CA-125は主に卵巣がんや子宮内膜症の際に高値になる腫瘍マーカーです。
しかし、これらの疾患以外にも卵巣の良性腫瘍や子宮の疾患、月経周期や妊娠などでも上昇することがあるため、高値の場合には精密検査が欠かせません。
今回はCA-125が高値になる原因と改善法、高値の場合の対策についてご紹介します。
目次
CA-125とは
CA-125は腫瘍マーカーの一種です。腫瘍マーカーとは体の中に腫瘍があることが原因で増加する物質のことをいいます。腫瘍の診断や治療の効果判定などの際に検査されることが多いです。
腫瘍マーカーの種類によりますが、腫瘍が小さいうちから上昇するというよりは、ある程度腫瘍が進行してから上昇してくることが多いのが特徴です。その一方で、体内に腫瘍がない場合でも上昇することがあります。
CA-125は特に卵巣がんで高い陽性率を示します。腫瘍がない場合でCA-125が上昇する代表的なものは子宮内膜症です。その他に、子宮や消化器などの臓器でもCA-125は産生されるため、これらの臓器で炎症や何らかの疾患がある場合にもわずかに上昇します。
CA-125の産生はエストロゲンの影響を受けるため、月経周期によっては高めの検査結果になる場合もあります。また、妊娠初期にも上昇し、妊娠の継続にともなって徐々に下降します。
基準値について
基準値は一般的に35U/ml以下を用いることが多いです。閉経すると体内のCA-125が減少するため、閉経女性では10~15U/mlくらいが基準値とされています。しかし全国的に統一されていないため、検査を受ける医療機関によっては異なる基準値を採用している場合もあります。その場合は医療機関で採用している基準値を目安に検査結果を見てください。
CA-125が高くなる原因
卵巣がん
CA-125は卵巣がんの70~80%で陽性になります。
卵巣がんは卵巣から発生する悪性の腫瘍のことで、症状は次のようなものがあります。
- お腹が張る
- 食欲不振
- 便秘
- 頻尿
- 腹痛
- 腰痛
- ホルモンの過剰分泌(高齢なのに若返ったり、若い女性なのに男性化したりする)
卵巣がんは初期には自覚症状があまりないにも関わらず死亡率が高いため、「サイレントキラー」とも呼ばれます。一口に卵巣がんと言っても、卵巣のどの部位ががん化しているのかによって治療法や発症しやすい年齢は変わります。
40~60歳代の閉経前後や、意外にも10~20歳代の若い女性で発生しやすいです。
子宮内膜症
子宮内膜とは、月経の際に剥がれ落ちる子宮の部位のことです。
本来、子宮の内側の空洞部分にのみ存在しますが、何らかの原因で体の他の場所に子宮内膜が生じることを子宮内膜症といいます。エストロゲンの分泌が盛んな20~40歳代の女性に発症しやすく、月経を重ねるたびに悪化していきます。
一方、閉経するとエストロゲンの分泌が減少するため、発症しにくくなり、それ以上の進行も緩やかになります。症状は月経痛、慢性骨盤痛、性交痛、排便通、不妊などがあります。
良性の卵巣腫瘍
CA-125は普段から卵巣で産生されているため、卵巣で良性の腫瘍が発生した場合にも高値になります。良性の卵巣腫瘍の主な症状は卵巣がんと同様ですが、良性の場合には茎捻転という状態にならないように注意する必要があります。
茎捻転とは、卵巣と子宮をつなぐ固有卵巣索という部分が捻じれることです。卵巣は固有卵巣索で子宮と繫がり、ぶら下がった状態でお腹の中で存在します。卵巣に腫瘍があると、卵巣の重みでこの固有卵巣索が捻じれてしまうことがあるのです。茎捻転になると卵巣への血流が妨げられるため、卵巣がうっ血し、壊死する可能性があります。
卵巣がんでは周囲に癒着しやすいため捻じれにくいのですが、良性の場合は癒着がなく捻じれやすいのが特徴です。
子宮腺筋症
子宮は筋肉で出来ている臓器ですが、この筋肉の中に子宮内膜が浸潤した病気を子宮腺筋症と言います。症状は月経痛や、月経量の増加、月経期間の延長などです。子宮内膜症同様、月経を重ねるたびに悪化し、閉経すると発症や進行が起こりにくくなります。
30歳代後半~40歳代の経産婦に発症しやすい病気です。
子宮がんの進行例
子宮がんの初期でCA-125が上昇することはあまりありませんが、進行した場合には高値になることがあります。子宮がんは30~40歳代で発症しやすい子宮頸がんと、50歳代で発症しやすい子宮体がんがありますが、いずれのがんでも高値になる可能性があります。
子宮筋腫
子宮の筋肉に発生する良性の腫瘍を子宮筋腫といいます。子宮筋腫によって月経量の増加や月経痛、他の臓器が圧迫されて便秘や頻尿などの症状が現れます。子宮筋腫も30~40歳で発症する女性が多く、月経のたびに悪化し、閉経すると進行が緩やかになります。
消化器の良性疾患
消化器で炎症が起こった場合にもCA-125が高値になります。例を挙げると、腸閉塞、膵炎、胆のう炎、腹膜炎、胸膜炎などの疾患です。これらの疾患の場合は発熱や痛みなどの症状が見られます。
月経期
閉経前の女性では、子宮内膜からCA-125が分泌されていると考えられており、月経前~月経の時期には高値になります。
妊娠初期
妊娠初期にはCA-125が急激に上昇し、患者さんによっては200~300U/ml程度になる場合があります。
検査の非特異反応
患者さんの血液と検査の試薬の相性によって、実際はCA-125が高値ではないのにあたかも高値のような検査結果になる場合があります。このような現象を「非特異反応」といいます。この場合は、患者さんに病気があるわけではありません。
CA-125を下げる方法は?
月経時や妊娠時に検査を受けた場合には、これらの影響で高めの検査結果になっている可能性があります。ですから、これらの時期を避けて検査を受ければ数値が下がる可能性があります。また、患者さんの血液と検査の試薬の相性によって高値になっている場合は、別な検査の試薬を使うことによってCA-125は下がります。
それ以外の影響はあまり受けない項目なので、高値の場合は先ほど紹介したような病気の可能性も考えられます。病気によって上昇しているため生活習慣で改善させるのは難しく、治療を受けて病気を治すことによってCA-125の数値を下げることが出来ます。
CA-125が基準値以上だった時の対策
CA-125が高値だった場合には、原因を精密検査によって調べます。この精密検査では、特に卵巣がんや子宮内膜症の有無を調べるのがほとんどで、一緒に紹介した他の病気を最初から探すということはほとんどありません。
精密検査では血液の検査、内診、エコー検査、MRI検査、CT検査などを行います。ただし、これらの検査で卵巣に病変が見つかった場合でも確定の診断はできません。なぜならこれらの検査では病変を直接見られるわけではないからです。
卵巣がんかどうか診断を確定させるには手術を行い、病変を摘出して顕微鏡で観察する行う病理検査が必要になります。
CA-125の再検査
CA-125が高値だった場合で月経や妊娠、検査の試薬の影響を受けていそうな場合には再検査を行います。
その他採血の検査
他の採血の検査結果を見て、体の中で炎症がおきていないかを調べたり、別の腫瘍マーカーを検査して卵巣がんの分類に役立てたりします。
内診
医師が膣から触診し、腫瘍の有無や周囲の臓器と癒着していないかを確かめます。
エコー検査
膣から機械を入れて検査を行います。エコー検査は音波による検査なので、体に悪影響はありません。検査で得られた画像を詳しく調べ、卵巣や子宮に病変や腫瘍があるかどうか、卵巣に腫瘍がある場合は良性か悪性か、腹水が溜まっていないか等を調べます。
エコー検査で卵巣腫瘍の良性・悪性の正診率は約9割と言われています。
MRI検査
MRI検査では大きな機械の中に入り検査を受けます。磁石の力で検査を行うので被ばくの心配はありませんが、金属類の持ち込みは出来ない検査です。
エコー検査同様に卵巣や子宮に病変や腫瘍があるかどうか、卵巣に腫瘍がある場合は良性か悪性か、腹水が溜まっていないか等を調べます。さらに、MRI検査では周囲の臓器との癒着の有無も画像として見ることが出来ます。
CT検査
CT検査はMRI検査同様、大きな機械の中に入り検査を受けます。放射線を使う検査で、多少の被曝は免れません。この検査によってリンパ節や他の臓器への転移がないか調べることができます。
金原出版 臨床検査法提要
文光堂 人間ドック検診の実際
学習研究社 エビデンスに基づく検査データ活用アニュアル
シー・アール・シー|腫瘍マーカーCA125が癌以外で高値となるのはどんなときですか?
参照日:2019年7月