CYFRAの数値が高い原因と対策

腫瘍マーカーのCYFRAの数値が高かった場合には、「自分は何の病気なのだろうか?」と不安に感じる事があると思います。

CYFRAは肺がんの腫瘍マーカーとして活用されることが多いですが、他のがんや、検査の試薬との相性が悪いせいで上昇することもあります。

本ページではCYFRAの数値が上昇する原因とその対策についてご紹介します。

CYFRAの数値が高かった場合には医療機関を受診し、精密検査を受けるようにしてください。

目次

CYFRAとは

CYFRAは主に肺がんが疑われる際に測定される腫瘍マーカーです。

腫瘍マーカーとは、体内にがんがある場合に血液中で増加する物質のことで、特定のがんで上昇するものとさまざまながんで上昇するものがあります。

一般的に腫瘍マーカーはがんの早期発見は不得意で、ある程度がんが進行してから上昇します。ですから、治療の効果が出ているかどうか、がんが再発していないかどうかを長期的に観察するのに有用です。

一方CYFRAは特に肺の扁平上皮癌の場合には早期から上昇し始めるため、[su_highlight background=”#f4fe2c”]他の腫瘍マーカーに比べるとがんの早期発見にも有用[/su_highlight]であるといえます。

基準値について

CYFRAの基準値は3.5ng/ml以下を採用している施設が多いです。

しかし、測定方法や受診する医療機関により、異なる基準値を採用しているケースがあります。自身が受診している医療機関の基準値が3.5ng/ml以外の場合は、その基準値に比べて高値になっているかどうかを確かめましょう。

CYFRAが高くなる原因

肺がん

肺がんは、肺を構成している細胞のうち、どの細胞ががん化するかによって次の4つに分類されます。

  • 扁平上皮がん
  • 腺がん
  • 大細胞がん
  • 小細胞がん

CYFRAはこの中の扁平上皮癌、腺がん、大細胞がんを検出するのに有用で、特に扁平上皮癌では早期から検出されることが多いです。扁平上皮癌は喫煙との関係が特に大きいとされています。症状としては、早期は無症状ですが、進行とともに咳や痰、血痰、発熱、呼吸困難、胸の痛みなどが現れます。

卵巣がん

卵巣がんは初期症状が乏しい一方、死亡率が高い病気です。

症状が現れたとしてもお腹の張り、食欲減退、便秘、頻尿、腹痛や腰痛など「ちょっと体調が悪いかな?」と感じる程度で、症状だけでは卵巣がんを疑うのはなかなか難しい面があります。

がんというと年齢の高い人が罹る病気というイメージがありますが、卵巣がんは閉経前後の女性とともに10~20代の女性にも発生しやすいです。

乳がん

乳がんは女性のがんで最も頻度の高いがんで、日本人女性の20人に1人は乳がんになるといわれています。30歳代後半から40歳代後半の女性と、60歳代の女性で発症することが多いです。

乳がんでは胸のしこり、乳頭や乳房の陥没、乳頭からの出血、乳房全体が赤く腫れるなど、患者さんが自分で胸の変化を感じることで発見されることもあります。早期に発見できれば他のがんに比べてよい経過をたどるケースが多いです。その一方、全身に転移しやすいため乳房のみならず全身を対象にした化学療法を行わざるを得ないという悪い面もあります。

胃がん

胃がんは女性に比べて男性に多いがんの種類です。胃がんも初期症状がわかりにくく、症状に気付いた時にはすでに進行しているケースが多くみられます。症状は胃の痛みや不快感、食欲の減少、胸やけなどです。

胃がんになる原因は喫煙や塩分過多なども考えられていますが、特に大きな原因となるのはヘリコバクター・ピロリという細菌への感染です。通常胃は強い酸性になっているため、細菌は住み着くことができません。しかしヘリコバクター・ピロリは自分の周りをアルカリ性にする酵素を持っているため、胃の酸を中和して胃の中に住み着きます。胃の中に住み着いたヘリコバクター・ピロリは炎症や胃潰瘍、胃がんの発生にかかわっていると考えられています。

検査の非特異反応

通常、腫瘍マーカーの検査では、目的の腫瘍マーカーにのみ反応するような検査の試薬が用いられます。しかし、ごくまれに患者さんの血液の他の成分と検査の試薬の成分が誤って反応してしまい、実際には腫瘍マーカーが増加していないにもかかわらずあたかも増加しているような結果になることがあるのです。

これを検査の非特異反応と言います。非特異反応によって検査結果が上昇している場合にはがんが体内にあるわけではありません。

CYFRAを下げる方法は?

CYFRAが上昇している原因が検査の非特異反応によるものであれば、試薬の種類を変更することによって正しい検査結果を得られます。これは患者さん自身になにかしてもらうというのではなく、医療機関側が適した試薬を選択することが必要になります。

それ以外の原因でCYFRAが高値に合っている場合は、原因になっているがんを排除しなければCYFRAを下げるのは難しいです。ですから、生活習慣を改善させることでCYFRAを減少させるというのはほとんど期待できません。

いずれにせよ、下げるようにするというよりも、高値であったときに、がんが存在しないかどうかを調べることが大事です。

CYFRAが基準値以上だった時の対策

他の項目の血液検査やCYFRAの再検査

CYFRAが高値の場合にはほかの血液検査も実施することにより、体全体の状態を確認します。また、他の腫瘍マーカーの検査を組み合わせることにより、よりがんの種類の特定へとつなげます。

例えば、次のような腫瘍マーカーの検査です。

  • 肺がん…SCC(扁平上皮がん)、CEA(腺がん)、ProGRP(小細胞がん)
  • 卵巣がん…CA-125
  • 乳がん…CA-15-3
  • 胃がん…CEA、CA19-9、CA-72-4

また、CYFRAの上昇が非特異反応によるものと疑われる場合には、CYFRAの再検査も実施されます。

疑われるがんの種類によって行うべき検査が異なります。

X線検査

X線検査で臓器を観察し、がんがないかどうかを確認します。肺のX線検査では健康診断の時と同様にして胸の写真を撮影しますが、胃のX線検査ではバリウムを飲んでの検査、乳がんではマンモグラフィー検査が行われます。

CT検査

放射線を用いて体を輪切りにした画像を得る検査です。この検査によってがんや転移の有無、大きさを調べます。造影剤を用いるとより詳しく病変を把握することができます。放射線を使用するため被ばくは免れませんが、1回のCT検査で命に関わるような被ばく量にはなりません。

MRI検査

磁力を用いて体を輪切りにした画像を得る検査です。CT検査同様、がんや転移の有無、大きさを調べることができ、造影剤を使用することもあります。放射線を使用しないため被爆の心配はありませんが、体内に金属がある場合にはMRI検査を受けることができません。

エコー検査

乳がんや卵巣がんを疑う場合では、超音波を用いたエコー検査も有用です。乳房の検査の際は胸に機械を当て、卵巣の検査の場合は膣から機械を入れることでそれぞれの臓器を観察します。エコー検査は妊娠時に赤ちゃんを観察するのと同じ方法で行われる検査のため、体への影響の心配はなく、体内に金属があっても実施できる検査です。

内視鏡検査

胃がんを疑う場合は、内視鏡(いわゆる胃カメラ)の検査で胃に病変がないかを調べます。

内視鏡検査ではただ観察するだけでなく、病変の一部の組織や細胞を採取して、次に紹介する細胞診・組織審の検査につなげることもできます。

細胞診・組織診

がんが疑われる臓器から細胞や組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する検査です。採取は注射器で行う場合もあれば、体の一部を切開したり、手術の際に採取したりすることもあります。肺がんを疑う場合は痰を、乳がんを疑う場合で乳房から分泌液がある場合はその分泌液を採取して検査を行うこともできます。

学習研究社 エビデンスに基づく検査データ活用マニュアル メディックメディア 病気が見える9婦人科・乳腺外科
国立がん研究センターがん情報サービス | 胃がん
国立がん研究センターがん情報サービス | 肺がん
国立がん研究センターがん情報サービス | 乳がん
SRL総合検査案内 | シフラ(CYFRA) (サイトケラチン19フラグメント)
BML | 検査案内シフラ(サイトケラチン19フラグメント)
参照日:2019年7月

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医・臨床遺伝専門医・日本癌学会 会員/評議員・アメリカ癌治療学会 会員・ヨーロッパ癌治療学会 会員

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

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