悪性リンパ腫の初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

悪性リンパ腫は、全身のどこにでも発症する可能性のある病気であり、そのため、この症状があれば悪性リンパ腫である、といった特徴的なものがありません。

無症状の場合は、健康診断やほかの病気の検査で偶然腫瘤を見つけて診断されることが多く、全身的な症状は通常病状が進行しなければ出現しません。

ただし、一部のリンパ腫は体の表面から触れることができるリンパ節から発症するため、気になるしこりがある場合は、早めに病院を受診して検査を受けましょう。

悪性リンパ腫の治療方針は、リンパ腫の細かな種類と、その病気のひろがり具合で決定されます。そのため、しこりの細胞の検査と、全身の画像検査は必須です。

ここではどのような時にリンパ腫を疑って受診すべきか、そしてリンパ腫が疑われた場合どのような検査が行われるのかについて紹介します。

目次

リンパ腫の主な初期症状

リンパ腫は全身のどの部位にも発生する可能性があります。

リンパ腫を疑う症状としてはリンパ節が大きくなる(リンパ節腫大)があります。体の表面から触れることができるリンパ節には首、腋の下、足の付け根などがあります。この部分のリンパ節から発症した場合は、いずれ体表からしこりとして触れるようになり、そのしこりはだんだんと大きくなります。

リンパ腫が胸の中やお腹の中で発生すると、初期の段階ではほとんど症状は現れません。

病気が進むと全身症状として発熱、寝汗、体重減少などが現れます。また、しこりが大きくなるとその部位での症状が現れることもあります。たとえば、背骨が圧迫されると麻痺などの神経症状が出たり、血管を圧迫すると血流障害が出るといった事が起こります。

リンパ腫の自己診断チェック

リンパ腫の症状はリンパ節がしこりとなって大きくなったことによる局所的な症状と、リンパ腫が進行した際に全身症状として現れるものがあります。

以下に記載した多くの項目に当てはまる場合は、早期の病院受診をお勧めします。

  1. 首・わきの下、そけい部にしこりをふれる
  2. だんだんと大きくなるしこりがある
  3. 体重が減ってきている
  4. 発熱が続いている
  5. 寝汗をかくようになった
  6. 検診などでしこりを指摘された

検診と検査項目

リンパ腫は特定の場所に発生する病気ではないため、リンパ腫であるかどうかを目的に検査することはとても困難です。別の言い方をすれば、何かの検査をして異常がなかったからといって、リンパ腫ではないとも断定できません。

リンパ腫の中でも体表から触れられる部分にしこりがある場合には、自分で気づいたり、医師の診察で指摘されることはありますが、リンパ腫は頻度の少ない疾患であることや、年単位で変化する進行のゆっくりしたタイプもあるので、診断の難しい病気であるといえます。

リンパ腫の疑いから確定診断まで

ファーストステップ(リンパ腫の可能性があるかどうかを見る検査)

触診

医師がリンパ節の多い首、腋の下、そけい部(太ももの付け根)を触って、しこりがないかを調べます。

血液検査

リンパ腫で必ず異常値になる検査項目はありませんが、リンパ腫の人ではLDHという項目が増加していることが多くみられます。

LDHとは尿酸脱水素酵素ともよばれ、ほとんどの細胞に含まれている酵素で、その組織や細胞が壊れるような病気で増加します。LDHはとくに肝臓に多いので、多くの病院では肝臓の検査の1つとして測定されています。

LDHは1~5に分類することができます。LDHが増加しているときはこの1~5の割合を調べるLDHアイソザイムという検査を追加すると、どの成分が多いかが判明するため、以下の特徴を踏まえてリンパ腫の可能性があるかどうか検討します。

LDH1 心臓や腎臓、赤血球に多く含まれる
LDH2 リンパ球、赤血球、心臓、腎臓、肺に多く含まれる
LDH3 リンパ球、肺に多く含まれる
LDH4 リンパ球、肺に多く含まれる
LDH5 肝臓や筋肉に多く含まれる

もう1つ、リンパ腫が疑われた際によく測定されるのはsIL-2 (可溶性IL-2レセプター)です。

これはリンパ球で産生される成分のため、リンパ球が異常増殖するリンパ腫では増加することがありますが、sIL-2が正常値のリンパ腫もあります。ですから、sIL-2 の検査はリンパ腫の診断には補助的に行なわれています。

単純CT検査

放射線を用いた検査です。頭部、頚部、胸部、腹部などの部位のしこりの有無を検査することができます。

超音波検査(エコー検査)

観察部位にゼリーを塗り、機械をあてて中の状態を見ます。

リンパ節は体中に無数に存在するので、すべてのリンパ節について検査をすることはできません。他の検査でしこりとして指摘されたり、体の表面から触れることができるリンパ節が大きくなっている場合には、超音波検査でそのリンパ節の形や中の具合を調べてリンパ腫の可能性があるかどうか判断できることもあります。

放射線を使用せず行うことができる点が利点ですが、検査を行う人の技能により検査の正確度が異なる、検査の記録が一部しかできないため客観性に劣る、といった点がデメリットとしてあります。

セカンドステップ(リンパ腫かどうか確定診断する検査)

病理検査 

リンパ腫の確定診断は、顕微鏡でその組織を調べる病理検査を行ないます。

そのため病気が疑われる部位の細胞を採取する必要があります。体の表面に近い場所に病変がある場合には局所麻酔で細胞を採取することができますが、お腹の中や頭の中などの場合は全身麻酔が必要なこともあります。

ときには取り出した細胞を特殊な方法で染めて(免疫染色)、細胞の細かな種類やどのような治療が適しているかを判断します。

サードステップ(リンパ腫のひろがり具合や病期を診断するための検査)

リンパ腫と診断されたら、治療方針を決めるために病気のひろがり具合をしらべて病期(ステージ)を決定します。

造影CT検査

単純CTでは判断できない細かな病変を見やすくするために、血管に造影剤を注入して行なう検査が造影CTです。

単純CTと同様に放射線を用いる検査です。

単純/造影MRI

磁気を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、頚部、胸部、腹部などに対して行います。

場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影MRIが行われることもあります。

PET検査

がん細胞が取り込みやすい物質に放射線物質をくっつけた検査薬を体内に注射して、その分布を調べる検査です。

全身を一度に調べることができます。糖尿病で血糖値のコントロールが不安定な人はこの検査で正しい結果が出ないことがあります。

ガリウムシンチグラフィ

リンパ腫に取り込まれやすい放射性物質を注射し、特定の部位に取り込まれているかどうかを撮影して、病期のひろがりを診断します。

超音波・CT・MRI・PET・ガリウムシンチグラフィは見やすい臓器が異なるので、同じ部位に複数の検査を行うこともあります。

検診にかかる平均費用

保険適応で受ける検査(目安)

リンパ腫を疑う症状や所見があれば、その後の検査はすべて保険診療で受けることができます。

  • 頚部エコー検査 3割負担 1050円、1割負担 350円
  • 腹部エコー検査 3割負担 1600円、1割負担 530円
  • 単純CT検査(1部位) 3割負担 4000円、1割負担 1500円
  • 造影CT検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 単純MRI検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 造影MRI検査(1部位) 3割負担 16000円、1割負担 5000円
  • 病理組織検査 3割 3030円 1割 1010円(組織採取の費用は別です)
  • PET検査 3割負担 30000円、1割負担 10000円
  • ガリウムシンチグラフィ 3割負担 15600円、1割負担 5200円

1.大分大学医学部腫瘍・血液内科学講座|悪性リンパ腫のはなし
2.愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経外科学|臨床研究「中枢神経原性悪性リンパ腫における術中迅速免疫染色の有用性に関する観察研究」の結果報告について
3.わかこうかいクリニック|検査費用のご案内

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医