デキサメタゾンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

デキサメタゾンとは、癌だけではなくリウマチや喘息・アレルギーや皮膚疾患など多くの治療で使われる薬です。また様々な作用がある中、抗がん剤の副作用である吐き気止めの作用を強くしたり、血液系のがんに使われることもあるステロイド系抗炎症薬の一つです。

ステロイドは副作用が多いのではないか?他のステロイドとは何が違うのか?など疑問をもたれる方も少なくありません。
このページではデキサメタゾンについて主な作用など詳しくご紹介しますので、参考にしていただければと思います。

目次

デキサメタゾン(商品名:デカドロン/レナデックス)とは

デキサメタゾン(商品名:デカドロン/レナデックス)とは人工的に合成された糖質コルチコイドホルモンで、ステロイド系抗炎症薬の一つです。炎症やアレルギー症状を改善する作用や、免疫反応を抑える作用など様々な働きがあります。

1958年にアメリカで合成され萬有製薬によって販売されていましたが、2010年11月に日医工に製造販売の承認が渡されました。また他のステロイドと比べて作用時間が長く効き目も強い薬です。

デキサメタゾンが適応となるがんの種類

デキサメタゾンは注射や点滴による投与と、錠剤などを服用する経口投与があります。

デキサメタゾンが適応となるがんの種類としては

  • 悪性リンパ腫(悪性組織球症、菌状息肉症、細網肉腫症、ホジキン病、リンパ芽球性リンパ腫)
  • 白血病(急性白血病、慢性骨髄性白血病の急性転化、慢性リンパ性白血病)
  • 前立腺がん(他の療法が無効な場合)
  • 乳がんの再発転移
  • 多発性骨髄腫
  • 好酸性肉芽腫

がん治療において治療薬としてだけではなく、抗がん剤による吐き気を抑えたり食欲を増進させたりするために使用することもあります。また適応の範囲が広いために臨床実績は行っておりません。

デキサメタゾンに期待される治療効果

デキサメタゾンの基となっている糖質コルチコイドホルモン(コルチゾール)には様々な作用があり、糖の代謝・タンパク質代謝・脂質代謝・骨の代謝などの反応に関与しています。コルチゾールの主な作用は抗炎症作用・免疫抑制作用・細胞増殖抑制作用・血管収縮作用などがあります。

デキサメタゾンはコルチゾールとほとんど同じような作用があるので内分泌疾患やリウマチなどの自己免疫疾患、気管支喘息などのアレルギー性疾患、白血病などの血液疾患などに使用されます。

抗がん剤作用としてはステロイドが白血球に対してアポトーシス(細胞死)を引き起こすため、白血病や悪性リンパ腫などの血液系のがんに使用されます。デキサメタゾン単独で使用することもありますが、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ボルテゾミブ、レナリドミドなどの抗がん剤とも一緒に使われます。

主な副作用

デキサメタゾンは効き目が長く強い分、多くの副作用があらわれる可能性があります。場合によっては副作用を抑えるために抗生物質や胃薬などを一緒に使うこともあります。副作用の頻度は調査が行われていないため不明ですが、次のような症例が現れることがあります。

誘発感染症・感染症の憎悪
ステロイドは免疫を抑えるはたらきがあるため、感染症にかかりやすくなります。またB型肝炎ウイルスの増殖による肝炎が現れることがあります。
続発性副腎皮質機能不全・糖尿病
肝臓や筋肉での糖を合成する働きを高めるため血糖が上がります。
消化性潰瘍・消化管穿孔・膵炎
胃粘膜保護作用(ムチン)を減少させるため、消化性潰瘍ができやすくなります。
精神変調・うつ状態・痙攣
中枢神経系に影響し、精神疾患が悪化することがあります。
骨粗しょう症・大腿骨及び上腕骨などの骨頭無菌性壊死、ミオパシー、脊椎圧迫骨折、長骨の病的骨折
腸管からのカルシウム吸収を抑えることにより、骨折や骨粗しょう症が起こりやすくなります。また筋肉のタンパク質を分解するので、筋力が低下(ミオパシー)することがあります。
緑内障・後嚢白内障
タンパク異化作用により白内障が進行したり、眼圧が上昇することで緑内障が悪化することがあります。

デキサメタゾンの安全性と使用上の注意

安全性

デキサメタゾンを含む化学療法は緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで適切と判断される症例についてのみ使用されることとなっています。

使用上の注意

デキサメタゾンに対し過敏症の既往歴がある場合は投与しないこととなっています。

また、有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者、消化性潰瘍、精神病、結核性疾患、単純疱疹性角膜炎、後嚢白内障、緑内障、高血圧症、電解質異常、血栓、最近行った内臓の手術跡のある患者、急性心筋梗塞を起こした患者、コントロール不良の糖尿病の患者には投与しないことが原則ですが、特に必要とする場合には慎重投与となっています。

  1. この薬を服用後、急に使用を中止すると体内のステロイドの量が急激に減少してしまい、発熱や頭痛・食欲不振・脱力感・筋肉痛・関節痛・ショックなどの離脱症状が現れることがあるので中止する場合は少しずつ量を減らします。医師の指示通りに服用してください。
  2. 長期または大量投与、または投与中止してから6か月以内の場合、免疫機能が低下していることがあるので、生ワクチンまたは弱毒生ワクチン(麻疹“はしか”、風疹、おたふく風邪、水痘“水ぼうそう”、BCG、ポリオなど)の接種を避けてください。ワクチン由来の感染を増強させる恐れがあります。
  3. 水ぼうそうまたは麻疹にかかると重症化することがあるので注意してください。予防接種を受けたことのある場合でも発症する可能性があります。
  4. 飲み忘れた場合は、気が付いたときに1回分を飲んでください。次に飲む時間が近い場合は飲み忘れた分は飲まないで1回分を飛ばし、次に飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。
  5. 母乳中に移行することがありますので、服用中は授乳を避けてください。

併用に注意すべき薬剤

デキサメタゾン自体の作用を増減したり併用した薬の作用を増減する可能性があるため、以下の薬剤は併用注意となっています。

  • バルビツール酸誘導体(フェノバルビタール・リファンピシン・カルバマゼピン)
  • フェニトイン
  • サリチル酸誘導体(アスピリン)
  • 経口糖尿病用材剤(アセトヘキサミド・インスリン製剤)
  • 抗凝血剤(ワルファリンカリウム)
  • 血圧降下剤
  • 利尿剤(トリクロルメチアジド・フロセミド)
  • シクロスポリン
  • マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン)
  • アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール)
  • HIVプロテアーゼ阻害剤
  • エフェドリン
  • サリドマイド

デキサメタゾンは副作用も多い薬ですが臨床ではよく使われ、様々な効果も期待できる薬です。

指示通り正しく服用し、薬や病気について正しい知識を得て治療と向き合うことが大切です。

「抗がん剤のすべてがわかる本」 矢沢サイエンスオフィス 編 (Gakken)デカドロン錠0.5mg/4mg 添付文書 2018年6月改訂 日医工株式会社
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2454002F1183_3_08/?view=frame&style=SGML&lang=ja
ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/デキサメタゾン
日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82c3.html

保田 菜々子