ゴナックスが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

ゴナックスは「前立腺がん」に適応を持つ抗がん剤です。

前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けて増殖する事が分かっており、ホルモンの分泌を抑える「ホルモン療法」が非常に有効であるとされています。

ゴナックスは脳の下垂体に働きかけホルモン分泌を抑えるという作用をもつ薬剤で、さらに、従来皮下注射により4週(1ヶ月)間隔で投与が必要でしたが、2019年1月に12週(3ヶ月)間隔での投与方法が承認され、投与回数減少による患者さんの心理的負担が軽減できるとして期待される薬剤でもあります。

更に、ホルモン療法は化学療法で用いられる薬剤の中では副作用の頻度が低く、患者さんにとって身体的負担も低い薬剤です。一方で、ホルモンに作用する為、治療中はほてりやホットフラッシュ、性欲減退、勃起不全(ED)といった特徴的な副作用も報告されており、ゴナックスでも同様の副作用が確認されています。

このページでは、抗がん剤「ゴナックス」について詳しく解説していきますので、治療を検討されている方はぜひご覧ください。

目次

ゴナックス(一般名:デガレリクス)とは

ゴナックスは米国で開発がスタートした抗がん剤で、現在83か国の国と地域で承認され広く使用されています。
日本においては2012年に承認されており、2019年に承認となった3か月間隔の投与方法については日本でのみ承認されている用法・用量となります。

ゴナックスが適応となるがんの種類

ゴナックスは「前立腺がん」に適応を持つ抗がん剤で、皮下注射により治療が行われます。
初回投与量と2回目以降の維持投与量が異なり、また投与間隔も患者さん毎に異なるため注意が必要です。

初回投与:240mgを120mgずつ腹部2か所に皮下注射にて投与します。

2回目以降4週間間隔で治療を行う場合:初回投与から4週後に80mgを腹部1か所に皮下注射にて投与し、これを繰り返します。

2回目以降12週間間隔で治療を行う場合:初回投与から4週後に480mgを240mgずつ腹部2か所に皮下注射にて投与し、これを繰り返します。

※腹部への注射部位は毎回変更する必要があります。

なお、注射部位周辺はベルト等での圧迫、もむなどの行為は避けなければなりません。

ゴナックスに期待される治療効果

ゴナックスは、「ホルモン剤」というグループに属する抗がん剤です。

ホルモン剤を用いて前立腺がんの治療を行う「ホルモン療法」には、脳の下垂体に働きかけてホルモンの分泌を抑える方法と、ホルモンが前立腺の細胞に働きかけるのを防ぐ方法の2つの治療方法があります。

ゴナックスは、脳の下垂体に働きかける事で精巣におけるホルモン分泌を抑える作用を持っており、同じ作用を示す薬剤は他に「リュープリン」や「ゾラデックス」といった薬剤があります。それぞれの有効性については同等とされていますが、ゴナックスは3か月間隔で治療を行うことが出来る点が他の薬剤と大きく異なる特徴です。

ゴナックスの治療効果を示す「去勢率」は以下の通りです。

「去勢率」とは男性ホルモンの値が抑制されている患者さんの割合です。

4週間間隔で治療を行った場合(国内臨床試験)
去勢率:94.9%
12週間隔で治療を行った場合(国内臨床試験)
去勢率:95.1%

主な副作用と発現時期

ゴナックスはホルモン剤であるため、化学療法剤であらわれるような骨髄障害や脱毛などの重い副作用が少ないことが特徴ですが、ホルモンの分泌を抑えるという作用からホルモン剤に特徴的な副作用が現れます。

主な副作用

4週間間隔で投与する場合(273例を対象とした国内臨床試験)

  • 注射部位疼痛:34.4%
  • 注射部位硬結33.7%
  • 注射部位紅斑:32.2%
  • ほてり:27.8%
  • 体重増加:15.4%
  • 発熱:11.7%
  • 注射部位腫脹:11.0%

12週間隔で投与する場合(117例を対象とした国内臨床試験)

  • 注射部位疼痛:76.9%
  • 注射部位硬結:73.5%
  • 注射部位紅斑:71.8%
  • 注射部位腫脹:28.2%
  • ほてり:25.6%
  • 注射部位そう痒感:18.8%
  • 発熱:17.1%
  • 体重増加:14.5%
  • 倦怠感:10.3%

これら副作用の発現時期は患者さんによって異なり、投与初期に現れる方や投与から1年以上経過してから現れる方もいますので投与中は常にご自身の変化に注意が必要です。

また、患者さんによって副作用の重さも異なりますので、ご家族など身近な方にも必要に応じてサポートしてもらいながら生活することをおすすめします。

他にも男性ホルモンの分泌抑制作用によりまれに性欲減退や勃起不全(ED)といった副作用も報告されています。ゴナックスでは頻度5%未満の発現率であるとされており、頻度の高い副作用ではありません。また、これらの症状は通常1年以内に起きるとされており、ホルモン治療が完了すると改善する事が分かっています。ゴナックス治療中にご自身の症状に変化を感じる場合は、ED改善薬などで効果が見られる事もありますので医師に相談しましょう。

ゴナックスの安全性と使用上の注意

ゴナックスを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。

治療出来ない患者さん

・ゴナックスの成分について過敏症の既往歴をお持ちの患者さん

重要な基本的注意

・ゴナックスはホルモン療法剤であり、がんに対する薬物療法について十分な知識と経験を持つ医師のもとで処方されます。

使用上の注意

  • 間質性肺疾患又はその既往をお持ちの患者さん:間質性肺疾患が現れる、または悪化する可能性があります。
  • 4週間間隔と12週間間隔の投与を切り替えた場合の有効性や安全性は確立していません。
  • 小児の患者さんへの投与:低出生体重児や新生児、乳児、幼児、小児に対しては使用経験がないため安全性が確立していません。

前立腺がんは比較的抗がん剤の効果が高く、副作用も少ないため長く治療を続ける事が出来るとされていますので、今回解説したゴナックスにおいて新たに開発された3ヶ月間隔の投与方法は、患者さんやご家族にとって生活の質の向上につながる選択肢となるでしょう。

有効性と簡便性を持ち備えたゴナックスですが、一方で骨の形成に不可欠な男性ホルモンの分泌を抑えるため、骨密度が下がり「骨粗しょう症」になるリスクがあるとされていますので、使用する場合は定期的に骨密度を測定するなどの対策が必要となります。

更に長く治療を行う事が出来るように、定期的な検査を行うようにしましょう。

これからゴナックスの治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとたってもこの記事が参考になれば幸いです。

ゴナックス添付文書 http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/800126_2499412D3027_1_06#CONTRAINDICATIONS
ゴナックスインタビューフォーム
http://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/800126_2499412D3027_1_006_1F.pdf
NCCNガイドライン 前立腺がん
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/800126_2499412D3027_1_06#CONTRAINDICATIONS

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薬剤師

将来に迷っていた高校生の頃に身内が数人がんで亡くなる経験をしたことで、延命ではなく治癒できる抗がん剤を開発したいと考えるようになり、薬剤師を目指しました。
大学卒業後は製薬メーカーに薬剤師として勤務し、抗がん剤などの薬剤開発に約18年携わって参りました。
現在は、子育てをしながら医療系の執筆を中心に活動しており、今までの経験を生かして薬剤の正しい、新しい情報が患者様に届くように執筆しております

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