CEAの数値が高い原因と対策

CEAは腫瘍マーカーの一種で、数値が高い場合には体の中にがんが存在する可能性があります。

どの臓器でがんが発生しているかについてはCEAの検査だけでは特定が難しく、また、喫煙や加齢、検査の試薬との相性によって高値になることもあるため、他の検査結果も見て総合的に判断することが大切です。

今回は、CEAについて詳しく解説します。

CEAが高値だった場合には追加でどんな検査が必要なのか、セルフケアで数値を下げることができるのかについても解説していますので、参考にしてください。

目次

CEAとは

CEAは腫瘍マーカーの一種で、上昇した時には全身のどこかにがんがある可能性を示す検査項目です。

様々ながんが原因で上昇するため、CEAの検査だけでは全身のどこにがんが出来ているかの特定は困難となります。

その一方、「体の中に何らかの癌があるかどうか」を調べるには効率がよく、測定される機会の多い腫瘍マーカーでもあります。

CEAが高値の場合は他の検査結果を組み合わせて考えることでがんを特定することが重要です。

また、CEAはがん発見の目的だけではなく、治療によってがんが縮小・根治したかどうかの判定や、治療後の経過観察にも用いられます。

その一方、CEAは健康な人であっても上皮細胞(皮膚や消化管などの表面を覆う細胞)に存在しているため、がん以外の病気であっても炎症が起これば上昇することがあります。

また、生活習慣や年齢によっても数値は変動します。

基準値について

現在、多くの医療機関では基準値が5.0ng/mlが用いられています。

しかし、CEAの基準値は全国的に統一されていないため、受診する医療機関によっては異なる基準値を採用しているケースがあります。

CEAの検査を受けた場合には、その医療機関での基準値を確認し、その基準値に比べてあなたの検査結果がどうだったかを確かめることが大切です。

CEAが高くなる原因

CEAが高値になる原因は、多くはがんによるものです。

その一方、がん以外の病気や生活習慣、検査の試薬との相性によって上昇する場合もあるため、高値だからと言って必ずしもがんがあるとは言い切れません。

全身のがん

CEAは次のがんで上昇します。

  • 大腸がん
  • 膵臓がん
  • 胃がん
  • 胆道がん
  • 肝臓がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 乳がん
  • 甲状腺がん
  • 卵巣がん
  • 子宮がん
  • 膀胱がん
  • 前立腺がん

このように多くのがんで上昇するため、「CEAが上昇したから○○がん」と特定するのは非常に困難で、他の追加検査が必須となります。

慢性肝炎、肝硬変

肝臓で6ヶ月以上炎症が起きている場合には、CEAが上昇することがあります。

慢性肝炎の原因の大部分はB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの感染によるものです。

肝臓での炎症が長引くと、肝臓ではゴツゴツと硬い状態になります。

この状態が肝硬変です。

慢性肝炎や肝硬変になると肝臓の正常な細胞が少なくなり、エネルギーの代謝や毒素の解毒の効率が悪くなります。

しかし自覚症状はほとんどみられず、知らぬ間に進行することが多い病気です。

慢性膵炎

膵臓での炎症が6ヶ月以上継続したものを慢性膵炎といいます。

症状としては長引く腹痛や、腹部を押したときに痛みを感じるというものです。

膵臓の炎症が継続すると徐々に膵臓の組織が破壊され、膵臓の役割である消化液を出す働きや血糖値をコントロールする働きが失われてしまいます。

アルコールが原因で発症することが多い病気です。

肺結核

結核に感染することが原因でCEAが上昇するケースもあります。

結核というと昔の病気というイメージがありますが、平成29年の1年間では、新たに1万6789人が結核と診断されています。

空気中に漂う結核菌を吸い込むことで感染するので、感染症の中では感染拡大しやすい病気です。

症状は2週間以上続くせき、微熱、寝汗、倦怠感などです。

炎症性腸疾患

CEAは大腸にもわずかに存在する物質なので、大腸で炎症が起こるとCEAも上昇します。

繰り返す下痢や血便、腹痛などが主な症状です。

感染症や薬剤など、原因がはっきりしたものもあれば、原因不明のものもあります。

甲状腺機能低下症

甲状腺とは、のどにある蝶のような形をした臓器です。

この臓器では私たちの体の代謝に関わる甲状腺ホルモンを分泌しています。

甲状腺機能低下症ではこのホルモンの分泌が減少するため代謝が低下し、次のような症状が現れます。

  • 寒がり
  • 体重増加
  • 無気力
  • 食欲低下
  • 心臓の動きがゆっくりになる

喫煙

たばこを吸う人ではCEAが高くなる傾向があります。

この場合はCEAの上昇がわずかで、全身を調べても特に病気が見つかりません。

加齢

年齢を重ねることでもCEAは上昇します。

この場合も喫煙同様、CEAの上昇はわずかで、病気は見つかりません。

検査の非特異反応

CEAの検査では、患者さんの血液と検査に使う試薬を混ぜて検査を行います。

患者さんによってはこの検査の試薬との相性が悪く、本当はCEAが血液中に存在しないのに、あたかも存在しているかのような検査結果になることがあります。

この現象を「検査の非特異反応」と言います。

非特異反応によってCEAが高値になった場合は実際には血液中にCEAは存在しないので、何か病気が隠れているわけではありません。

CEAを下げる方法は?

喫煙によってCEAが上昇している場合には、禁煙を1~2ヶ月することで低下する可能性があります。

喫煙をしていると、CEAの上昇が喫煙によるものなのか病気によるものなのかの判断が難しくなりますので、禁煙するのがおすすめです。

ただし、禁煙してもすべての人でCEAの値が改善するわけではないので、この点は頭においてくださいね。

他のCEAが上昇する原因は病気や加齢によるものなので、生活習慣によって改善させることはできません。

ですから、CEAが高値になっている原因を詳しく調べることが大切です。

CEAが基準値以上だった時の対策

CEAが高値だった場合には、全身を調べてがんや他の病気が隠れていないか調べる必要があります。いずれにせよ、下げるようにするというよりも、高値であったときに、がんが存在しないかどうかを調べることが大事です。

主に次のような検査が追加で行われます。疑われるがんの種類によって行うべき検査が異なります。

CEAの再検査

CEAが上昇している原因が喫煙や検査の非特異反応の可能性がある場合は、CEAの再検査が行われることが多いです。

喫煙が原因と考えられる場合には、禁煙をしてからの再検査になります。

検査の非特異反応が考えられる場合には、検査室で検査に使う試薬を別なものに変えて検査を行います。

他の項目の血液検査

CEA以外の項目についても血液検査が行われます。

健康診断でも検査されるようなAST、ALTなどの項目をはじめ、他の腫瘍マーカーなどを調べます。

この検査によって全身状態の確認と病気が起きている臓器の予測を立てることが可能です。

特に他の腫瘍マーカーの検査では次のような病気の予測に繫がります。

  • CA19-9:消化器のがん
  • AFP:肝臓がん
  • SCC:扁平上皮がん
  • CYFRA:肺がん
  • ProGRP:小細胞がん

また、慢性肝炎の可能性がある場合にはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの検査も行われます。

便潜血検査

大腸がんでは便が大腸を通過する際に、がんの表面を傷つけて出血することがあります。

そのため、便に血液が含まれているかどうかを調べる便潜血検査が有効です。

ただし、痔や月経の血液が混ざった場合でも便潜血検査は陽性になるので、検査のタイミングや結果の解釈は注意が必要です。

大腸内視鏡

お尻から内視鏡のカメラを入れて大腸を観察し、大腸がんや炎症が起きていないか直接調べる検査です。

臓器を直接見ることができるので病変が分かりやすいですが、カメラの死角になる位置に病変があると見落としの原因にもなる可能性があります。

レントゲン検査

レントゲンはCT検査に比べて被曝量が少なく、CT検査やMRI検査に比べて所要時間も短いため、比較的行いやすい検査です。

そのため、肺がんや結核が疑われる時にはまずレントゲンで確かめることが多いです。

エコー検査

体の表面に機械を当てて行う検査です。

この検査は患者さんの体に害がない超音波を当てて体の中を観察することが出来ます。

肝臓や膵臓、乳腺などの臓器を見るのに適しています。

CT検査

大きな機械の中に入って放射線を当てることで患者さんの体を輪切りにした写真を撮影します。

CT検査の前に造影剤という注射をして検査をすると、特にがんは見つけやすくなります。

ただし、比較的多くの放射線に被曝するので、その点は配慮が必要です。

MRI検査

大きな機械の中に入って磁力によって患者さんの体を輪切りにした写真を撮影する検査です。

放射線被ばくの心配がないため、体への悪影響が起こりにくい検査です。

ただし、強力な磁力が発生するため、体から金属をすべて外した状態で検査を受けなければなりません。

ペースメーカーや骨折の手術後のボルトなど、体の中に金属がある患者さんは受けることが出来ない検査です。

金原出版 臨床検査法提要 文光堂 人間ドック検診の実際
学習研究社 エビデンスに基づく検査データ活用マニュアル
シー・アール・シー|腫瘍マーカーのCEAが高値にでました。がん以外でも高くなりますか?
SRL総合検査案内 | 癌胎児性抗原(CEA)
日本消化器病学会ガイドライン | 慢性膵炎ガイド
厚生労働省 | 平成29年 結核登録者情報調査年報集計結果について
IBD LIFE | 潰瘍性大腸炎ってどんな病気?
一般社団法人日本衛生検査所協会
参照日:2019年7月

植村 元秀

医師 | 日本臨床腫瘍学会専門医・臨床遺伝専門医・日本癌学会 会員/評議員・アメリカ癌治療学会 会員・ヨーロッパ癌治療学会 会員

大阪府生まれ。1997年(平成9年)大阪大学医学部卒業。医師免許取得後、大阪大学や大阪労災病院の泌尿器科で務める。

2006年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで、研究を始める。ホルモン不応性の前立腺がんにおいて高発現する新規遺伝子の同定などを行い日本泌尿器科学会総会の総会賞を受賞する。

成果を一流がん専門誌に掲載、それが認められ、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に3年間、研究員として留学。
帰国後、大阪大学大学院医学部医学科で、教鞭をとりつつ研究に励む。

その後、大阪大学では、講師、准教授となり、手術などの診療のみならず、後進の指導を行うなども続ける。大阪大学での活動では大阪大学総長賞やヨーロッパなどでの学会で複数回受賞、科研を中心とした公的研究費も多くを獲得するなど、研究活動も熱心に継続。その後、さらに活動を広げるべく、名古屋大学商科大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。福島県立医科大学医学部の特任教授に招致され、後進の育成や研究の幅を広げている。

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