リツキサンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

分子標的薬という薬についてご存知でしょうか?
通常の抗がん剤ですとがん細胞以外にも正常な細胞まで作用しますが、分子標的薬とはピンポイントでがん細胞の表面にあるタンパク質や遺伝子にのみ結合して作用するという、今までの抗がん剤とは作用も全く異なった薬です。

リツキサンは分子標的薬として世界で初めて市場に出た薬剤です。また、患者数が5万人以下の希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)であり、医薬品メーカーが開発するケースの少ない希少疾病患者向けの医薬品として多くの血液がん患者の助けとなっています。

どのような作用なのか?副作用はないのか?などの疑問に対し、このページではリツキサンについて主な作用や効果などを詳しく説明しますので、参考にしていただければと思います。

目次

リツキサンとは

リツキサン(一般名:リツキシマブ)とは、1991年にアメリカの製薬企業IDEC社が遺伝子組み換え技術によって開発した分子標的薬(ヒト・マウスキメラ型モノクローナル抗体)です。アメリカでは1993年から悪性リンパ腫に対する臨床試験が行われ、1997年に承認されました。日本では1996年から臨床試験が行われ、2001年以降の非ホジキンリンパ腫に対して承認されています、

各国で使用され、全世界売上高で全医薬品で5位、抗がん剤で1位となりました

リツキサンが適応となるがんの種類

リツキサンは注射にて静脈投与されます。主に他の抗がん剤と一緒に使われますが、悪性度の低いリンパ腫に対しては単独で使用されることもあります。

リツキサンが適応となるがん下記の通りです。

  • CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
  • 免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
  • CD20陽性の慢性リンパ性白血病

特に慢性リンパ性白血病への適応は2019年3月に承認されたばかりで現在注目を集めています。

リツキサンはCD20に結合して作用するため、投与前に必ずCD20が陽性であるかどうかの検査をします。また非ホジキンリンパ腫の治療においてR-CHOP療法(R=リツキサン、C=シクロフォスファミド、H=ドキソルビシン、O=ビンクリスチン、P=プレドニゾロン)で併用することによってより高い効果が出ることがわかっています。

リツキサンに期待される治療効果

リツキサンの働きである分子標的薬とは、がん細胞に特有の分子を狙い撃ちする薬剤のことです。

白血球の中のリンパ球の一つであるB細胞は抗体を産生するなどの役割をしていて、B細胞の表面にはCD20というタンパク質が多く存在しています。CD20はB細胞の活性化と増殖の調整に関与したタンパク質で、B細胞が成熟して形質細胞になるとともに消失します。B細胞ががん化することで細胞が異常に増え、それに伴いCD20も増殖します。

機序としてははっきりと解明されていませんが、リツキサンはそのCD20に結合して体内の免疫細胞(細胞傷害作用がある)を活性化し、がん細胞を攻撃するように仕向けたり(ADCC:抗体依存性の細胞障害反応)、がんを縮小するといわれています。

また、リツキサンにはがん細胞を縮小させることを目的とした治療と、非ホジキンリンパ腫においてはがん細胞を縮小した後、その状態を維持することを目的とした治療(維持療法)があります。

主な副作用と発現時期

リツキサンにはInfusion reaction(インフュージョンリアクション)という副作用があり、主な症状として発熱、寒気、悪心、食欲減退、頭痛、疼痛、痒み、発疹、咳、虚脱感、口内乾燥、多汗、眩暈、倦怠期などがあります。

一般的なアナフィラキシーと似ていますが、リツキサン特有の発現であり、投与開始後30分~2時間より24時間以内に90%の方に見られます。またアナフィラキシーとは違い、初回投与で見られますが2回目以降はほとんど症状が出ないといわれています。

重大な副作用として、腫瘍崩壊症候群(がん細胞の急速な崩壊による重篤な腎障害)、B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎・肝炎の悪化、肝機能障害、皮膚粘膜症状、血球減少、感染症、進行性多巣性白質脳症、間質性肺炎、心障害、腎障害、消化管穿孔、血圧降下、脳神経症状などがあります。

また非ホジキンリンパ腫の治療法であるR―CHOP療法では、短期的な副作用(吐き気、白血球減少、貧血、血小板減少など。投与後10~14日目がピークで、その後1週間程度で回復)と長期的な副作用(脱毛、手足のしびれなど。投与後2~3週間でみられ、数か月で回復)がみられます。

リツキサンの安全性と使用上の注意

安全性

リツキサンは緊急時に十分に対応できる医療施設において、造血器腫瘍(CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞性リンパ増殖性疾患)、自己免疫疾患(多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎)、ネフローゼ症候群及び慢性特発性血小板減少性紫斑病の治療、腎移植あるいは肝移植に対して、十分な知識と経験を持つ医師のもとでリツキサンの使用が適切と判断される症例のみ使用されることとなっています。

使用上の注意

感染症の合併、心機能障害、肺浸潤・肺機能障害のある方またはなったことのある方、重篤な骨髄機能低下あるいは腫瘍細胞の骨髄浸潤がある方、降圧剤での治療中の方、アレルギーがある方へは慎重に投与することとなっています。

  1. 発熱や寒気、頭痛などの副作用が出やすい薬です。リツキサンを投与する30分前に副作用の症状を軽くする薬(解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬など)を投与します。
  2. 不整脈や狭心症などの心疾患がある、または過去になったことのある方に投与する場合は投与中または投与直後に心電図、心エコー等によりモニタリングを行うことがあります。
  3. B型肝炎の方または肝炎ウイルスがある方は、リツキサンの投与によりB型肝炎ウイルスによる劇症肝炎または肝炎があらわれることがあります。リツキサンを投与する前にウイルス感染になったことがあるかを調べ、投与中または投与後も肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うことがあります。

併用に注意すべき薬剤

感染症を誘発したりワクチンに対する免疫が得られないことがあるので、以下の薬剤は併用注意となっています。

  • 生ワクチン
  • 不活化ワクチン
  • 免疫抑制作用がある薬剤(免疫抑制剤、副腎皮質ホルモンなど)

まとめ

リツキサンのような分子標的薬の開発が進むにつれ、今まで予後不良とされていた白血病やがんに明るい予後が見えるようになりました。抗がん剤で見られていた吐き気や脱毛、骨髄抑制といった副作用の頻度も減り、通常通りの生活を送りながら外来で治療を受けられることも可能になりました。

リツキサンは確かに副作用も多い薬ですが、様々な効果も期待される薬です。

正しい知識と情報を得て、症状や薬・治療と向き合うことが大切です。

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保田 菜々子