レブラミドの前身ともいえるサリドマイドという薬をご存知でしょうか?
睡眠薬や胃腸薬として一般に広く使用されていた薬ですが、世界規模で重篤な副作用が見られ、一時は販売停止となってしまいます。しかしながら1999年に多発性骨髄腫の30%に効果を示すことがわかり、2008年からはサリドマイド製剤安全管理手順の徹底を条件に国内での使用が認められることとなりました。
レブラミドは、そのサリドマイドよりもさらに効果を高め、副作用を少なくするために開発された薬です。サリドマイドと似ているといっても副作用が多いのではないか?珍しい薬は高額なイメージがあるけど、実際はどうなのか?といった疑問をもたれる方も多いのではないでしょうか?
このページではレブラミドについて主な作用や副作用などを詳しくご紹介いたしますので、参考にしていただければと思います。
目次
レブラミドとは
レブラミド(一般名:レナリドミド)とは免疫調節薬(IMiDs:Immunomodulatory Imide Drugs[イミッズ])と呼ばれる薬の一種です。
多発性骨髄腫など難病指定されている血液腫瘍の治療薬として、アメリカのセルジーン社が世界的に開発しました。
IMiDsとはサリドマイドと、サリドマイドと似たような構造で副作用を軽減した薬のグループのことです。
価格が1カプセル5mg約9,340円と大変薬価が高く、多発性骨髄腫の治療の場合ですと1日5カプセル服用を3週間続けて1週間休むといったサイクルを続けるため、1日約4万6700円、4週間で約98万円かかります。しかし高額療養費制度を利用することで、一旦は全額を払いますが、払い戻しを受けて4週間で約8万7000円の負担額になります。
レブラミドが適応となるがんの種類
レブラミドの適応となるがんの種類としては下記の血液がんに適応があります
- 多発性骨髄腫
- 5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群(MDS)
- 再発または難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)
通常はレブラミド単剤で使用されますが、多発性骨髄腫の治療ではデキサメタゾン(ステロイド)と併用します。
レブラミドに期待される治療効果
レブラミドは作用機序が完全には解明されていませんが、骨髄腫細胞の増殖を抑えたり(抗腫瘍作用)、骨髄腫細胞の免疫を活性化して腫瘍への攻撃力を高めたり、骨髄腫細胞に栄養を送る血管を阻害したり(血管新生阻害作用)するなどしてガンの増殖を抑えます。
主な副作用と発現時期
レブラミドは抗がん剤と違い、脱毛や吐き気といった副作用はほとんどありません。しかし通常の抗がん剤では見られない重篤な副作用があります。
75.5%の方に副作用がみられ、主な症状としては、血小板減少(33.7%)、好中球減少(31.7%)、発疹(10.3%)、白血球減少(10.1%)、便秘(8.6%)、貧血(8.2%)、末梢性ニューロパチー(7.3%)、肺炎(5.3%)、倦怠感(5.2%)などがあります。
副作用のほとんどが服用後3週間以内にみられます。
また重大な副作用として、催奇形性(手や足の短い赤ちゃんや耳の聞こえない赤ちゃんが産まれる可能性)、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞、一過性脳虚血発作、感染症、骨髄抑制、腫瘍崩壊症候群(短時間でがん細胞が死滅することで意識障害や呼吸困難が起こること)、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンスジョンソン症候群)などがあります。
レブラミドの安全性と使用上の注意
安全性
レブラミドは緊急時に十分対応できる医療機関において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験をもつ医師のもとで適切と判断される場合のみに使用できます。また、使用開始の前にご本人とそのご家族等に有効性及び危険性を十分に説明し、文書で同意を得たうえで投与を開始することとなっています。
また、妊娠または妊娠している可能性のある女性患者、適正管理手順(レブメイト)を遵守できない方、レブラミドの成分に対して過敏症の既往歴のある方へは投与できません。
また、腎機能障害のある方、深部静脈血栓症のリスクがある方(血栓ができやすい方)、骨髄抑制のある方(造血機能が低下している方)、臓器移植をしたことがある方、高齢者の方へは副作用が強くあらわれたり、症状が悪化したりする可能性があるので慎重に投与することとなっています。
使用上の注意
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- 胎児への催奇形性の危険性があるので、妊娠する可能性のある女性は必ず使用開始4週間前及び投与開始3日前から投与開始直前までに妊娠検査を実施し、また服用中に定期的に妊娠しているか検査します。また男性の場合は薬が精液中に移行します。
使用開始から服薬中止4週間後まで体内に薬が残っているので献血、精子などの提供、授乳はできません。 - レブラミドは特別な管理が必要な薬のため、使用する際、必ず『RevMate(レブメイト』に登録しなければなりません。レブメイトとは、胎児に重大な障害を及ぼす可能性を回避し、適正に使用するための手順です。レブラミドを服用される方、ご家族、医師、薬剤師をはじめとする医療関係者など治療に関わる全ての方がこの手順を守らなければなりません。
また診察の際は必ずレブメイトカードを携行し、医師・薬剤師などに提出してください。
- 胎児への催奇形性の危険性があるので、妊娠する可能性のある女性は必ず使用開始4週間前及び投与開始3日前から投与開始直前までに妊娠検査を実施し、また服用中に定期的に妊娠しているか検査します。また男性の場合は薬が精液中に移行します。
飲み忘れに気づいたのがいつも飲む時間から12時間以内の場合、すぐにその分を飲んでください。12時間以上過ぎていた場合はその分を抜かし、次回分から通常通り服用してください。
- 高脂肪・高カロリー食(目安として約900kcal以上、脂肪比率50%以上)の食後に服用すると薬の吸収が低下するため、高脂肪・高カロリー食前後は薬の服用を避けてください。
- レブラミドにより疲労、めまい、錯乱、霧視(霧がかかって見える、かすみ眼)があらわれることがあります。薬を服用中は自動車の運転や機械の操作など危険を伴う機会の操作を避けるように注意してください。
- B型肝炎ウイルスキャリアの方、過去になったことのある方はレブラミドの服用によりB型肝炎ウイルスを再活性させることがあるので、投与前に感染の有無を調べ、投与中も肝機能検査などのモニタリングをすることがあります。
- 好中球減少(発熱、だるさ)、血小板減少(鼻血など)があらわれることがあるため、定期的に血液検査が行われます。また必要に応じて減薬や休薬など適切な処置を行うこととなっています。
併用に注意すべき薬剤
ジギタリス製剤と一緒に使うとジギタリス製剤の血中濃度を上げる可能性があるため、併用注意となっています。
まとめ
レブラミドの主成分であるサリドマイドは副作用ばかりが目立っていた薬ですが、今まで治りにくいとされていた疾患の治療を大きく進化させることができました。
抗がん剤では見られない副作用は起こりますが、正確な使い方をすれば安全で有益な治療法です。
上記にありますように高額療養費制度を利用すれば経済的負担も和らぎますが、実際のところ「どのように利用すればいいのかわからない」「払い戻しを受けるまで、大金を立て替える経済的余裕がない」といった声も少なくありません。現段階ではジェネリック医薬品はありませんが、経済的に治療を受けやすくなるためにも将来的にジェネリックが開発されることを願うばかりです。
正しい作用、薬・症状の知識を得て、治療と向き合うことが大切です。
「抗がん剤のすべてがわかる本」 矢沢サイエンスオフィス 編 (Gakken)ウィキペディアhttps://ja.wikipedia.org/wiki/レナリドミドレブラミドカプセル2.5mg/5mg 添付文書 2019年1月改訂 セルジーン株式会社 https://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065995.pdf
セルジーン社
http://www.revlimid-japan.jp/
おくすり100番
http://www.okusuri110.com/biyokibetu/biyoki_00_00frame.html