口腔がんと診断された場合、誰でも腕のいい先生の手術を受けたいと思います。しかしどの病院に行けばいいのか、どこに名医がいるのか、はとても気になるとともに、どうやって調べたらいいのか迷われるかと思います。今回は、判断材料の一つとしての「名医がいる病院ランキング」についてふれてみます。
目次
口腔がんの手術が適応となる症例
「口腔」とはどこまでか(領域について)
「口腔がん」といっても、細分化すると歯肉がん、舌癌、頰粘膜がんなど部位ごとに分かれます。歯科医師(口腔外科)が扱える範囲と、医師(主に耳鼻咽喉科や頭頸部外科)が扱える範囲は異なります。
歯科医師が扱える範囲は、厚生労働省が平成8年に取り決めています。その範囲とは「口唇、頰粘膜、歯槽骨(歯を支える骨)、舌の前2/3、口蓋、上あごと下あごの骨、唾液腺(耳下腺以外)」の範囲を指します。この範囲の中であれば医師、歯科医師どちらもが治療できます。しかし、がんがこの領域を越える場合は、耳鼻咽喉科や頭頸部外科の医師だけが治療を行うことになります。
また、この取り決めとは別に、各病院施設によっても取り決めがあります。それは担当する医師、歯科医師の専門分野かどうかという背景があります。詳しくは、担当する医師、歯科医師に尋ね、詳細を確認してください。
手術可能かどうかで見た場合
口から喉、首のあたりにかけては、生きる上で最も基本である呼吸や循環における重要な血管や神経(臓器)が多数存在します。頸動脈は首から上、脳などに血液を送る重要な動脈ですし、横隔神経は横隔膜を上下させて呼吸にとって重要です。そのほかにも迷走神経などあります。
手術が可能かどうかは、これら重要な臓器にかかるかどうかで決まります。ただし、切除する範囲にかかっている場合でも、手術に先立って放射線治療と抗がん剤の治療を行なって、がんを小さくすることで手術が可能になる場合もあります。
口腔がん手術数トップ10
医科の分野では、入院治療にかかった費用はDPC(診療群分類包括評価)という計算方法で行います。検査、注射、投薬、入院基本料などが1日あたり定額料金となります。この他に手術、リハビリ、一部の検査が出来高計算で加算されます。病名や治療内容に応じて、おおよそどのくらいの医療費がかかるのかの目安が分かりやすくなります。また、過剰な検査や処置を減らすことから、医療費削減のねらいもあります。
歯科口腔外科、労災、公務災害、自費での入院は、DPCの対象外となります。
一例ですが、「Caloo (カルー)」というサイトで見てみます。このサイトは全国の舌がんの治療実績・手術件数がわかります。「手術あり」と「手術なし」の2つがあります。「手術なし」に含まれる患者は、手術そのものを拒否した患者、全身麻酔をかけることそのものが命を落としかねないくらい心機能や呼吸機能、腎機能などの状態が良くないハイリスクな患者、もしくは手術ではがんを除去しきれないほど大きい、もしくは転移があるため化学療法や放射線療法などを行なった患者、末期がんの患者などが含まれます。
全国で見てみると下記の通りです。
- 東京都 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院
- 東京都 東京医科大学病院
- 千葉県 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院
- 大阪府 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター
- 愛知県 愛知県がんセンター中央病院
- 静岡県 静岡県立静岡がんセンター
- 東京都 公益財団法人 がん研究会 有明病院
- 埼玉県 埼玉県立がんセンター
- 愛知県 名古屋大学医学部附属病院
- 北海道 社会医療法人 恵佑会札幌病院
※2020年2月1日現在
また、「病院情報局」というサイトでは、患者数ランキングがあります。
「耳鼻咽喉科系」の「全国」「平成29年度」で絞ることができますが、口腔がん以外のがん(咽頭がんなど)も含みます。
- 東京慈恵会医科大学附属病院
- 東京医科大学病院
- 順天堂大学医学部附属 順天堂医院
- 愛知医科大学病院
- 藤田保健衛生大学病院
- 倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
- 岩手医科大学附属病院
- 伊勢赤十字病院
- 藤田保健衛生大学坂文種報德會病院
- 京都大学医学部附属病院
「DPCランキング」で「耳鼻咽喉科系」の「耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍」を選択して平成28年分で検索すると以下の通りです。これも口腔がん以外のがん(咽頭がんなど)も含みます。
- 東京慈恵会医科大学附属病院
- 大阪医科大学附属病院
- 伊勢赤十字病院
- 岡山大学病院
- 関西医科大学附属病院
- 慶應義塾大学病院
- 東京医科歯科大学医学部附属病院
- 北里大学病院
- 独立行政法人国立病院機構京都医療センター
- 日本赤十字社 和歌山医療センター
となります。当然のことながら、大都市では人口も多いため、患者数も多くなります。
このサイトでは都道府県別でもランキングが出せますので、お住まいの地域に絞って検索してみてください。
手術数以外にも注目したいポイント
ランキングのもとにしているデータについて
口腔がんの手術は、歯科口腔外科でも行われています。しかし、歯科口腔外科の算定はDPCではなく、出来高払いですので、DPCに基づく統計でのランキングには、歯科口腔外科の症例の数は反映されていません。
つまり、耳鼻咽喉科や頭頸部外科としてのある程度の評価基準にはなりますが、歯科口腔外科は評価されていません。また、両方を網羅したランキングはほとんど見かけません。
手術で噛み合わせが変わるかどうか
では、同じ症例で歯科口腔外科と耳鼻咽喉科で手術する場合に何が違うのか。
その違いが出るのは「噛み合わせ」が問題となる場合です。手術であごの骨も切除しなければならず、歯が何本かなくなる場合、術後の噛み合わせを念頭においた治療方針を立て、そこにこだわりを持って治療をするかどうか、という違いが出てきます。
がんを切除した後で、残った骨や移植した骨にインプラントを入れて、入れ歯を入れることが保険診療でできるようになってきました。この部分までの治療計画が立てられるのが歯科口腔外科です。
耳鼻咽喉科が手術する場合でも、歯科口腔外科と緊密に連携している病院であれば、術後の噛み合わせも見越した治療計画を立てています。
診療科のホームページから情報を検索する
ランキング上位の病院でも、担当する先生がどこまで口腔がんの治療を専門的にしているかもある程度は参考になろうかと思います。
かかりつけの歯科医院、内科から紹介される病院について、診療科のホームページを見てください。スタッフ紹介があり、そこで口腔がんを専門にしている先生の名前を、Googleで検索してみてください。その先生の今までの活動が見えてくると思います。ずっと口腔がん専門でやってきたのか、実は専門は別の領域なのか、というのも、医師と患者の間の信頼関係に重要な因子と思います。
日本口腔外科学会の指導医のいる病院を探す
歯科口腔外科の先生を探すには、日本口腔外科学会の指導医を探すことも1案です。同会のホームページで検索ができます。
病院口コミ検索Caloo・カルー | 全国の舌がんの治療実績・手術件数
病院情報局 | DPC全国統計
日本口腔外科学会 | 口腔外科指導医名簿
参照日:2020年5月