ハラヴェンは日本の製薬メーカーが開発した、乳がんや悪性軟部腫瘍に適応を持つ比較的新しい抗がん剤です。希少疾患である悪性軟部腫瘍の適応については、希少疾病用医薬品としての指定を受けています。
また、ハラヴェンは成分に少量のアルコールを含んでいますので、アルコールに過敏な方は注意が必要であるという特徴を持っています。
このページでは、抗がん剤「ハラヴェン」について詳しく解説していきますので、治療を検討されている方はぜひご覧ください。
目次
ハラヴェン(一般名:エリブリンメシル酸塩)とは
ハラヴェンは日本の会社であるエーザイ社の米国研究所において開発された薬剤で、2010年に米国で承認されてから様々な国で承認されています。日本においては2011年に乳がんでの承認を受け、悪性軟部腫瘍については2016年に承認されています。
ハラヴェンが適応となるがんの種類
ハラヴェンは「乳がん」及び「悪性軟部腫瘍」に適応を持っています。
投与方法はいずれの適応においても、1日1回体表面積当たり1.4mgを2~5分間かけて週に1回静脈内に投与します。これを2週連続で行った後3週目は休薬し、これを1サイクルとして投与が繰り返されます。
効能効果、及び用法用量に関連する使用上の注意
・乳がんに対する術前・術後補助化学療法における有効性と安全性は確立していません。術前補助化学療法とは、乳房温存手術を目的として手術前に抗がん剤を投与する治療方法です。また、術後補助化学療法とは、手術によるがん細胞摘出後に体内に残っているかもしれない微小ながん細胞を完全に排除することを目的として、術後一定期間抗がん剤が投与される治療法です。また、再発のリスクを下げるために投与される場合もあります。
・乳がんに対する治療で用いる場合は、アントラサイクリン系抗がん剤(アドリアシン、カルセドなど)やタキサン系抗がん剤(タキソール、タキソテールなど)を含む化学療法を実施し、進行、または再発した患者さんに対して使用されます。
・悪性軟部腫瘍に対して、化学療法未治療例の患者さんに対する有効性と安全性は確立されていません。
・ハラヴェンは単独で投与が行われます。他の抗がん剤との併用については有効性と安全性が確立していません。
ハラヴェンに期待される治療効果
ハラヴェンは、「植物アルカロイド」という種類に属する抗がん剤です。
海洋生物であるクロイソカイメンから抽出した天然物質に着目して合成された抗がん剤で、がん細胞が分裂する働きを停止させる事で、細胞増殖を抑える効果を持っています。
ハラヴェンの各がんでの治療効果は以下の通りです。
- 乳がん 奏効率:21.3%
- 国内で80症例を対象に実施された臨床試験で、治療効果はがん細胞が縮小した患者さんの割合を示した「奏効率」を指標としています。
- 悪性軟部腫瘍 PF率:51.0%
- 国内で51例を対象に実施された臨床試験で、治療効果はがん細胞が縮小、または安定している患者さんの割合を示した「PF率」を指標としています。
主な副作用と発現時期
ハラヴェンなどの抗がん剤は、決して低くはない発現率で副作用が現れてしまいます。
抗がん剤による効果を長く得るためには、副作用の症状が現れたらすぐに医療機関にかかり、副作用に対して適切な治療や対策を行う必要がありますので、何等かの違和感を感じた場合は我慢せずに主治医の先生に相談しましょう。
主な副作用
乳がんの患者さん81例を対象とした国内臨床試験で報告された主な副作用は以下の通りです。
- 好中球減少:98.8%
- 白血球減少:98.8%
- 脱毛症:58.0%
- リンパ球減少:54.3%
- 疲労:44.4%
- 食欲減退:43.2%
- 悪心:42.0%
- 口内炎:39.5%
- 味覚異常:33.3%
- ヘモグロビン減少:32.1%
- AST(GOT)上昇:29.6%
- ALT(GPT)上昇:27.2%
- CK(CPK)上昇:25.9%
- 発熱:24.7%
- 末梢神経障害:24.7%
これら副作用の発現時期は治療初期に現れるとされていますが、患者さんによって投与数日で現れる方、投与から半年以上経過してから現れる方もいますので投与中は常にご自身の変化に注意が必要です。
また、患者さんによって副作用の重さも異なりますので、ご家族など身近な方にも必要に応じてサポートしてもらいながら生活することをおすすめします。
ハラヴェンの安全性と使用上の注意
ハラヴェンを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。
治療出来ない患者さん
- 強い骨髄抑制のある患者さん:骨髄抑制を悪化させる可能性があります。
- ハラヴェンの成分に対して過敏症の既往歴をお持ちの患者さん:再度使用する事で重大なアレルギー症状を引き起こす可能性があります。
- 妊娠している方、妊娠の可能性のある方:動物実験において、胚致死作用や催奇形作用が報告されています。
重要な基本的注意
- 骨髄抑制の副作用が現れる場合がありますので、定期的な血液検査が行われます。異常が認められた場合には、減量や休薬、適切な治療薬の投与などが検討されます。
- QT間隔延長が現れたとの報告がありますので、投与開始前や治療中は心電図検査や電解質検査が行われます。
- 動物実験において、精巣毒性が認められているので生殖可能な年齢の患者さんに投与する場合は、性腺に対する影響が考慮されます。
使用上の注意
- 肝機能障害をお持ちの患者さん:肝機能障害がある方ではハラヴェンの代謝が遅延することで体内に必要以上の薬剤が滞留し、好中球減少の副作用が高い頻度で現れる傾向が確認されています。
- 腎機能障害をお持ちの患者さん:腎機能障害がある方ではハラヴェンの代謝が遅延することで体内に必要以上の薬剤が滞留する傾向が報告されています。
- 高齢の患者さん:一般的に生理機能が低下していることが多いため、骨髄抑制や消化器症状等の副作用が現れやすいので注意が必要です。
- 授乳中の患者さん:安全性が確立していませんので、授乳を中止する必要があります。
- 小児の患者さん:低出生体重児や新生児、乳児、幼児、小児に対する使用経験がありませんので、安全性が確立していません。
ハラヴェンは、抗がん剤に特徴的な白血球の減少や好中球減少などの骨髄抑制や脱毛といった副作用が現れます。骨髄抑制は通常血液検査で確認されますが、自覚症状としてはだるさや食欲減退、出血傾向などが現れます。
ハラヴェンの治療方法は週に1回注射による投与となり、また休薬期間もあるため間隔が空きますが、体調不良だと感じる場合はすぐに主治医に報告するようにしましょう。また、脱毛の副作用は治療が終了したら回復するとされていますが、気になる場合はニット帽などの着用などがおすすめです。
これからハラヴェンの治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとってもこの記事が参考になれば幸いです。
患者向医薬品ガイド | ハラヴェン静注 1mg
参照日:2019年8月