査
子宮頸がんではHPVに感染しているかどうかがカギになるため、子宮の入り口からハイリスク型のHPVのDNAが検出されるかどうかを調べます。検査の結果、子宮頸がんでなくともハイリスク型のHPVに感染していることが分かった場合には子宮頸がん検診などで経過観察をすることが大切です。
「エビデンスに基づく検査データ活用マニュアル」(下正宗/編)学習研究社2008
「人間ドック検診の実際」(日本人間ドック学会/監)文光堂2017
「病気がみえるvol.9婦人科・乳腺外科 第4版」(井上裕美他/監)メディックメディア2018
「臨床検査法提要 改定31版」(金井正光/編著)金原出版株式会社1998
BML | 検査案内「SCC抗原(扁平上皮癌関連抗原)」
「SCC」 | SRL総合検査案内
シー・アール・シー|透析患者で高値となる腫瘍マーカーを教えてください。
国立がん研究センターがん情報サービス それぞれのがんの解説「肺がん」
国立がん研究センターがん情報サービス それぞれのがんの解説「食道がん」
日本皮膚科学会 | 皮膚科Q&A「メラノーマ(ほくろのがん)」
日本皮膚科学会 | 皮膚科Q&A「メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍」
参照日:2019年7月