リュープリンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

リュープリンという抗がん剤について、どのくらいご存知でしょうか。
乳がんや前立腺がんに用いられる抗がん剤の1つで、近年それらのがんの患者数・罹患率が共に高くなっていることもあり、現在多くの現場で用いられており、今後も需要が高まることが予想される医薬品になります。

がん細胞を攻撃する従来の抗がん剤とは作用機序が大きく異なり、また投与が長期間になることが多く、「うまく付き合っていく」ことが求められる医薬品であるため、効果・副作用・注意事項などをしっかりと把握しておく必要があります。今回はリュープリンについて詳しく解説していきましょう。,700人で、がんの中では第13位でした。また、亡くなってしまった方は約18,600人で、がんの中では第6位でした。このように胆道がんは知名度が低い割に、亡くなる方が意外と多くなっています。

目次

リュープリン(一般名:リュープロレリン)とは

リュープリンは、国内大手製薬会社の武田薬品工業株式会社が製造販売する抗がん剤で、体内で分泌されるホルモンに関与する薬剤であるため、ホルモン製剤に分類されます。
今では当たり前になったがんの内分泌療法(ホルモン療法)を国内で一般的にし、薬剤の体内分布(作用する場所・時間・量)をコントロールするDDS(ドラッグデリバリーシステム)と呼ばれる概念のもと製造された世界初の注射用徐放製剤(成分が一定速度で血中に少量ずつ放出される製剤)であるため、革新的な医薬品とされています。

元々は異なる商品名で同成分医薬品が海外で販売されていましたが、自己注射の連日投与製剤であったため国内では製品化されず、その後、注射用徐放製剤として開発が進み、本剤は1992年より販売されています。剤形は注射剤のみで、医療機関で投与が行われます。用法・用量は規格により異なっており、4週間に1回投与のもの・12週間に1回投与のもの・24週間に1回投与のものが存在します。

リュープリンが適応となるがんの種類

リュープリンはホルモン剤であるため、現在、適応となるがんの種類は、男性は前立腺がん、女性は閉経前乳がんのみで、いずれも増殖・進行に体内で分泌されるホルモンが影響するがんになります。

子宮内膜がん・卵巣がんなど、上記以外にもホルモンが影響するがんはありますが、それらがんに対する治療法でリュープリン投与以上に優先する治療法(他剤・切除等)が存在する・臨床試験をおこなっていないなどの理由から適応外となっており、今後も適応となる可能性は低いとされています。

また、閉経後乳がんの進行にも閉経前乳がんと同じホルモンが影響していますが、ホルモンが作られる場所が閉経前と後で異なっており、本剤は閉経後のホルモン生成過程に作用しないため効果がなく、適応外となります。

リュープリンに期待される治療効果

作用機序・効果効能

前立腺・乳房の生理作用は、それぞれ“性ホルモン”であるテストステロン(男性ホルモンの1種)・エストラジオール(女性ホルモンの1種)の作用によって維持されており、前立腺がん・乳がんのがん細胞もそれら性ホルモンの影響を受けて増殖していきます。

リュープリンは、脳下垂体にある性ホルモン分泌に関わる受容体に結びつき、間接的にテストステロン・エストラジオールの分泌を抑える作用があり、性ホルモンに依存するがん細胞の増殖を抑える効果が期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

臨床試験は、適応となるそれぞれのがん患者を対象に行われています。

前立腺がん患者を対象に行われた4週に1回のリュープリン単剤投与による臨床試験では、開始から12週時点での奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)は53.9%(55例/102例)となっており、さらに、その後投与継続された患者を対象に行われた最大3年半の長期投与試験でも、奏効率51.7%(15例/29例)と高い数値を維持しています。

閉経前乳がん患者を対象に行われた4週に1回のリュープリン単剤投与による臨床試験では、開始から12週時点での奏効率は30.4%(14例/46例)となっており、さらに同対象に引き続き投与継続(期間不明)した場合には、奏効率が37.0%(17例/46例)まで上昇しています。

抗がん剤の評価の基準として、奏効率20%以上の場合に効果があるとされており、特に前立腺がんに対しては非常に効果が高いことになります。

主な副作用と発現時期

リュープリンは、抗がん剤の代名詞ともいえる吐き気・倦怠感・脱毛といった副作用は極めて少ない薬剤になります。発現する副作用はホルモン製剤ならではのものになりますが、症状は軽度で、発現率も低いものが多く、副作用が治療効果に影響することはほとんどありません。

主な副作用症状

市販後の使用実績調査も適応となるそれぞれのがん患者を対象に行われており、副作用発現率は、前立腺がん患者対象では10.3%、閉経前乳がん患者対象では11.6%になります。

主なものに、男性では勃起障害・女性化乳房・睾丸萎縮、女性では性欲減退・情緒不安定、男女共通で熱感・ほてり・のぼせ・肩こり・頭痛・不眠・めまい・発汗などの症状がみられます。

また、関節痛・筋肉痛・皮膚乾燥・脱毛・多毛・爪の異常・記憶力低下・集中力低下・知覚障害・味覚障害・うつ症状・発疹・黄疸・吐き気・食欲不振・下痢・便秘・口内炎・血圧上昇・頻尿・排尿障害・体重減少なども発現率5%未満で報告されています。

ほとんどが性ホルモンの急激な低下によるホルモンバランスの悪化が原因とされているため、投与開始直後または投与量の増加時が特に発現率が高くなりますが、時間の経過と共に体が慣れてくるため、症状は軽快していく場合が多くなります。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、間質性肺炎・アナフィラキシー・肝機能障害(AST・ALT上昇)・糖尿病の発症または増悪・下垂体卒中・心筋梗塞・脳梗塞・静脈血栓症・肺塞栓症・心不全などが報告されています。いずれも発現率は0.1%未満と高くはありませんが、検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化する恐れもあるため、経過観察を十分に行う必要があります。

リュープリンの安全性と使用上の注意

安全性

リュープリンは、非常に安全性の高い薬剤になります。臨床の場においても、がん治療の初期から後期と幅広い投与が可能であり、リスク管理も少なく使用しやすいとして評価も高くなっています。副作用の少なさに加えて、本剤の特徴でもある注射用徐放製剤により投与頻度が少なく済むことも、肉体的負担が少ない理由になります。

使用上の注意(投与・併用)

本剤及び同作用機序を有する製剤に対し過敏症の既往歴がある方・妊婦及び妊娠の可能性がある方・診断のつかない異常性器出血のある方への投与は禁止されています。また、粘膜下筋腫のある方・腎機能障害を有する方への投与は、副作用リスクを高めるとして慎重投与とされています。

併用に注意が必要な薬剤は、エストラジオール製剤・ステロイド製剤などの性ホルモンを増加させる薬剤になります。本剤が性ホルモンの分泌を低下させることで効果を発揮するため、作用効果が減弱する恐れがあるためです。

まとめ

リュープリンは、従来の抗がん剤のように、がん細胞を死滅させるといった高い抗がん作用が期待できるわけではなく、薬剤の位置づけはあくまでも進行抑制・再発防止ですが、それを上回る有効性が証明されており、他の抗がん剤との併用も可能であるため、第一選択薬としても補助薬としても活躍できます。また副作用が少なく負担が少ないこともあり、延命やQOL(生活の質)の維持なども重要視している抗がん剤治療においては非常に優秀な薬剤と言えます。

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/annual.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AC%E3%83%AA%E3%83%B3
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2499407D1031_1_06/

コダニカズヤ