カソデックスが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

カソデックスは前立腺がんに適応を持つ抗がん剤で、他の抗がん剤と比較すると副作用の発現が低い「ホルモン剤」というグループに属する薬剤です。

カソデックスが発売された当初は、フィルムコーティングされていた製剤であったためお水と一緒に服用しなければなりませんでしたが、飲み込む力が低下している患者さんにとって服用がしやすいように、今はお水がなくても服用が可能な口腔内崩壊錠(OD錠)が開発され発売されています。

今回の記事では、このような抗がん剤「カソデックス」に注目して、治療ができるがんの種類やそれぞれの治療効果、また副作用についても詳しく解説していきます。

目次

カソデックス(一般名:ビカルタミド)とは

商品名カソデックスは一般名をビカルタミドと言い、英国ゼネカ社(現アストラゼネカ社)が前立腺がんに影響を及ぼす男性ホルモンの活性を抑える化合物を合成し、開発した抗がん剤です。

研究の場となった英国においては1995年に承認され、日本では1999年に承認を受け発売が開始になっており、副作用の低さや薬剤の飲みやすさなどから現在でも前立腺がんの薬物治療における中心的役割を担っています。

カソデックスが適応となるがんの種類

カソデックスは「前立腺がん」患者さんの治療に用いられる抗がん剤です。

使用方法は、フィルムコーティング錠の場合お水と一緒に1回80mgを1日1回継続して服用します。口腔内崩壊錠(OD錠)の場合はお水なしで1回80mgを1日1回継続して服用しますが、口腔内で崩壊しても口腔粘膜から吸収する事は出来ませんので、唾液で飲み込む必要があります。

適用上の注意

  • OD錠を寝たままの状態で服用する際は、お水と一緒に服用する必要があります。
  • カソデックスはPTP包装となっていますので、必ず取り出して服用するようにします。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺さり重い合併症を併発した例が報告されています。

カソデックスに期待される治療効果

カソデックスは、抗がん剤の中でも「ホルモン剤」というグループに属する薬剤です。

前立腺がんの増殖などに影響を与える男性ホルモンは、加齢とともに分泌量が変化する事が分かっており、カソデックスはその男性ホルモンの分泌を抑えることで前立腺がんに効果を示します。

カソデックスの有効性を検証した、102例の前立腺がんの日本人の患者さんを対象とした試験において、治療前より前立腺がんの縮小が確認された患者さんの割合を示した奏効率は77.5%という結果が得られています。

カソデックスの効能・効果の注意点として、投与12週後をめどとして効果が得られないと考えられる場合には、他の適切な治療方法が検討される場合があります。

主な副作用と発現時期

抗がん剤は一般的にがん細胞だけではなく正常細胞にも作用してしまうため、治療を受けるとほとんどの方で副作用があらわれてしまいます。

カソデックスはホルモン剤のため比較的副作用が少ないとされていますが、副作用が報告されていますので、事前にどんな副作用が現れるのか知っておくことが重要になります。

主な副作用

承認時及び使用成績調査で対象となった患者さんは3,927例で、そのうち副作用が報告されたのは951例(24.2%)です。

  • 乳房腫脹:3.8%(211/3,927例)
  • 乳房圧痛:4.9%(193/3,927例)
  • AST(GOT)上昇:4.1%(162/3,927例)
  • ALT(GPT)上昇:3.8%(150/3,927例)
  • Al-P上昇:3.0%(118/3,927例)
  • LDH上昇:2.3%(89/3,927例)
  • ほてり:2.2%(88/3,927例)
  • γ-GTP上昇:2.1%(84/3,927例)

これら副作用の発現時期は、投与数日から投与期間中において報告されており、患者さんによって遅い時期にあらわれる方、1日目からあらわれる方とさまざまです。

肝障害が疑われるAST(GOT)の上昇やALT(GPT)の上昇が主な副作用としてありますが、重大な副作用である劇症肝炎や肝機能障害、黄疸などに進展した例も報告されています。初期症状としては食欲不振や悪心嘔吐、全身倦怠感、発疹などが現れますので、ご自身の変化に注意しましょう。

副作用対策を早期に行うことで治療を長く続けることができ、がん細胞と戦うことが可能となりますので、治療中に異変を感じる事があれば我慢せず、主治医の先生にすぐに相談する事が大切です。

カソデックスの安全性と使用上の注意

カソデックスを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。

治療できない患者さん

  • カソデックスの成分に対して過敏症の既往歴をお持ちの患者さん:再度投与する事により過敏症の症状が再発する可能性があります。
  • 小児の患者さん:小児の患者さんに対して使用経験がなく安全性は確立していません。また、男性ホルモンを抑える作用により、男子小児の生殖器官の正常発育に影響を及ぼす恐れがあります。
  • 女性の方:カソデックスは女性に対しての使用経験がなく安全性が確立していません。動物実験において、子宮の腫瘍性変化や雄児の雌性化が報告されています。

重要な基本的注意

・海外で行われた臨床試験において、カソデックスの関連が否定できなかった心不全や心筋梗塞などの死亡例が報告されています。高齢の患者さんにおいて一般的に予期される内容ではありましたが、投与の際は慎重になる必要があります。

・カソデックスはホルモン療法となりますので、十分な知識や経験を持つ専門の医師のもとで治療が行われます。

使用上の注意

・肝障害をお持ちの患者さん:カソデックスは肝臓で代謝を受ける薬物ですので、肝障害がある場合代謝に影響し、体内の薬物濃度が高くなり副作用が強く現れる場合があります。

抗がん剤は、使用上の注意や副作用などをしっかり確認し、用法・用量を守って正しく使用する事で最大の効果を得る事が出来る薬剤です。

カソデックスは比較的副作用が低いため長く治療を行うことのできる抗がん剤ですが、重症化する可能性のある肝機能の異常が報告されていますので、肝機能検査は定期的に行う必要があります。これから治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとっても参考になれば幸いです。

カソデックス添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291009F1039_1_09/
カソデックスインタビューフォーム
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

ma2

薬剤師

将来に迷っていた高校生の頃に身内が数人がんで亡くなる経験をしたことで、延命ではなく治癒できる抗がん剤を開発したいと考えるようになり、薬剤師を目指しました。
大学卒業後は製薬メーカーに薬剤師として勤務し、抗がん剤などの薬剤開発に約18年携わって参りました。
現在は、子育てをしながら医療系の執筆を中心に活動しており、今までの経験を生かして薬剤の正しい、新しい情報が患者様に届くように執筆しております

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