悪性リンパ腫と診断を受けたら、どの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?
悪性リンパ腫は比較的患者数の少ない疾患であり、どの病院でも治療ができるわけではありません。
一般的には「血液内科」が対応していますが、血液内科がない病院では「内科」などで対応します。
また、手術の場合は「外科」が、放射線治療を行う場合には「放射線科」が担当することもあります。
悪性リンパ腫は全身どの部位にも発症する可能性がある病気で、全身を診ることができる病院でないと正しい診断は困難です。また治療に入ってからも、初回の治療で必ずしも治療が終了するとは限りません。
治療の反応を見ながら、ほかの治療方法を選択したり、放射線や手術などを組み合わせていく可能性もあります。
悪性リンパ腫の治療は経験豊富な医師に診てもらうのが理想です。さらに、病院によっては設備的に治療の方法が限られる場合もあり、その場合はそのままその病院で治療を受けるのか、転院するのかといったことも考えなければなりません。
どの病院が悪性リンパ腫の治療を行っているのかはホームページや問い合わせなどでも確認できますが、経験数を推測するデータとしては厚生労働省が発表している、病院ごとに診ている症例数の報告があります。この数が多い病院は悪性リンパ腫の患者を多く診ている可能性が高いため、ここでは悪性リンパ腫に関連した手術数や入院数を、DPCデータを基にランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。
目次
悪性リンパ腫の手術が適応となる症例
血液がんの1種であり、全身のどこにでも発生しうるリンパ腫において、手術はかならずしも治療の中心にはなりません。
リンパ腫で手術を行なう場合は以下のような場面となります。
- 細胞の種類を調べるために、しこりを切り取る場合
- ごく初期で、病気がその部分にとどまっている可能性が高い場合
- しこりの存在で困る症状がある場合、その症状の改善を目的として(腸にしこりができて通過障害が出ている場合など)
- 腫瘍の量を減らしてほかの治療の効果を高めるため
悪性リンパ腫手術数トップ10
厚生労働省はDPCデータをもとに、各病院で行われている手術件数を公表しています。
DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。
悪性リンパ腫に関連する手術のデータ
悪性リンパ腫は「ホジキン病」と「非ホジキン病」に分けられて報告されています。
令和2年度の集計データを参考にしています。
「ホジキン病」の手術症例が多い病院:数字は年間症例数
- 市立函館病院(19例)
- 石川県中央病院(18例)
- 久留米大学病院(15例)
- 琉球大学病院(13例)
- 大阪市立総合医療センター(12例)
- 栃木県立がんセンター(12例)
- 群馬県立がんセンター(12例)
- 神奈川県立がんセンター(12例)
- 医療法人菊郷会愛育病院(12例)
- 埼玉医科大学国際医療センター(11例)
- 大阪赤十字病院(11例)
「非ホジキン病」の手術症例が多い病院:数字は年間症例数
- 広島赤十字・原爆病院(484例)
- 社会医療法人 北楡会札幌北楡病院(278例)
- 姫路赤十字病院(219例)
- 学校法人近畿大学 近畿大学病院(174例)
- 京都第一赤十字病院(171例)
- 長崎大学病院(167例)
- 藤田医科大学病院(164例)
- 東京大学医学部附属病院(163例)
- 岡山私立市民病院(163例)
- 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院(162例)
手術数以外にも注目したいポイント
手術以外の入院患者数
リンパ腫は手術よりも化学療法による治療を選択することが多いため、手術なしでの入院症例数もその病院がどの程度悪性リンパ腫の患者を診ているかの参考になります。
「ホジキン病」の入院(手術なし)が多い病院:数字は年間症例数
- 愛知県厚生農業協同組合連合会 安城更生病院(59例)
- 日本海総合病院(41例)
- 大阪医科薬科大学病院(36例)
- 一般社団法人愛生会山科病院(35例)
- 社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会 中津病院(35例)
- 日本赤十字社 長崎原爆病院(31例)
- 医療法人菊郷会愛育病院(29例)
- 独立行政法人国立病院機構まつもと医療センター(29例)
- 旭川赤十字病院(29例)
- 金沢医科大学病院(28例)
「非ホジキン病」の入院(手術なし)が多い病院:数字は年間症例数
- 姫路赤十字病院(496例)
- 杏林大学医学部付属病院(476例)
- 社会医療法人 北楡会札幌北楡病院(455例)
- 公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院(442例)
- 大阪医科薬科大学病院(404例)
- 埼玉医科大学国際医療センター(388例)
- 熊本大学病院(384例)
- 長野赤十字病院(382例)
- 社会医療法人財団董仙会恵寿金沢病院(380例)
- 宮城県立がんセンター(372例)
どのような治療方法が行なえるか
悪性リンパ腫はさまざまな治療を順番に行ったり、ときには同時に行ったりする必要があるので、その病院では抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、放射線、手術、造血幹細胞移植といった治療の何かできて、何はできないのか把握しておく必要があります。(保険適応外で希望する治療が受けられない場合もあります。)
たとえば放射線設備のない病院では放射線治療を選択することはできません。もちろんその場合、放射線が最適な治療と判断されれば放射線設備のある病院に紹介してもらうこともできますが、できれば診断から治療まで同じ病院で診てもらう方が手間も少なく安心です。
通院や手術となると通いやすさやも重要ですが、悪性リンパ腫は患者数も少なく、ほかのがんと比較して治療に対応できる病院は多くはありません。
悪性リンパ腫の治療病院を選ぶときには、できれば「血液内科」や「血液腫瘍科」など、リンパ腫の治療を行う専門の部署があり、自分の疾患が放射線治療の対象であれば、それにも対応できるかといった点も確認しておくとよいでしょう。
がん診療連携拠点病院
がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制の整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。
これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。
悪性リンパ腫と診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。
治療開始までの期間
一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりにタイミングを逃すと診断や治療が遅れてしまう場合もあります。
状況によっては、ひとまず自分のリンパ腫がどのタイプか(進行の早いタイプか遅いタイプか)といった診断を早めに受け、ある程度病院を選ぶ時間があるようであれば、それから病院を選ぶのもいいでしょう。
万が一進行が早しタイプだった場合は、すぐに入院してただちに治療開始が必要なものもあるので、診断まではできる限り早く進めたほうが安心です。
1.厚生労働省|令和2年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について