ソルメドロールは、米国のファイザー社(旧アップジョン社)が開発したステロイド性剤です。
ステロイド性剤というと、免疫反応の抑制や喘息などの治療に用いられるイメージをお持ちの方も多いと思いますが、ソルメドロールも1979年に日本で発売された当初は、感染症のショックや腎移植に伴う免疫反応の抑制について承認を受け、流通が開始された薬剤です。
その後も気管支喘息など様々な疾患の治療薬として有効性が確認され、幅広く用いられている薬剤であり、抗がん剤としては2005年に悪性リンパ腫に対する他の抗がん剤との併用療法で有効性があると評価され、使用できるようになりました。
このページ記事では、抗がん剤「ソルメドロール」に注目して、治療ができるがんの種類やそれぞれの治療効果、また副作用についても詳しく解説していきます。
目次
ソルメドロール(一般名:メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)とは
商品名ソルメドロールは、一般名メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムといいます。
ソルメドロールは、海外の様々な研究によりリンパ系のがんへの効果が確認されており、ほとんどのリンパ系腫瘍に対して承認される前の1980年代から、他の抗がん剤と併用して臨床の現場で広く使用されていた経緯がありました。
この状況を受け、厚生労働省は「抗がん剤併用療法に関する検討会」を設置し、併用療法に必要な抗がん剤の効果の評価を進め、悪性リンパ腫におけるソルメドロールの適応を承認しました。
ソルメドロールが適応となるがんの種類
ソルメドロールは、日本において「悪性リンパ腫」の患者さんの治療において、他の抗がん剤と併用して使用する事が出来る抗がん剤です。
ソルメドロールの投与方法は点滴による静脈内への投与で、250~500mgを1日1回5日間投与されます。
これを1コースとして、3~4週ごとに繰り返し投与が行われます。
ソルメドロールは、添付されている溶用液を用いて溶解されます。
他の抗がん剤等と混合して使用する場合には、pHの変動により白沈を生じることがありますので注意が必要です。
溶解後保存が必要な場合は、10℃以下で保存し24時間以内に使用する必要があります。
また、静脈内への投与により血管痛や静脈炎が現れることがありますので、注射速度は出来るだけ遅くする必要があります。
ソルメドロールに期待される治療効果
悪性リンパ腫は、様々な薬剤を組み合わせて治療を行う事が多い疾患です。
ソルメドロールについても、悪性リンパ腫に使用される抗がん剤と組み合わせて使用する事によりがん細胞に対する抑制効果を示すとともに、さらに吐き気などを抑える効果や炎症を抑える効果を期待して、使用されています。
主な副作用と発現時期
ソルメドロールは他の抗がん剤と併用して使用する為、併用する薬剤により現れる副作用や、現れる時期などが異なります。
悪性リンパ腫の治療としての副作用の集計は行われていませんので、ここではソルメドロール単剤を急性循環不全の患者さんに使用した場合の副作用について解説しますので、参考にしてください。
主な副作用
承認時までに行われた調査、及び市販後に行われた調査で、ソルメドロールを使用された患者さん4,022例を対象に解析したデータです。
4,022例中、副作用が報告されたのは33例(0.82%)となります。
- 糖尿:0.05%(2/4,022)
- 高血糖:0.07%(3/4,022)
- 低血圧:0.25%(10/4,022)
- 血小板減少:0.07(3/4,022)
これら副作用の発現時期は、投与中時期を問わず報告されています。
患者さんによっては遅い時期にあらわれる方、1日目からあらわれる方とさまざまです。
この結果だけを見ると副作用の頻度は少ないように見えますが、他の抗がん剤との併用する事により頻度や重症度が上がる可能性が高くなりますので注意が必要です。
ソルメドロールの安全性と使用上の注意
ソルメドロールを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。
重要な基本的注意
・ソルメドロールは、500mgを超える高用量を10分未満で急速に静脈内に投与する事により、心停止や不整脈などが起きたとの報告がありますので、ゆっくりと投与する必要があります。異常が見られた場合には、心臓蘇生法や輸液、昇圧剤、抗不整脈剤など適切な救急処置が行われます。
- ソルメドロールは、500mgを超える高用量を10分未満で急速に静脈内に投与する事により、心停止や不整脈などが起きたとの報告がありますので、ゆっくりと投与する必要があります。異常が見られた場合には、心臓蘇生法や輸液、昇圧剤、抗不整脈剤など適切な救急処置が行われます。
- ソルメドロールを投与することにより、感染症や循環器障害、消化性潰瘍、精神障害、糖尿病などが現れる事がありますので、投与中は副作用の発現について十分な観察を行う必要があります。
- ソルメドロールが分類されるステロイド性剤は、B型肝炎ウィルスキャリアの患者さんにおいて、B型肝炎ウィルスの増殖が原因となる肝炎が現れる事があります。そのため、投与中や投与終了後も継続して肝機能検査や肝炎ウィルスマーカーの検査が行われます。異常が現れた場合には、抗ウィルス剤を投与するなど適切な処置を行わなければなりません。
- ソルメドロール40mgには、添加物として牛の乳由来の乳糖が使用されているため、乳製品に対してアレルギーをお持ちの患者さんに使用するとアナフィラキシーが現れることがあります。
- ソルメドロール投与中に水痘や麻疹に感染すると致命的となる場合がありますので、これらの感染には注意が必要です。
※アナフィラキシーとは:全身のアレルギー反応で、血圧の低下や意識の低下などが現れる状態をいいます。意識障害を引き起こすこともあり、迅速な治療が必要になります。
使用上の注意
- 高齢者の患者さん:長期に使用する事により感染症や糖尿病、骨粗しょう症、高血圧症、白内障、緑内障などの副作用が現れやすいとされています。
- 妊婦、産婦、授乳婦の患者さん:マウスを用いた動物実験において催奇形作用が報告されていますので、妊婦又は妊娠している可能性のある患者さんには治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。また、母乳中へ移行する事がありますので、投与中は授乳する事が出来ません。
- 小児の患者さん:小児の発育が抑制されることがありますので、観察を十分に行う必要があります。
抗がん剤は、使用上の注意や副作用などをしっかり確認し、用法・用量を守って正しく使用する事で最大の効果を得る事が出来る薬剤です。これから治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとっても参考になれば幸いです。
NIH NLM | Glucocorticoid induced cytolysis of human normal and malignant lymphocytes
参照日:2019年8月