咽頭がんのステージ別生存率と平均余命

咽頭がんと診断されるとその予後は気になるかもしれません。咽頭がんの予後は発見されたときのステージ(進行度)と関連しています。5年生存率はがんの治療効果を比較するために使われる目安で、その病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。

咽頭がんは症例数が少ないため大規模なデータはありませんが、5年生存率はがん全体の平均とほぼ同じ程度と報告されています。

目次

咽頭がんの種類と進行度について

咽頭がんの種類

発生部位による分類

咽頭がんはその発生部位によって上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんの3つに分類されます。

イメージとしては口を大きく開けたときに奥に見えるのどが中咽頭、それより上(鼻側)が上咽頭、下の食道につながる部分が下咽頭になります。
最も頻度が高いのは下咽頭がんです。

細胞の種類による分類

上咽頭がん
ほとんどが扁平上皮がんで、進行の早い低分化型が多い。その他に悪性リンパ腫もあるが、腺がんはほとんどありません。

中咽頭がん
最も多いのは扁平上皮がんで、その他に悪性リンパ腫、腺がんがある。

下咽頭がん
ほとんどは扁平上皮がんで、その他に腺がん、腺様嚢胞がん、粘表皮がんなどがある。

咽頭がんの進行度(ステージ)

進行度とはがんのひろがり具合を表します。咽頭がんのステージは0から4までの5段階で、一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。さらにステージ4は上咽頭がんではA、Bの2段階に、中咽頭がんと下咽頭がんではA、B、Cの3段階に分けられています。

上咽頭の場合

  • ステージ0
    がんが上皮内にとどまっている状態
  • ステージ1
    がんが上咽頭内にとどまり、リンパ節転移がない状態
  • ステージ2
    がんの大きさが6㎝以内で、顎を動かす筋肉もしくは頚椎前面の筋肉までの範囲におさまり、リンパ節転移が輪状軟骨より上の片側のみの場合
  • ステージ3
    がんの大きさが6㎝以内で、頭蓋底もしくは頚椎までの範囲におさまり、リンパ節転移が輪状軟骨より上の場合
  • ステージ4
    A:遠隔転移がない
    B:遠隔転移がある

中咽頭の場合(ヒトパピローマウイルス感染がない場合)

  • ステージ0
    がんが上皮内にとどまっている状態
  • ステージ1
    がんの大きさが2cm以下で、リンパ節転移がない
  • ステージ2
    がんの大きさが4㎝以下で、リンパ節転移がない
  • ステージ3
    がんが4㎝以上か、喉頭蓋の舌側にひろがっているがリンパ節転移はないか、3㎝以下のリンパ節転移が癌と同じ側に1つだけ認められるとき
  • ステージ4
    A:喉頭、舌、硬口蓋、顎の骨のいずれかにがんがひろがり、リンパ節転移の大きさは6㎝以下
    B:遠隔転移がない
    C:遠隔転移がある

下咽頭の場合

  • ステージ0
    がんが上皮内にとどまっている状態
  • ステージ1
    がんが下咽頭にとどまっている、若しくはがんの大きさが2cm以下で、リンパ節転移がない
  • ステージ2
    喉頭の動きに問題がなく、がんが隣接部にひろがっている、もしくはがんの大きさが4㎝以下で、リンパ節転移がない
  • ステージ3
    がんが4㎝以上か、片方の喉頭の動きが制限されているか、がんが食道粘膜におよんでいるが、リンパ節転移はがんと同じ側に3㎝以下のものが1個まで
  • ステージ4
    A:がんが甲状軟骨や輪状軟骨、舌骨、甲状腺、食道などにひろがっており、リンパ節転移の大きさが6㎝以下
    B:遠隔転移がない
    C:遠隔転移がある

咽頭がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、咽頭がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

咽頭がんの5年生存率はどのくらいあるか

咽頭がんの5年生存率は口腔がんと合わせたデータが報告されており、男性で60.7%、女性で69.4%、全体で63.5%であり、がん全体と比較してあまり差のない成績となっています。
進行度別では限局(病変が発生部位に限られている状態)では86.6%、領域(所属リンパ節まで)では53.5%、遠隔(他の臓器に転移がある場合)13.9%と報告されています。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。

患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

ある病院が発表している咽頭がんステージ4の平均余命は以下の通りです。

上咽頭がん

ステージ4A 25カ月
ステージ4B 60カ月以上
ステージ4C 8カ月
(古い分類を使用しているため、ステージ4Cがあります)

中咽頭がん

ステージ4A 60カ月以上
ステージ4B 15カ月
ステージ4C 8カ月

下咽頭がん 

ステージ4A 43カ月
ステージ4B 10カ月
ステージ4C 12カ月

※対象者数が少ないため、ステージが進行している方が平均余命が長くなる、逆転現象が起きています

罹患数と死亡数の推移(データは咽頭がんと口腔がんの合算)

罹患数の推移

1975年には10万人あたり2.2人でしたが2007年には10人を突破し、その後調査最終年の2015年には14.5人となっています。

死亡数の推移

死亡者の割合は、調査年の1958年には0.8人でしたが、1995年には3人を超え、2019年には6.3人と増加しています。

咽頭がんの末期症状とケアに関して

気管切開

がんによって呼吸に関連する気管や声帯に影響が及ぶと、息の通り道が狭くなったり、唾液や食べ物を肺に吸い込んでしまう誤嚥が起きます。そのような危険がある場合、のどに新たな呼吸の通り道を作る気管切開を行ってこれらを予防することがあります。

胃瘻造設

飲み込みが悪くなり、口から食べ物を摂取すると誤嚥する可能性が高い場合には、腹壁から胃に管を造設する胃瘻が行われることもあります。

全身に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。
食欲不振や吐き気についてはその症状を和らげる薬が使われます。
栄養状態が悪いときには点滴で栄養を補うこともあります。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

横須賀共済病院|上咽頭がんの治療
https://www.ykh.gr.jp/patients/about/toukeibugan/toukeibu03
日本赤十字社 伊勢赤十字病院|中咽頭がん
http://www.ise.jrc.or.jp/cancer/ca06-15.html
九州大学病院がんセンター|頭頸部がん
https://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/result/head_and_neck_cancer/index7
がん情報サービス|集計表
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医